美しい水景设计を思わせる背景美术が描かれた映画の贵重な原画や絵コンテを展示する

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《起风了》中日文对照
序曲それらの夏の日々、一面に薄の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま热心に絵を描いていると、私はいつもその傍らの一本の白桦の木荫に身を横たえていたものだった。そうして夕方になって、お前が仕事をすませて私のそばに来ると、それからしばらく私达は肩に手をかけ合ったまま、遥か彼方の、縁だけ茜色を帯びた入道云のむくむくした块りに覆われている地平线の方を眺めやっていたものだった。ようやく暮れようとしかけているその地平线から、反対に何物かが生れて来つつあるかのように…… 在那些夏日里,在弥望著茂密的草原中,当你站在那里专心致志地作画的时候,我总是躺在旁边一株白桦的树荫下。而到了傍晚,你结束了工作,来到我身边。然后,我们就互相搂著肩膀,一动不动地眺望著远方那被密密匝匝、只有边缘带著暗红色的积雨云团覆盖著的地平线。似乎从那终於走向黄昏的地平线上,反而有什麼正悄然诞生......そんな日の或る午后、(それはもう秋近い日だった)私达はお前の描きかけの絵を画架に立てかけたまま、その白桦の木荫に寝そべって果物を啮じっていた。砂のような云が空をさらさらと流れていた。そのとき不意に、何処からともなく风が立った。私达の头の上では、木の叶の间からちらっと覗いている蓝色が伸びたり缩んだりした。それと殆んど同时に、草むらの中に何かがばったりと倒れる物音を私达は耳にした。それは私达がそこに置きっぱなしにしてあった絵が、画架と共に、倒れた音らしかった。すぐ立ち上って行こうとするお前を、私は、いまの一瞬の何物をも失うまいとするかのように无理に引き留めて、私のそばから离さないでいた。お前は私のするがままにさせていた。 就在那些日子里的一个下午(那时已经接近秋天),我们把你尚未画完的画立在画架上,侧卧在那株白桦的树荫下吃著水果。如沙的碎云从天空轻轻飘过,这时,起风了,出人意料,不知所从。在我们头上,树叶间偶尔可见的蓝色时展时缩。几乎与之同时,我们听到了草丛中有什麼东西“啪”地倒下的声音。那声音,像极了我们放在那里的画随著画架一起倒下的声音。你想马上转身过去,但我硬是拉住你,就像不想失去眼前转瞬即逝的什麼东西似的,不让你从我身边离开,你顺从了我。风立ちぬ、いざ生きめやも。 “纵有疾风起,人生不言弃。”ふと口を冲いて出て来たそんな诗句を、私は私に靠れているお前の肩に手をかけながら、口の里で缲り返していた。それからやっとお前は私を振りほどいて立ち上って行った。まだよく乾いてはいなかったカンバスは、その间に、一めんに草の叶をこびつかせてしまっていた。それを再び画架に立て直し、パレット?ナイフでそんな草の叶を除りにくそうにしながら、「まあ! こんなところを、もしお父様にでも见つかったら……」お前は私の方をふり向いて、なんだか暧昧な微笑をした。 我把手搭在你紧靠我的肩上,嘴里重复著这脱口而出的诗句。而后,你终於挣开我,站起来,走了。还没有完全凝固的油彩,在这会儿已经沾满了草叶。你把它重新立在画架上,一边用版刀费力地除去草叶,一边蓦然回头对我莫名其妙地微微笑著,说道:「もう二三日したらお父様がいらっしゃるわ」 或る朝のこと、私达が森の中をさまよっているとき、突然お前がそう言い出した。私はなんだか不満そうに黙っていた。するとお前は、そういう私の方を见ながら、すこし嗄れたような声で再び口をきいた。 “啊!要是让你父亲看到咱俩在一起,他会怎样呢?” “再过两天,父亲就该回来了!” 一天早晨,我们正在森林里漫无目的地散步,你突然说出这句话。 我沉默著,似乎有点不高兴。 「そうしたらもう、こんな散歩も出来なくなるわね」「どんな散歩だって、しようと思えば出来るさ」 私はまだ不満らしく、お前のいくぶん気づかわしそうな视线を自分の上に感じながら、しかしそれよりももっと、私达の头上の梢が何んとはなしにざわめいているのに気を夺られているような様子をしていた。於是,你一边看著我,一边用略带嘶哑的声音开口说道: “那样的话,就不能再这样散步了。” “散散步还不至於被限制吧?”我还是有点生气,虽然在我身上感到了你带著几分关心的视线,但是相比之下,我似乎更在意头上树梢发出的娑娑声响。「お父様がなかなか私を离して下さらないわ」“父亲非常不愿意看到我们在一起。否则,他就让我离开他。”私はとうとう焦れったいとでも云うような目つきで、お前の方を见返した。我终於用近乎焦躁的眼神回头看著你。「じゃあ、仆达はもうこれでお别れだと云うのかい?」「だって仕方がないじゃないの」“那麼说,我们要就此分手了吗?” “可是……没有办法啊。”そう言ってお前はいかにも谛め切ったように、私につとめて微笑んで见せようとした。ああ、そのときのお前の颜色の、そしてその唇の色までも、何んと苍ざめていたことったら!这样说著,你努力地微笑著,试图证明你真的主意已定。啊!那时你面庞的颜色、甚至你嘴唇的颜色,都是那麼的苍白!「どうしてこんなに変っちゃったんだろうなあ。あんなに私に何もかも任せ切っていたように见えたのに……」 “怎麼会变成这样呢,看上去已经把一切都托付给我,可……”と私は考えあぐねたような恰好で、だんだん裸根のごろごろし出して来た狭い山径を、お前をすこし先きにやりながら、いかにも歩きにくそうに歩いて行った。そこいらはもうだいぶ木立が深いと见え、空気はひえびえとしていた。ところどころに小さな沢が食いこんだりしていた。突然、私の头の中にこんな考えが闪いた。お前はこの夏、偶然出逢った私のような者にもあんなに従顺だったように、いや、もっともっと、お前の父や、それからまたそういう父をも数に入れたお前のすべてを绝えず支配しているものに、素直に身を任せ切っているのではないだろうか?……在裸根横七竖八越来越多的狭窄山路上,我让你走在前面不远的地方,以苦苦思索的姿态,极其艰难地走著。那一带看上去树丛很深,空气冷飕飕的,到处都有沼泽侵淩。突然,我头脑里闪出这样一个念头,你在今年夏天才偶然遇到我,你对我这样的人都那麼顺从,那麼对你父亲以及包括父亲在内、不断支配著你的所有人,该不会都像这样,不,该是更多、更多地,老老实实地把自己完全交付出去的吧?「节子! そういうお前であるのなら、私はお前がもっともっと好きになるだろう。私がもっとしっかりと生活の见透しがつくようになったら、どうしたってお前を贳いに行くから、それまではお父さんの许に今のままのお前でいるがいい……」“节子!如果你就是这样的姑娘,我会更加更加喜欢你的。等我对生活有了更可靠的把握,无论如何都会娶你的。所以,你只管一直在父亲身边,就像现在这样……”そんなことを私は自分自身にだけ言い闻かせながら、しかしお前の同意を求めでもするかのように、いきなりお前の手をとった。お前はその手を私にとられるがままにさせていた。それから私达はそうして手を组んだまま、一つの沢の前に立ち止まりながら、押し黙って、私达の足许に深く食いこんでいる小さな沢のずっと底の、下生の羊歯などの上まで、日の光が数知れず枝をさしかわしている低い灌木の隙间をようやくのことで潜り抜けながら、斑らに落ちていて、そんな木泄れ日がそこまで届くうちに殆んどあるかないか位になっている微风にちらちらと揺れ动いているのを、何か切ないような気持で见つめていた。我一边对自己暗自说著这些话,却一边想徵求你的同意似的突然抓起你的手。你任由我那样抓住你的手,然后,我们就这样手牵著手,在一片沼泽前止步伫立,一言不发,用一种说不出的心情注视著。阳光费力地穿过无数枝条交错的低矮灌木的缝隙,稀稀落落地洒在我们脚下深浸著的小沼泽最底部,洒在树根下生长著的羊齿草之类的杂草上面。那团穿过树隙投到那里的光影,被似有似无的微风娑娑地摇动著。それから二三日した或る夕方、私は食堂で、お前がお前を迎えに来た父と食事を共にしているのを见出した。お前は私の方にぎごちなさそうに背中を向けていた。父の侧にいることがお前に殆んど无意识的に取らせているにちがいない様子や动作は、私にはお前をついぞ见かけたこともないような若い娘のように感じさせた。此后两三天的一个傍晚,我在餐厅里看到你和来接你的父亲一起就餐。你无情地用后背对著我。一定是因为你在父亲身边,使你几乎无意识地做出这样的姿态和动作,让我感到了从未见过的、像小女孩儿一样的你。その晩、私は一人でつまらなそうに出かけて行った散歩からかえって来てからも、しばらくホテルの人けのない庭の中をぶらぶらしていた。山百合が匂っていた。私はホテルの窓がまだ二つ三つあかりを泄らしているのをぼんやりと见つめていた。そのうちすこし雾がかかって来たようだった。それを恐れでもするかのように、窓のあかりは一つびとつ消えて行った。そしてとうとうホテル中がすっかり真っ暗になったかと思うと、軽いきしりがして、ゆるやかに一つの窓が开いた。そして蔷薇色の寝衣らしいものを着た、一人の若い娘が、窓の縁にじっと凭りかかり出した。それはお前だった。……那天晚上,我一个人百无聊赖地出去散步,回来后又信步徘徊在无人的旅馆院子里。野百合散发著香气,我漠然地凝望著旅馆还发出灯光的两三个窗口。不知不觉间,好像起雾了。视窗的灯光似乎对雾有著恐惧,一个接一个地熄灭了。而在我以为整个旅馆将一片漆黑的时候,轻轻的一声窗框响,一扇窗户缓缓地打开了。一位身穿著蔷薇色睡衣的年轻姑娘,紧紧地抓著窗框探出身来,那就是你……私は终日、ホテルに闭じ笼っていた。そうして长い间お前のために打弃って置いた自分の仕事に取りかかり出した。私は自分にも思いがけない位、静かにその仕事に没头することが出来た。そのうちにすべてが他の季节に移って行った。そしていよいよ私も出発しようとする前日、私はひさしぶりでホテルから散歩に出かけて行った。我终日闷在旅馆里,开始处理自己长期以来为你而中断的工作。我自己都想不到,我竟能平静地埋头於工作。不知不觉间,一切转入另一个季节。於是,终於要出发的前一天,我走出旅馆去做久违的散步。秋は林の中を见ちがえるばかりに乱雑にしていた。叶のだいぶ少くなった木々は、その间から、人けの绝えた别荘のテラスをずっと前方にのり出させていた。の湿っぽい匂いが落叶の匂いに入りまじっていた。そういう思いがけない位の季节の推移が、――お前と别れてから私の知らぬ间にこんなにも立ってしまった时间というものが、私には异様に感じられた。私の心の里の何処かしらに、お前から引き离されているのはただ一时的だと云った确信のようなものがあって、そのためこうした时间の推移までが、私には今までとは全然异った意味を持つようになり出したのであろうか? ……そんなようなことを、私はすぐあとではっきりと确かめるまで、何やらぼんやりと感じ出していた。秋天使森林的一切杂乱不堪,几乎让人感到陌生。叶子稀疏的树木,让远方不见人影的别墅阳台从树木丛中探将出来。湿乎乎的味道和落叶的气味混杂在一起。这种意想不到的季节变换——和你分手后不知不觉之间如此逝去的时间,令我感到诧异。在我心中的某个地方,有一种坚定的信念,那就是离开你只是一时的。所以,是否因此而使得这样的时间推移,也变得具备了对我而言与以往迥异的意义呢?……这些事情,直到我事后清楚地确认之前,一直令我感到一种莫名的恍惚。私はそれから十数分后、一つの林の尽きたところ、そこから急に打ちひらけて、远い地平线までも一帯に眺められる、一面に薄の生い茂った草原の中に、足を踏み入れていた。そして私はその傍らの、既に叶の黄いろくなりかけた一本の白桦の木荫に身を横たえた。其処は、その夏の日々、お前が絵を描いているのを眺めながら、私がいつも今のように身を横たえていたところだった。あの时には殆んどいつも入道云に遮られていた地平线のあたりには、今は、何処か知らない、远くの山脉までが、真っ白な穂先をなびかせた薄の上を分けながら、その轮郭を一つ一つくっきりと见せていた。十几分钟后,我走出一片树林的尽头。从那里便突然开阔起来,远远的地平线遥望如带。草原上生长著一片茂密、弥望的,我步入其中,在旁边一株白桦树荫下躺著。白桦的叶子已经开始变黄,那就是在那个夏天的每一天,我一边凝视著你作画,一边像现在这样躺在这个地方。当时几乎总是被积雨云遮盖的地平线,现在则是不知何去的远山,在随风摇摆著雪白穗稍的芒草之上,一座座清晰地展示著它们的轮廓。私はそれらの远い山脉の姿をみんな暗记してしまう位、じっと目に力を入れて见入っているうちに、いままで自分の里に潜んでいた、自然が自分のために极めて置いてくれたものを今こそ渐っと见出したと云う确信を、だんだんはっきりと自分の意识に上らせはじめていた。……我著力凝目注视那些远山的身姿,以至於将它们尽数默记。无形之中,一种感觉渐渐地浮现在自己的意识之上。我确信,一直在自己心中隐藏著的、大自然造化给自己的判定,今天终於找到了。……三月になった。三月已至。或る午后、私がいつものようにぶらっと散歩のついでにちょっと立寄ったとでも云った风に节子の家を访れると、门をはいったすぐ横の植込みの中に、労働者のかぶるような大きな麦秆帽をかぶった父が、片手に铗をもちながら、そこいらの木の手入れをしていた。私はそういう姿を认めると、まるで子供のように木の枝を掻き分けながら、その傍に近づいていって、三言挨拶の言叶を交わしたのち、そのまま父のすることを物珍らしそうに见ていた。――そうやって植込みの中にすっぽりと身を入れていると、あちらこちらの小さな枝の上にときどき何かしら白いものが光ったりした。それはみんな莟らしかった。……一天下午,我一如既往的悠闲的散步,顺便拜访一下节子家。结果,在刚一进门旁边的树丛里,节子的父亲戴著匠人的大草帽,一只手拿著剪刀,在整理一片树木。我认出了他,就像小孩子一样分开树枝,一边走近他的身旁。互道了几句客套话以后,我就一动不动地、好奇的看著他工作。就这样,完全潜身於树丛中,就会发现到处的小枝头上总有些白色的东西不时地闪耀,那是含苞待放的花蕾。「あれもこの顷はだいぶ元気になって来たようだが」父は突然そんな私の方へ颜をもち上げてその顷私と婚约したばかりの节子のことを言い出した。“这阵子,它们也变得神气多了。”节子的父亲突然向我这边抬起头,说起这几天刚刚和我订了婚约的节子的事来。「もう少し好い阳気になったら、転地でもさせてみたらどうだろうね?」“要是天气再变得舒适一些,就让她换个环境试试,怎麼样?”「それはいいでしょうけれど……」と私は口ごもりながら、さっきから目の前にきらきら光っている一つの莟がなんだか気になってならないと云った风をしていた。“那应该会是不错的……”我吞吞吐吐地说著,装作从刚才开始一直被眼前一粒闪闪发光的花苞所吸引不能自已的样子。「何処ぞいいところはないかとこの间うちから物色しとるのだがね――」と父はそんな私には构わずに言いつづけた。「节子はFのサナトリウムなんぞどうか知らんと言うのじゃが、あなたはあそこの院长さんを知っておいでだそうだね?」“有没有什麼好地方呢?这几天我正在物色一下——”节子父亲并不介意我的样子,继续说著。“节子说,不知道F的疗养院怎麼样。可是听说,你好像认识那里的院长啊。”「ええ」と私はすこし上の空でのように返事をしながら、やっとさっき见つけた白い莟を手もとにたぐりよせた。“诶……”我一边有点儿心不在焉似的回答著,一边把刚才发现的那朵白色花蕾拉到了眼前。「だが、あそこなんぞは、あれ一人で行って居られるだろうか?」“可是,那种地方,一个人去能行吗?”「みんな一人で行っているようですよ」“好像都是一个人去的呀。”「だが、あれにはなかなか行って居られまいね?」“但是,节子是不能自己一个去的吧?”父はなんだか困ったような颜つきをしたまま、しかし私の方を见ずに、自分の目の前にある木の枝の一つへいきなり铗を入れた。それを见ると、私はとうとう我慢がしきれなくなって、それを私が言い出すのを父が待っているとしか思われない言叶を、ついと口に出した。节子的父亲保持著那种莫名的为难表情,但看也不看我这边,猛然向自己眼前那棵树的一个枝条剪去。看到这里,我终於忍不住了。我说出了唯一能想到的、节子父亲等著我说出的那句话。
「なんでしたら仆も一绪に行ってもいいんです。いま、しかけている仕事の方も、丁度それまでには片がつきそうですから……」“那麼,我们一起去也不妨。现在手头儿做的工作,到那时也正好可以结束了……”私はそう言いながら、やっと手の中に入れたばかりの莟のついた枝を再びそっと手离した。それと同时に父の颜が急に明るくなったのを私は认めた。我一边这样说著,一边把好不容易刚刚抓到的那条带著花蕾的树枝再次轻轻放开。同时,我发现节子的父亲的脸色豁然开朗了起来。「そうしていただけたら、一番いいのだが、――しかしあなたにはえろう済まんな……」“那样关照的话,是最好不过了。只是……太对不住你了……”それから私达はそのサナトリウムのある山岳地方のことなど话し合っていた。が、いつのまにか私达の会话は、父のいま手入れをしている植木の上に落ちていった。二人のいまお互に感じ合っている一种の同情のようなものが、そんなとりとめのない话をまで活気づけるように见えた。……此后,我们谈论了那家疗养院所在的山岳地区的情况等等。而不知从什麼时候开始,我们的话题落在了节子父亲正在整理的盆栽上了。两个人现在相互感受到一种共同的情感,使得无边无际的话题都变得生动有趣起来……「节子さんはお起きになっているのかしら?」しばらくしてから私は何気なさそうに讯いてみた。“节子起床了没?”过了一会儿,我若无其事地试探问道。「さあ、起きとるでしょう。……どうぞ、构わんから、其処からあちらへ……」と父は铗をもった手で、庭木戸の方を示した。私はやっと植込みの中を潜り抜けると、茑がからみついて少し开きにくい位になったその木戸をこじあけて、そのまま庭から、この间まではアトリエに使われていた、离れのようになった病室の方へ近づいていった。“喏,大概已经起来了吧……请!没关系的,你从这儿穿过去吧……”节子父亲用拿著剪刀的手,示意我要往庭院的木门走。我费力地从树丛中钻出,推开被缠绕得有些难开的木门,径直穿过院子,朝著此前一直当画室用但现今却仿佛已被隔绝的病房走去。节子は、私の来ていることはもうとうに知っていたらしいが、私がそんな庭からはいって来ようとは思わなかったらしく、寝间着の上に明るい色のをひっかけたまま、长椅子の上に横になりながら、细いリボンのついた、见かけたことのない妇人帽を手でおもちゃにしていた。节子好像一开始就知道我来了。但似乎没有想到我会从这个院子进来。她在睡衣上披了一件色彩鲜艳的短外褂,就这样一边躺在长椅上,一边在手中把玩著一顶此前从未见过的、带著细缎带的女士帽。私がフレンチ扉ごしにそういう彼女を目に入れながら近づいて行くと、彼女の方でも私を认めたらしかった。彼女は无意识に立ち上ろうとするような身动きをした。が、彼女はそのまま横になり、颜を私の方へ向けたまま、すこし気まり悪そうな微笑で私を见つめた。透过法式门,我注视著她,渐渐走近,而她好像也发现了我。她下意识地动了一下,似乎想站起来,却依旧躺著,把脸朝向我,略带羞涩地微笑著,注视著我。「起きていたの?」私は扉のところで、いくぶん乱暴に靴を脱ぎながら、声をかけた。“你没睡吗?”我在门口一边有些胡乱地脱著鞋子,一边打著招呼。「ちょっと起きてみたんだけれど、すぐ疲れちゃったわ」“是想起来看看,可是转眼就累了。” そう言いながら、彼女はいかにも疲れを帯びたような、力なげな手つきで、ただ何んということもなしに手で弄んでいたらしいその帽子を、すぐ脇にある镜台の上へ无造作にほうり投げた。が、それはそこまで届かないで床の上に落ちた。私はそれに近寄って、殆ど私の颜が彼女の足のさきにくっつきそうになるように屈み込んで、その帽子を拾い上げると、今度は自分の手で、さっき彼女がそうしていたように、それをおもちゃにし出していた。这样说著,她用疲惫无力的手势,把那顶只是漫无目的地在手里把玩的帽子随意的扔在紧靠身边的。但是,帽子没有扔到的地方,落到了地板上。我走过去,弯下腰拾起帽子,脸几乎要碰到她的脚尖。这回,我自己就像她刚才那样把帽子拿在手里把玩。それから私はやっと讯いた。「こんな帽子なんぞ取り出して、何をしていたんだい?」后来,我终於开口问道:“拿出这种帽子来做什麼?”「そんなもの、いつになったら被れるようになるんだか知れやしないのに、お父様ったら、きのう买っておいでになったのよ。……おかしなお父様でしょう?」“这帽子,不知道什麼时候可以戴了……是爸爸昨天买回来的……我爸是不是有些怪?”「これ、お父様のお见立てなの? 本当に好いお父様じゃないか。……どおれ、この帽子、ちょっとかぶって御覧」と私が彼女の头にそれを冗谈半分かぶせるような真似をしかけると、“这个……是你爸帮你挑的麼?你爸真好……怎麼样?把帽子戴上试试?”我半开玩笑地做出把帽子往头上戴的动作。「厌、そんなこと……」“不,别这样……”
彼女はそう言って、うるさそうに、それを避けでもするように、半ば身を起した。そうして言い诀のように弱々しい微笑をして见せながら、ふいと思い出したように、いくぶん痩せの目立つ手で、すこし縺れた髪を直しはじめた。その何気なしにしている、それでいていかにも自然に若い女らしい手つきは、それがまるで私を爱抚でもし出したかのような、呼吸づまるほどセンシュアルな魅力を私に感じさせた。そうしてそれは、思わずそれから私が目をそらさずにはいられないほどだった……她这样说著,做出一副厌烦的样子,抬起半个身子,似乎要避开。随后,像是要解释一下似的露出梨涡浅笑,同时,仿佛突然想起什麼似的,用明显消瘦的手,整理起有些淩乱的秀发。那无意识的、极其自然的、韵味十足的女孩子的手势,简直就像在爱抚著我一样,让我感受到了几乎透不过气来的性感的魅力。而那动作竟然使我不由自主地把视线移开。やがて私はそれまで手で弄んでいた彼女の帽子を、そっと脇の镜台の上に载せると、ふいと何か考え出したように黙りこんで、なおもそういう彼女からは目をそらせつづけていた。过了一会儿,我把一直拿在手里把玩的帽子悄悄地放在旁边的梳妆台上,然后所有所思地陷入沉默,视线继续避开她。「おおこりになったの?」と彼女は突然私を见上げながら、気づかわしそうに问うた。“你生气了?”她突然抬起头看我,小心地问道。「そうじゃないんだ」と私はやっと彼女の方へ目をやりながら、それから话の続きでもなんでもなしに、出し抜けにこう言い出した。「さっきお父様がそう言っていらしったが、お前、ほんとうにサナトリウムに行く気かい?」“没。”我终於把目光转到她那边,然后前言不搭后语地冷不丁说道:“你爸爸刚说了,你真的想去疗养院麼?”「ええ、こうしていても、いつ良くなるのだか分らないのですもの。早く良くなれるんなら、何処へでも行っているわ。でも……」“想啊。这样呆著,也不知道什麼时候才能好。要是能早点好了,就哪儿都可以去了。可……”「どうしたのさ? なんて言うつもりだったんだい?」 “怎麼啦?怎麼说起这件事来了?”「なんでもないの」“没什麼。”「なんでもなくってもいいから言って御覧。……どうしても言わないね、じゃ仆が言ってやろうか? お前、仆にも一绪に行けというのだろう?」“不要紧,你说吧。……你不应该告诉我吗?你不是说了也让我一起去吗?”「そんなことじゃないわ」と彼女は急に私を遮ろうとした。“不是这个意思。”她突然想打断我。しかし私はそれには构わずに、最初の调子とは异って、だんだん真面目になりだした、いくぶん不安そうな调子で言いつづけた。「……いや、お前が来なくともいいと言ったって、そりあ仆は一绪に行くとも。だがね、ちょっとこんな気がして、それが気がかりなのだ。……仆はこうしてお前と一绪にならない前から、何処かの淋しい山の中へ、おまえみたいな可哀らしい娘と二人きりの生活をしに行くことを梦みていたことがあったのだ。お前にもずっと前にそんな私の梦を打ち明けやしなかったかしら? ほら、あの山小屋の话さ、そんな山の中に私达は住めるのかしらと云って、あのときはお前は无邪気そうに笑っていたろう? ……実はね、こんどお前がサナトリウムへ行くと言い出しているのも、そんなことが知らず识らずの里にお前の心を动かしているのじゃないかと思ったのだ。……そうじゃないのかい?」但是我没有理睬。用一种跟最初不一样、愈发认真但又有些不安的语气继续说: “不……即使你告诉我:你不来也可以。我也会照样跟你一起去的。可是,我有这麼一种感觉……就是……有点儿担心……我在和你这样在一起以前,曾经做了一个梦。梦见我和一个像你这样的,去了一个寂寞的山中,过著只有两个人的生活。我不是跟你坦白过有这麼一个梦麼?哎,那个山间小屋的故事……我还问你在这种山里我们该怎麼住,当时你笑得好天真。其实我觉得,这次你提出要去疗养院,是不是因为我那个梦让你不知不觉动心了……是不是?……”彼女はつとめて微笑みながら、黙ってそれを闻いていたが、她努力地微笑著,默默听著。忽然,她干乾脆脆地说:「そんなこともう覚えてなんかいないわ」“那种事情,我早就忘了。”と彼女はきっぱりと言った。それから宁ろ私の方をいたわるような目つきでしげしげと见ながら、「あなたはときどき飞んでもないことを考え出すのね……」然后,用一种不如说是安慰的眼神凝视著我,说:“你总是时不时冒出些出人意料的东西啊……”それから数分后、私达は、まるで私达の间には何事もなかったような颜つきをして、フレンチ扉の向うに、芝生がもう大ぶ青くなって、あちらにもこちらにも阳炎らしいものの立っているのを、一绪になって珍らしそうに眺め出していた。过了几分钟,我们带著就像我们之间根本没有发生过事情一样的表情,一起珍惜地望著法式门外的草坪。草坪上绿意盎然,处处翻腾著水汽……四月になってから、节子の病気はいくらかずつ恢复期に近づき出しているように见えた。そしてそれがいかにも遅々としていればいるほど、その恢复へのもどかしいような一歩一歩は、かえって何か确実なもののように思われ、私达には云い知れず頼もしくさえあった。到了四月,节子的病情看起来有些逐步接近恢复期了。那恢复著实缓慢,缓慢得令人焦躁不安。而正是如此艰难的迈向恢复的一步一步,反而令人感到一种真实。对於我们来说,这甚至是一种难以形容的依靠。そんな或る日の午后のこと、私が行くと、丁度父は外出していて、节子は一人で病室にいた。その日は大へん気分もよさそうで、いつも殆ど着たきりの寝间着を、めずらしく青いブラウスに着换えていた。私はそういう姿を见ると、どうしても彼女を庭へ引っぱり出そうとした。すこしばかり风が吹いていたが、それすら気持のいいくらい软らかだった。彼女はちょっと自信なさそうに笑いながら、それでも私にやっと同意した。そうして私の肩に手をかけて、フレンチ扉から、何んだか危かしそうな足つきをしながら、おずおずと芝生の上へ出て行った。生墙に沿うて、いろんな外国种のも混じって、どれがどれだか见分けられないくらいに枝と枝を交わしながら、ごちゃごちゃに茂っている植込みの方へ近づいてゆくと、それらの茂みの上には、あちらにもこちらにも白や黄や淡紫の小さな莟がもう今にも咲き出しそうになっていた。私はそんな茂みの一つの前に立ち止まると、去年の秋だったか、それがそうだと彼女に教えられたのをひょっくり思い出して、
一天下午,我去到她的家,恰好她父亲出门在外,节子一个人在病房里。那天,她的心情似乎相当的好,非常难得地把总是穿在身上就不换的睡衣,换成了蓝色的。我看到她这装扮,下定主意把她拉出去到院子里。虽然有些许风,但也是柔柔的,令人心旷神怡。她略带不自信的笑著,但最终还是同意了我的提议。於是她的手搭在我的肩上,走出法式大门,谨小慎微地迈著步,战战兢兢的来到了草坪。沿著灌木的围墙,走进各种外国品种混杂在一起、枝桠交错、难分彼此、枝繁叶茂的园林。在这一片繁茂之上,到处都白色、黄色、淡紫色的小含苞欲放。我止步于这繁茂的一处。暮然想起去年秋天她告诉我花卉名称的情景。「これはライラックだったね?」と彼女の方をふり向きながら、半ば讯くように言った。「それがどうもライラックじゃないかも知れないわ」と私の肩に軽く手をかけたまま、彼女はすこし気の毒そうに答えた。“这个应该是紫丁香吧!”我一边把头转向她,一边半带询问地说。“那可不是紫丁香。”她依然把手轻轻搭在我的肩上,有些过意不去地说。「ふん……じゃ、いままで嘘を教えていたんだね?」“哼……那麼,你一直都在误人子弟。”「嘘なんか冲きやしないけれど、そういって人から顶戴したの。……だけど、あんまり好い花じゃないんですもの」“我倒是没有撒什麼谎.,那也是拜人所赐。……只是,现在也没有什麼好看的花了。”「なあんだ、もういまにも花が咲きそうになってから、そんなことを白状するなんて! じゃあ、どうせあいつも……」私はその隣りにある茂みの方を指さしながら、「あいつは何んていったっけなあ?」“什麼呀,眼看这花就要开了。现在才坦白这事!莫非那个也是……”我指住旁边的树丛。“那是什麼?”「金雀児?」と彼女はそれを引き取った。私达は今度はそっちの茂みの前に移っていった。“?”她把枝条拿在手里。我们这时挪到这片树丛前边。「この金雀児は本物よ。ほら、黄いろいのと白いのと、莟が二种类あるでしょう? こっちの白いの、それあ珍らしいのですって……お父様の御自慢よ……」“这个可是真的。看,有黄色、白色两种哦!这边白色的,据说是相当稀有的。那可是我父亲的骄傲啊……”そんな他爱のないことを言い合いながら、その间じゅう节子は私の肩から手をはずさずに、しかし疲れたというよりも、うっとりとしたようになって、私に靠れかかっていた。それから私达はしばらくそのまま黙り合っていた。そうすることがこういう花咲き匂うような人生をそのまま少しでも引き留めて置くことが出来でもするかのように。ときおり软らかな风が向うの生墙の间から抑えつけられていた呼吸かなんぞのように押し出されて、私达の前にしている茂みにまで达し、その叶を仅かに持ち上げながら、それから其処にそういう私达だけをそっくり完全に残したまんま通り过ぎていった。交谈著这些无足轻重的事情,节子的手始终没有离开我的肩膀。与其说她是累了,倒不如说是出了神,靠在我的肩上了。然后,我们就这样久久的相视无语。仿佛这样就能够原封不动地挽留这个花开吐芳的人生更久一些。柔和的微风偶尔从对面的灌木墙缝隙里挤出,宛如被控制的呼吸,抵达我们前面的树丛,将树叶微微的抬起,然后行将过去,将现在的我们原封不动地留在这里。突然、彼女が私の肩にかけていた自分の手の中にその颜を埋めた。私は彼女の心臓がいつもよりか高く打っているのに気がついた。突然,她把脸埋在自己搭在我肩上的手中。我发现她的心脏比平时跳得更加强烈了。「疲れたの?」私はやさしく彼女に讯いた。“累了?”我柔声问她。「いいえ」と彼女は小声に答えたが、私はますます私の肩に彼女のゆるやかな重みのかかって来るのを感じた。“不是。”她小声回答道。但我感受到她的体重,缓缓地压到我的肩上。「私がこんなに弱くって、あなたに何んだかお気の毒で……」彼女はそう嗫いたのを、私は闻いたというよりも、むしろそんな気がした位のものだった。“我身体这麼差。总觉得对不起你……”她的耳语很轻,与其是说我听到了,不如说是我感受到了。「お前のそういう脆弱なのが、そうでないより私にはもっとお前をいとしいものにさせているのだと云うことが、どうして分らないのだろうなあ……」と私はもどかしそうに心のうちで彼女に呼びかけながら、しかし表面はわざと何んにも闻きとれなかったような様子をしながら、そのままじっと身动きもしないでいると、彼女は急に私からそれを反らせるようにして颜をもたげ、だんだん私の肩から手さえも离して行きながら、「どうして、私、この顷こんなに気が弱くなったのかしら? こないだうちは、どんなに病気のひどいときだって何んとも思わなかった癖に……」“你是这样的柔弱,更让我感到怜爱。你怎麼不明白呢……”我在心里焦急地呼唤,但表面上却故意装出什麼都没听见的样子,一动不动,没有应答她。她忽然仰起脸,抬起头,渐渐地,手也离开了我的肩膀,一边走一边用低沉的声音,宛如自言自语一样,含含糊糊地说:“为什麼?我……这个时候……还表现得这麼懦弱?……这些日子,不管病得多重,我都没有胡思乱想,但是……”と、ごく低い声で、独り言でも言うように口ごもった。沈黙がそんな言叶を気づかわしげに引きのばしていた。そのうち彼女が急に颜を上げて、私をじっと见つめたかと思うと、それを再び伏せながら、いくらか上ずったような中音で言った。「私、なんだか急に生きたくなったのね……」沉默,令人忧虑地延长著这些话。沉默中,她猛地抬起头。我还以为她要注视我,她却再次把头低了下来,用略微抬高了的中音说:“我不知道为什麼突然又想活下去……”それから彼女は闻えるか闻えない位の小声で言い足した。「あなたのお荫で……」然后,她用听得见但又听不见的声音补充道:“因为有你……”* それは、私达がはじめて出会ったもう二年前にもなる夏の顷、不意に私の口を冲いて出た、そしてそれから私が何んということもなしに口ずさむことを好んでいた、那是我们两年前第一次见面的那个夏天。我不经意间脱口而出、而后也无缘无故地喜欢的诗句:风立ちぬ、いざ生きめやも。纵有疾风起,人生不言弃。という诗句が、それきりずっと忘れていたのに、又ひょっくりと私达に苏ってきたほどの、――云わば人生に先立った、人生そのものよりかもっと生き生きと、もっと切ないまでに愉しい日々であった。这句诗,突然间又为我们找回了那段时候一直都已忘怀的时光——换言之,人生最重要的、从人生自身到更加生动鲜活、更加烦恼苦闷的、。私达はその月末に八ヶ岳山麓のサナトリウムに行くための准备をし出していた。私は、一寸した识合いになっている、そのサナトリウムの院长がときどき上京する机会を捉えて、其処へ出かけるまでに一度节子の病状を诊て贳うことにした。我们开始为月末去八岳山麓疗养院做准备了。决定抓住那位相交不深的疗养院院长常常进京的机会,在出发之前请他看看节子的病情。 
或る日、やっとのことで郊外にある节子の家までその院长に来て贳って、最初の诊察を受けた后、「なあに大したことはないでしょう。まあ、一二年山へ来て辛抱なさるんですなあ」と病人达に言い残して忙しそうに帰ってゆく院长を、私は駅まで见送って行った。私は彼から自分にだけでも、もっと正确な彼女の病态を闻かしておいて贳いたかったのだった。这一天,好不容易请到那位院长来到郊外的节子家。接受了第一次检查之后,他说:“问题不大。嗯,得到山里苦个一两年吧!”院长给我们留下这些话,就匆匆忙忙的回去了。我把院长送到车站,想从他那里听到只能告诉我的、关於节子的更准确的病情。「しかし、こんなことは病人には言わぬようにしたまえ。父亲にはそのうち仆からもよく话そうと思うがね」院长はそんな前置きをしながら、少し気むずかしい颜つきをして节子の容态をかなり细かに私に说明してくれた。それからそれを黙って闻いていた私の方をじっと见て、「君もひどく颜色が悪いじゃないか。ついでに君の身体も诊ておいてやるんだったな」と私を気の毒がるように言った。“这个……这种事情,不要跟节子说。她父亲那边,我想在近几天跟他详细谈谈。”院长说这些开场白之后,带著几分痛苦的表情,非常详细地向我说明了节子的情况。“你的脸色不也是非常难看吗?我顺便也检查检查你的身体。”他难掩同情地跟我说。駅から私が帰って、再び病室にはいってゆくと、父はそのまま寝ている病人の傍に居残って、サナトリウムへ出かける日取などの打ち合わせを彼女とし出していた。なんだか浮かない颜をしたまま、私もその相谈に加わり出した。「だが……」父はやがて何か用事でも思いついたように、立ち上がりながら、「もうこの位に良くなっているのだから、夏中だけでも行っていたら、よかりそうなものだがね」といかにも不审そうに言って、病室を出ていった。我从车站回来回到病房,节子的父亲依旧躺在节子身边,开始和她商议著挑选去疗养院的出发日期之类的事情。我依旧带著无精打采的表情,加入到他们的讨论之中。“可是……”不一会儿,父亲好像想起了什麼事情似的,一边站起来一边令人摸不著头脑的说:“已经恢复得这样了,只要夏天过去,一切应该都会变得很好的啊。”说著,就走出了病房。二人きりになると、私达はどちちからともなくふっと黙り合った。それはいかにも春らしい夕暮であった。私はさっきからなんだか头痛がしだしているような気がしていたが、それがだんだん苦しくなってきたので、そっと目立たぬように立ち上がると、硝子扉の方に近づいて、その一方の扉を半ば开け放ちながら、それに靠れかかった。そうしてしばらくそのまま私は、自分が何を考えているのかも分からない位にぼんやりして、一面にうっすらと霭の立ちこめている向うの植込みのあたりへ「いい匂がするなあ、何んの花のにおいだろう――」と思いながら、空虚な目をやっていた。只剩下两个人了,我们都不由自主地沉默了起来。那是一个名副其实的春日黄昏。我刚才觉得莫名的头疼,而这种疼痛的感觉越来越加深了。於是,我不想引起注意,悄悄的站了起来,走到玻璃门边,把半边门打开一半,便靠在了门上。就这样,我一动不动地发呆,也不知道自己在想什麼,空虚的眼神投向背面腾起一片薄雾的树丛里边,心里想著:“真香啊,那是什麼花的香气……”「何をしていらっしゃるの?」“你在干嘛?”私の背后で、病人のすこし嗄れた声がした。それが不意に私をそんな一种の麻痹したような状态から覚醒させた。私は彼女の方には背中を向けたまま、いかにも何か他のことでも考えていたような、取ってつけたような调子で、「お前のことだの、山のことだの、それからそこで仆达の暮らそうとしている生活のことだのを、考えているのさ……」我的背后,传来节子略带沙哑的声音。这声音突如其来的把我从这种恍惚麻痹的状态下唤醒。我背对著她不动,用假装出来的、若有所思似的语调,断断续续地说:“我在想你的事情、山里的事情、还有在那里我们要过的生活。”と途切れ途切れに言い出した。が、そんなことを言い続けているうちに、私はなんだか本当にそんな事を今しがたまで考えていたような気がしてきた。そうだ、それから私はこんなことも考えていたようだ――。而这样不断地说著的时候,不知道为什麼,我竟觉得直到刚才才真的在想这些事情。是的,那以后,我好像也思考了这些事情。「向うへいったら、本当にいろいろな事が起るだろうなあ。……しかし人生というものは、お前がいつもそうしているように、何もかもそれに任せ切って置いた方がいいのだ。……そうすればきっと、私达がそれを希おうなどとは思いも及ばなかったようなものまで、私达に与えられるかも知れないのだ。……」そんなことまで心の里で考えながら、それには少しも自分では気がつかずに、私はかえって何んでもないように见える些细な印象の方にすっかり気をとられていたのだ。……“到了那边,真的应该有各种事情发生的……但是,人生这个东西,就像你一直做的那样,可以把一切都交给他。如果能这样,就一定会把我们也许想都想不到去祈求的东西赐给我们。”我心里这样想著,反而被一些细微的印象彻底吸引进去,而自己却丝毫没有注意到。そんな庭面はまだほの明るかったが、気がついて见ると、部屋のなかはもうすっかり薄暗くなっていた。庭院还微微地亮著,而当我注意到的时候,房子里已经完全变得昏暗起来。「明りをつけようか?」私は急に気をとりなおしながら言った。“要把灯打开吗?”我回过神来问道。「まだつけないでおいて顶戴……」そう答えた彼女の声は前よりも嗄れていた。“还是别开了……”她的回答声比刚才更加沙哑了。 しばらく私达は言叶もなくていた。良久,我们都没有说过话。「私、すこし息ぐるしいの、草のにおいが强くて……」“我有些喘不过气来了,草的气味太浓了。”「じゃ、ここも缔めて置こうね」“那……我去把门关了。” 私は、殆ど悲しげな调子でそう応じながら、扉の握りに手をかけて、それを引きかけた。我用近乎悲伤的语调这样应和著,抓住门把手,把门拉上。「あなた……」彼女の声は今度は殆ど中性的なくらいに闻えた。「いま、泣いていらしったんでしょう?」“你……”这一次,她的声音听起来几乎就是中性的,“你刚才在哭吗?”私はびっくりした様子で、急に彼女の方をふり向いた。我做出吃惊的样子,突然转向她。「泣いてなんかいるものか。……仆を见て御覧」 “谁哭了……不信你看看我。”彼女は寝台の中から私の方へその颜を向けようともしなかった。もう薄暗くってそれとは定かに认めがたい位だが、彼女は何かをじっと见つめているらしい。しかし私がそれを気づかわしそうに自分の目で追って见ると、ただ空を见つめているきりだった。她甚至不想从床里把脸转向我,尽管天色昏暗,难以确认,但是她看上去是在全神贯注地看著什麼东西。而当我担心地把视线追过去的时候,却看到她在凝视著上空。「わかっているの、私にも……さっき院长さんに何か言われていらしったのが……」“其实……我也知道……刚才院长说了些什麼……”
私はすぐ何か答えたかったが、何んの言叶も私の口からは出て来なかった。私はただ音を立てないようにそっと扉を缔めながら再び、夕暮れかけた庭面を见入り出した。我想马上回答些什麼,但什麼也说不出来。我只是轻轻地再次关紧门,出神地注视著即将黄昏的庭院。やがて私は、私の背后に深い溜息のようなものを闻いた。过了一会儿,我听到了背后深深的叹息。「御免なさい」彼女はとうとう口をきいた。その声はまだ少し颤えを帯びていたが、前よりもずっと落着いていた。「こんなこと気になさらないでね……。私达、これから本当に生きられるだけ生きましょうね……」“对不起。”她终於开口了。那声音虽然仍有些颤抖,但比以前镇定了许多。“这些事情……请你不要太过在意,我们……今后能活多久就多久吧……”私はふりむきながら、彼女がそっと目がしらに指先をあてて、そこにそれをじっと置いているのを认めた。我转过头,看见她悄悄地把指尖放在内眼角上,一直没有移开。*四月下旬の或る薄昙った朝、停车场まで父に见送られて、私达はあたかも蜜月の旅へでも出かけるように、父の前はさも愉しそうに、山岳地方へ向う汽车の二等室に乗り込んだ。汽车は徐かにプラットフォームを离れ出した。その迹に、つとめて何気なさそうにしながら、ただ背中だけ少し前屈みにして、急に年とったような様子をして立っている父だけを一人残して。――四月下旬一个微云的早晨,节子的父亲把我们送到了停车场。我们好像出发去度蜜月一样,当著父亲的面,非常高兴地乘上了前往山岳地方的火车的二等车厢。火车缓缓离开了月台。车后,只留下父亲一人努力地站著,他的后背已经微微前屈,仿佛突然变老了。すっかりプラットフォームを离れると、私达は窓を缔めて、急に淋しくなったような颜つきをして、空いている二等室の一隅に腰を下ろした。そうやってお互の心と心を温め合おうとでもするように、膝と膝とをぴったりとくっつけながら……完全离开月台后,我们关上车窗,一下子表情变得寂寞起来,在二等车厢空著的一个角落坐了下来。我们膝盖和膝盖紧紧的贴在一起,仿佛这样就能够相互温暖对方的心……风雪黄昏 私达の乗った汽车が、何度となく山を攀じのぼったり、深い渓谷に沿って走ったり、又それから急に打ち展けた葡萄畑の多い台地を长いことかかって横切ったりしたのち、渐っと山岳地帯へと果てしのないような、执拗な登攀をつづけ出した顷には、空は一层低くなり、いままではただ一面に锁ざしているように见えた真っ黒な云が、いつの间にか离れ离れになって动き出し、それらが私达の目の上にまで圧しかぶさるようであった。空気もなんだか底冷えがしだした。上衣の襟を立てた私は、肩挂にすっかり体を埋めるようにして目をつぶっている节子の、疲れたと云うよりも、すこし兴奋しているらしい颜を不安そうに见守っていた。彼女はときどきぼんやりと目をひらいて私の方を见た。はじめのうちは二人はその度毎に目と目で微笑みあったが、しまいにはただ不安そうに互を见合ったきり、すぐ二人とも目をそらせた。そうして彼女はまた目を闭じた。我们乘坐的火车一次次地攀上高山,沿著深深的溪谷奔跑,然后花了很长时间的横穿后,大地突然开阔起来,在经过了一个有很多葡萄园的台地以后,终於奔向山岳地带。在这似乎没有尽头的、顽强地不断的攀登的途中,天空变得更低了,刚才看起来还是被束成一团的漆黑云朵,不知何时四分五裂地浮动起来,仿佛要直压我们的眼前。空气也开始彻骨地寒冷起来。我束起上衣的衣领,不安地守望著想把身子全埋在披肩里、闭著眼睛的节子,她脸上写满的与其说是疲劳,不如说是有些许兴奋。她时而漠然地睁开眼睛看我。最初,两个人每次还互相用眼睛对视微笑著,而后便只是互相不安地对视,马上又都把视线移开。然后她又闭上了眼睛。「なんだか冷えてきたね。雪でも降るのかな」“怎麼好像冷了起来,是不是下雪了?”「こんな四月になっても雪なんか降るの?」“才刚过了四月,也会下雪吗?”「うん、この辺は降らないともかぎらないのだ」“诶,这一带就是不能保证不下雪的。”まだ三时顷だというのにもうすっかり薄暗くなった窓の外へ目を注いだ。ところどころに真っ黒な枞をまじえながら、叶のないが无数に并び出しているのに、すでに私达は八ヶ岳の裾を通っていることに気がついたが、まのあたりに见える筈の山らしいものは影も形も见えなかった。……虽然才三点左右,窗外已完全变得昏暗。我凝望著窗外,发现到处排列著无数没有叶子的落叶松,间或混著些。我们已经过了八岳山脚,而眼下就应该看到的像山的东西却还是无影无踪。汽车は、いかにも山麓らしい、物置小屋と大してかわらない小さな駅に停车した。駅には、高原疗养所の印のついた法被を着た、年とった、小使が一人、私达を迎えに来ていた。火车在山麓那个和小仓库没有多大区别的小站停了下来。车站上,有一名穿著“高原疗养所”标志的号衣、上了年纪的勤杂工来迎接我们。駅の前に待たせてあった、古い、小さな自动车のところまで、私は节子を腕で支えるようにして行った。私の腕の中で、彼女がすこしよろめくようになったのを感じたが、私はそれには気づかないようなふりをした。我用胳膊架著节子,走向车站前久候多时的、又旧又小的汽车。在我的臂弯里,我感觉到她有些踉跄,但却装出没有察觉的样子。「疲れたろうね?」“累了吗?”「そんなでもないわ」“不累。”私达と一绪に下りた数人の土地の者らしい人々が、そういう私达のまわりで何やら嗫き合っていたようだったが、私达が自动车に乗り込んでいるうちに、いつのまにかその人々は他の村人たちに混って见分けにくくなりながら、村のなかに消えていた。
和我们一起下车的几个当地人,在我们周围窃窃私语著什麼。而当我们乘上汽车的时候,那些人便在不知不觉间,与其他村民混杂在一起,难以辨别,消逝在村落之中。私达の自动车が、みすぼらしい小家の一列に続いている村を通り抜けた后、それが见えない八ヶ岳の尾根までそのまま果てしなく拡がっているかと思える凸凹の多い倾斜地へさしかかったと思うと、背后に雑木林を背负いながら、赤い屋根をした、いくつも侧翼のある、大きな建物が、行く手に见え出した。我们的汽车穿过简陋的小屋连成一列的村庄,刚一进入,在那无穷无尽扩展开来、直至遥不可及的八岳山脊、凹凸不平的斜坡前方,我们看到了一幢背靠杂木林、有著红色屋顶和几个侧楼的巨大建筑物。「あれだな」と、私は车台の倾きを身体に感じ出しながら、つぶやいた。“是那个吧!”我一边用身体感受著车体的倾斜,一边喃喃自语道。节子はちょっと颜を上げ、いくぶん心配そうな目つきで、それをぼんやりと见ただけだった。节子只是微微地扬起脸,用略带忧郁的眼神,木然地看著它。サナトリウムに着くと、私达は、その一番奥の方の、裏がすぐ雑木林になっている、病栋の二阶の第一号室に入れられた。简単な诊察后、节子はすぐベッドに寝ているように命じられた。リノリウムで床を张った病室には、すべて真っ白に涂られたベッドと卓と椅子と、――それからその他には、いましがた小使が届けてくれたばかりの数个のトランクがあるきりだった。二人きりになると、私はしばらく落着かずに、附添人のために宛てられた狭苦しい侧室にはいろうともしないで、そんなむき出しな感じのする室内をぼんやりと见廻したり、又、何度も窓に近づいては、空模様ばかり気にしていた。风が真っ黒な云を重たそうに引きずっていた。そしてときおり裏の雑木林から锐い音を?いだりした。私は一度寒そうな恰好をしてバルコンに出て行った。バルコンは何んの仕切もなしにずっと向うの病室まで続いていた。その上には全く人けが绝えていたので、私は构わずに歩き出しながら、病室を一つ一つ覗いて行って见ると、丁度四番目の病室のなかに、一人の患者の寝ているのが半开きになった窓から见えたので、私はいそいでそのまま引っ返して来た。到了疗养院之后,我们被安排到最里边、背后就是杂木林的那幢住院楼的二楼第一号病房。简单检查之后,节子被命令马上上床躺下。在油毡铺地的病房里,除了勤杂工刚刚送来的几只行李箱,就是被漆成飒白的床和桌椅。只剩下两个人之后,我久久都不能平静,不时来到专门分配给陪护人的狭窄不堪的侧室,漠然的环顾著这令人感觉无遮无拦的室内,又数次走近窗户,专心观察天气的变化。风费力地拖曳著漆黑的云,时而从背后的杂木林挤出尖锐的声音。我一度走到阳台,做出一副很冷的样子。阳台没有任何隔断,一直通向那边的病房。我满不在乎地走去,窥望著每一间病房。正好在第四间病房,可以透过半开的窗子,看到一位患者在睡觉。於是,我马上就匆匆忙忙的回来了。 やっとランプが点いた。それから私达は看护妇の运んで来てくれた食事に向い合った。それは私达が二人きりで最初に共にする食事にしては、すこし侘びしかった。食事中、外がもう真っ暗なので何も気がつかずに、唯何んだかあたりが急に静かになったなと思っていたら、いつのまにか雪になり出したらしかった。终於,灯亮了。然后,我们围坐在护士送来的饭菜前。那是我们第一次只有两个人在一起的就餐。就此而言,有些冷清。吃饭的时候,外面已经漆黑一片,所以也没有注意到什麼,只是突然间觉得不知为什麼四周忽然寂静了下来,原来不知何时天空飘起了雪。私は立ち上って、半开きにしてあった窓をもう少し细目にしながら、その硝子に颜をくっつけて、それが私の息で昙りだしたほど、じっと雪のふるのを见つめていた。それからやっと其処を离れながら、节子の方を振り向いて、「ねえ、お前、何んだってこんな……」と言い出しかけた。我站起身来,把半开的窗子再关紧一点,然后,把脸凑到那玻璃跟前,一动不动地凝视著雪花沉沉下坠——以致於那玻璃因为我的气息而起了雾。过了许久,我离开那里,并转向节子说:“哎,你怎麼啦……”彼女はベッドに寝たまま、私の颜を诉えるように见上げて、それを私に言わせまいとするように、口へ指をあてた。她依旧躺在床上,目光如炬地仰望住我的脸,却把手指放在嘴唇上,仿佛又不想对我说出那些话。*八ヶ岳の大きなのびのびとした代赭色の裾野が渐くその勾配を弛めようとするところに、サナトリウムは、いくつかの侧翼を并行に拡げながら、南を向いて立っていた。その裾野の倾斜は更に延びて行って、二三の小さな山村を村全体倾かせながら、最后に无数の黒い松にすっかり包まれながら、见えない溪间のなかに尽きていた。疗养院在宏大延绵、深褐色的八岳山麓由陡及缓处向南而立,并列地伸展著几行侧翼。山麓的倾斜继续延伸著,使得三三两两的山村也都倾斜著,最后被无数的黑松树彻底覆盖,终止於视野之外的山谷。サナトリウムの南に开いたバルコンからは、それらの倾いた村とその赭ちゃけた耕作地が一帯に见渡され、更にそれらを取り囲みながら果てしなく并み立っている松林の上に、よく晴れている日だったならば、南から西にかけて、南アルプスとその二三の支脉とが、いつも自分自身で涌き上らせた云のなかに见え隠れしていた。从疗养院南向开放的阳台望去,可将那一带倾斜的山村和褐色的耕地尽收眼底。而且如果是晴朗的好日子,在环绕的村庄和田野、排列紧密、无边无际的松林之上,总能看见自西而东的南阿尔卑斯山脉和它的几个支脉,在自己生成的云海中若隐若现。サナトリウムに着いた翌朝、自分の侧室で私が目を醒ますと、小さな窓枠の中に、蓝青色に晴れ切った空と、それからいくつもの真っ白い鶏冠のような山颠が、そこにまるで大気からひょっくり生れでもしたような思いがけなさで、殆んど目ながいに见られた。そして寝たままでは见られないバルコンや屋根の上に积った雪からは、急に春めいた日の光を浴びながら、绝えず水蒸気がたっているらしかった。
到达疗养院的第二天早晨,我在自己的侧室里醒来。小窗框中,晴澈的蓝天和几座雪白的、鸡冠似的山峰,宛如从大气中突然诞生出来似的,地呈现在眼前。而躺著时看不见的阳台及屋里的积雪,沐浴著突然到来的、春意盎然的阳光,似乎正在不断地散发著水蒸气。すこし寝过したくらいの私は、いそいで飞び起きて、隣りの病室へはいって行った。节子は、すでに目を醒ましていて、毛布にくるまりながら、ほてったような颜をしていた。大概有点睡过头了,我急忙跳起来,走进隔壁的病房。节子已经醒了,裹在毛毯里,一脸绯红。「お早う」私も同じように、颜がほてり出すのを感じながら、気軽そうに言った。「よく寝られた?」“早啊!”我也感觉到自己的脸也在涨红,轻松的说:“睡得好吗?”「ええ」彼女は私にうなずいて见せた。「ゆうべ睡眠剤を饮んだの。なんだか头がすこし痛いわ」“好。”她对我颌首示意,“昨天吃了,不知道怎麼回事,有点头疼。”私はそんなことになんか构っていられないと云った风に、元気よく窓も、それからバルコンに通じる硝子扉も、すっかり开け放した。まぶしくって、一时は何も见られない位だったが、そのうちそれに目がだんだん驯れてくると、雪に埋れたバルコンからも、屋根からも、野原からも、木からさえも、軽い水蒸気の立っているのが见え出した。我做出那种无所谓的样子,劲头十足地把窗户以及通往阳台的玻璃门全部打开。眼睛被光晃得一时间几乎什麼都看不见了。而当眼睛慢慢适应之后,逐渐看见被雪埋住的阳台、屋顶、原野、树木,上腾著轻盈的水蒸气。「それにとても可笑しな梦を见たの。あのね……」彼女が私の背后で言い出しかけた。“而且,我做了一个很奇怪的梦。”她在我背后开始说了起来。私はすぐ、彼女が何か打ち明けにくいようなことを无理に言い出そうとしているらしいのを覚った。そんな场合のいつものように、彼女のいまの声もすこし嗄れていた。我马上感觉到她似乎在努力说出什麼难以启齿的事情。就像每次遇到这种情况时一样,她现在的声音也略带沙哑。今度は私が、彼女の方を振り向きながら、それを言わせないように、口へ指をあてる番だった。……这次轮到我转向她,把手指放在嘴上,不让她说出声来……やがて看护妇长がせかせかした亲切そうな様子をしてはいって来た。こうして看护妇长は、毎朝、病室から病室へと患者达を一人一人见舞うのである。不久,护士长匆匆忙忙、表情亲切地走了进来。护士长就是这样每天早晨一个病房一个病房的逐个看望患者的。「ゆうべはよくお休みになれましたか?」看护妇长は快活そうな声で寻ねた。“您昨晚休息得好吗?”护士长用亲切的语调问道。 病人は何も言わないで、素直にうなずいた。节子什麼也没有说,老老实实地点著头。*こういう山のサナトリウムの生活などは、普通の人々がもう行き止まりだと信じているところから始まっているような、特殊な人间性をおのずから帯びてくるものだ。――私が自分の里にそういう见知らないような人间性をぼんやりと意识しはじめたのは、入院后间もなく私が院长に诊察室に呼ばれて行って、节子のレントゲンで撮られた疾患部の写真を见せられた时からだった。这种山中疗养院之类的生活,本身带有一种特殊的人性,那是从一般人看来已经无路可走之处开始起步的。我模模糊糊地意识到,自己也拥有这种似乎很陌生的人性,是从刚住院不久就被院长叫去诊断室、给我看节子患部X光照片的时候开始的。院长は私を窓ぎわに连れて行って、私にも见よいように、その写真の原板を日に透かせながら、一々それに说明を加えて行った。右の胸には数本の白々とした肋骨がくっきりと认められたが、左の胸にはそれらが殆んど何も见えない位、大きな、まるで暗い不思议な花のような、病灶ができていた。院长把我带到窗边,仿佛我也得看似的,把照片的底板对著阳光,一一加以说明。右胸的几根白花花的肋骨清晰可辨,但左胸的肋骨几乎什麼都看不见,形成了一个大大的、宛如神秘黑花一样的病灶。「思ったよりも病灶が拡がっているなあ。……こんなにひどくなってしまっているとは思わなかったね。……これじゃ、いま、病院中でも二番目ぐらいに重症かも知れんよ……」“病灶比想像的还要大,没想到会变得这麼严重了……这样的话,恐怕是当下医院里第二严重的重症了……”そんな院长の言叶が自分の耳の中でがあがあするような気がしながら、私はなんだか思考力を失ってしまった者みたいに、いましがた见て来たあの暗い不思议な花のような影像をそれらの言叶とは少しも関系がないもののように、それだけを鲜かに意识の阈に上らせながら、诊察室から帰って来た。自分とすれちがう白衣の看护妇だの、もうあちこちのバルコンでをしだしている裸体の患者达だの、病栋のざわめきだの、それから小鸟の啭りだのが、そういう私の前を何んの连络もなしに过ぎた。我从诊断室回来,感觉著院长这番话在耳边絮绕,却不知为什麼像一个失去了思考能力的人一样,只是把那个刚刚看过的神秘黑花清晰的呈现於意识世界之上,仿佛它与那番话根本没有关系。无论是与自己擦肩而过的白衣护士,还是已经开始在四周的阳台上做的裸体患者,病房的嘈杂,还有鸟儿的鸣叫,都在我前面没有任何关联地经过。私はとうとう一番はずれの病栋にはいり、私达の病室のある二阶へ通じる阶段を升ろうとして机械的に足を弛めた瞬间、その阶段の一つ手前にある病室の中から、异様な、ついぞそんなのはまだ闻いたこともないような気味のわるい空咳が続けさまに泄れて来るのを耳にした。我终於走进了最边上的住院楼,在即将踏上通往我们病房所在的二楼的楼梯而机械性地放松腿部的瞬间,我听见从紧靠楼梯的一间病房里,连续不断传来乾咳声,这种声音是异样的、从未听过的,也是让人心里极不舒服的。
「おや、こんなところにも患者がいたのかなあ」と思いながら、私はそのドアについている No.17 という数字を、ただぼんやりと见つめた。“哦。这种地方也有患者。”我只是这样想著,漠然地注视著那门上钉著的NO.17的数字。*こうして私达のすこし风変りな爱の生活が始まった。就这样,我们风格略异的爱情生活开始了。节子は入院以来、安静を命じられて、ずっと寝ついたきりだった。そのために、気分の好いときはつとめて起きるようにしていた入院前の彼女に比べると、かえって病人らしく见えたが、别に病気そのものは悪化したとも思えなかった。医者达もまた直ぐ快愈する患者として彼女をいつも取り扱っているように见えた。「こうして病気を生捕りにしてしまうのだ」と院长などは冗谈でも言うように言ったりした。节子住院以来就被要求静养,一直卧床不起。为此,跟住院之前相比,现在看起来,她反而更像病人了——以前她还能够在心情好的时候尽力起床的。但是病情本身并没有觉得有什麼特别的恶化。在外表上,医生们也总是把她当作马上就痊愈的患者来对待。院长等人也常常开玩笑似的说:“这样下去,就能生擒病魔。”季节はその间に、いままで少し遅れ気味だったのを取り戻すように、急速に进み出していた。春と夏とが殆んど同时に押し寄せて来たかのようだった。毎朝のように、莺や闲古鸟の啭りが私达を眼ざませた。そして殆んど一日中、周囲の林の新绿がサナトリウムを四方から袭いかかって、病室の中まですっかり爽やかに色づかせていた。それらの日々、朝のうちに山々から涌いて出て行った白い云までも、夕方には再び元の山々へ立ち戻って来るかと见えた。在这期间,季节突然快速转移,仿佛要夺回前些时日略显迟缓的节奏一般。春天和夏天好像要同时到来似的。每天早晨,黄莺和的啼鸣把我们唤醒。而后的一天之内,周围林子中的新绿从四面八方向疗养院袭来,连病房里都被彻底地涂上了清爽的色彩。在那些日子里,似乎就是连早晨从山中涌出并飘开去的白云,也在傍晚重又返回原来的群山之中。私は、私达が共にした最初の日々、私が节子の枕もとに殆んど附ききりで过したそれらの日々のことを思い浮べようとすると、それらの日々が互に似ているために、その魅力はなくはない単一さのために、殆んどどれが后だか先きだか见分けがつかなくなるような気がする。我每次想起我们最初在一起的那些日子,每次想起我在节子枕畔几乎形影相随的这些日子,就会因为这些时光的相似,由於那魅力的不可磨灭的单纯,而发现它们变得几乎无法分清孰先孰后。 と言うよりも、私达はそれらの似たような日々を缲り返しているうちに、いつか全く时间というものからも抜け出してしまっていたような気さえする位だ。そして、そういう时间から抜け出したような日々にあっては、私达の日常生活のどんな些细なものまで、その一つ一つがいままでとは全然异った魅力を持ち出すのだ。私の身辺にあるこの微温い、好い匂いのする存在、その少し早い呼吸、私の手をとっているそのしなやかな手、その微笑、それからまたときどき取り交わす平凡な会话、――そう云ったものを若し取り除いてしまうとしたら、あとには何も残らないような単一な日々だけれども、――我々の人生なんぞというものは要素的には実はこれだけなのだ、そして、こんなささやかなものだけで私达がこれほどまで満足していられるのは、ただ私がそれをこの女と共にしているからなのだ、と云うことを私は确信していられた。我甚至感到,与其这样说,不如说我们在反复重复著这些相似的日子中,不知何时起,已经不知不觉地从时间里跳了出来。於是,有了那些摆脱时间的日子,使得我们日常生活不管多麼琐碎的细节,都一一具备了迄今为止完全不同的魅力。在我身边散著微温、发著芳香的存在,她那轻快的呼吸,她那时刻牵著我手的柔柔的手,那微笑,以及那时时发生的平凡对谈——即使是这些日子,单纯得除去了这些便一无所有,但是,我们所谓的人生,在元素上。而仅如此之微少,却使我们这般的满足。我坚信,只是因为这是我和此女子在共同完成它。それらの日々に於ける唯一の出来事と云えば、彼女がときおり热を出すこと位だった。それは彼女の体をじりじり衰えさせて行くものにちがいなかった。が、私达はそういう日は、いつもと少しも変らない日课の魅力を、もっと细心に、もっと缓慢に、あたかも禁断の果実の味をこっそり偸みでもするように味わおうと试みたので、私达のいくぶん死の味のする生の幸福はその时は一そう完全に保たれた程だった。这些日子里发生的唯一事件,就是她时而发烧的事了。无疑,这会一步步地使她身体衰弱。但是,我们在那些日子里,会更加细心地、更加缓慢地、宛如偷偷地品尝禁果味道一般,去尝试品味那些与往常毫无差异、按部就班的魅力。所以,我们那带有几分死亡味道的生之幸福,在那些时候愈发地得到了完整的保护。そんな或る夕暮、私はバルコンから、そして节子はベッドの上から、同じように、向うの山の背に入って间もない夕日を受けて、そのあたりの山だの丘だの松林だの山畑だのが、半ば鲜かな茜色を帯びながら、半ばまだ不确かなような鼠色に徐々に侵され出しているのを、うっとりとして眺めていた。ときどき思い出したようにその森の上へ小鸟たちが抛物线を描いて飞び上った。――私は、このような初夏の夕暮がほんの一瞬时生じさせている一帯の景色は、すべてはいつも见驯れた道具立てながら、恐らく今を措いてはこれほどの溢れるような幸福の感じをもって私达自身にすら眺め得られないだろうことを考えていた。そしてずっと后になって、いつかこの美しい夕暮が私の心に苏って来るようなことがあったら、私はこれに私达の幸福そのものの完全な絵を见出すだろうと梦みていた。一天傍晚,我从阳台,节子从床上,出神地眺望著对面的山峰、丘陵、松林,田野,在刚刚进入山背的夕阳之下,一半带著鲜艳的深红,一半被不断变化著的暗灰慢慢侵蚀著。小鸟时而突然飞起,在那片森林之上画抛物线。我想,这样的初夏黄昏,短短一瞬间诞生的那一带景色,都是平时司空见惯的道具。如果不是到了如今这一刻,它们甚至就无法给我们自身带来如此充沛欲溢的幸福感了。於是我幻想著,等到了遥远的将来,如果在什麼时候,这个美丽的黄昏重归於我心中,我们就会发现我们幸福本身的完美画面。「何をそんなに考えているの?」私の背后から节子がとうとう口を切った。“你在想啥呢?”节子在我背后终於开了口。「私达がずっと后になってね、今の私达の生活を思い出すようなことがあったら、それがどんなに美しいだろうと思っていたんだ」“我在想,到了很久很久以后,如果我们能回忆起我们现在的生活,那该是多麼的美好。”「本当にそうかも知れないわね」彼女はそう私に同意するのがさも愉しいかのように応じた。“应该会的!”她是这样赞同著我的看法,对应著她实实在在的快乐。それからまた私达はしばらく无言のまま、再び同じ风景に见入っていた。が、そのうちに私は不意になんだか、こうやってうっとりとそれに见入っているのが自分であるような自分でないような、変に茫漠とした、取りとめのない、そしてそれが何んとなく苦しいような感じさえして来た。そのとき私は自分の背后で深い息のようなものを闻いたような気がした。が、それがまた自分のだったような気もされた。私はそれを确かめでもするように、彼女の方を振り向いた。事后,我们又地保持著沉默,凝视著风景。可是,我不知道,为什麼在不经意间感到这样出神地眺望著景色的自己,不是本来的自己,甚至有一种异样的迷茫,没有边际、而又有几分苦楚的感觉。这时,我感觉到了好像自己的背后传来了一声深深的叹息,却又感觉这叹息是属於自己的。我转向她,似乎要确认这声叹息。「そんなにいまの……」そういう私をじっと见返しながら、彼女はすこし嗄れた声で言いかけた。“你对现在的状况竟然那麼……”她一动不动地回视著我,用略带沙哑的声音小声说道。が、それを言いかけたなり、すこし踌躇っていたようだったが、それから急にいままでとは异った打弃るような调子で、「そんなにいつまでも生きて居られたらいいわね」と言い足した。可是她话音刚落,就显得迟疑起来,然后突然用与刚才不一样的语调,努力扭转印象似的补充道:“要是永远都这样活著,那该多好啊!”「又、そんなことを!」 私はいかにも焦れったいように小さく叫んだ。“怎麼又说这种话!?”我好像真的生气似的小声喊道。「御免なさい」彼女はそう短く答えながら私から颜をそむけた。“对不起。”她这样简短地回答著,把脸从我这里转开去。いましがたまでの何か自分にも诀の分らないような気分が私にはだんだん一种の苛ら立たしさに変り出したように见えた。私はそれからもう一度山の方へ目をやったが、その时は既にもうその风景の上に一瞬间生じていた异様な美しさは消え失せていた。一种直到刚才自己也不知缘由的情绪,似乎正在一点一点的变成一种焦躁。於是,我再一次把目光投向山那边,但这时在那风景之上,那瞬间产生的异常的美已经消失了。
その晩、私が隣りの侧室へ寝に行こうとした时、彼女は私を呼び止めた。当晚,在我要去隔壁侧室睡觉的时候,她叫住了我。「さっきは御免なさいね」“刚才真的很对不起!”「もういいんだよ」“好啦,好啦。”「私ね、あのとき他のことを言おうとしていたんだけれど……つい、あんなことを言ってしまったの」“我呀,当时是想说别的事情的。可是……一不小心,说了那番话。”「じゃ、あのとき何を言おうとしたんだい?」“那,当时你想说的是什麼?”「……あなたはいつか自然なんぞが本当に美しいと思えるのは死んで行こうとする者の眼にだけだと仰しゃったことがあるでしょう。……私、あのときね、それを思い出したの。何んだかあのときの美しさがそんな风に思われて」そう言いながら、彼女は私の颜を何か诉えたいように见つめた。“……你不是曾经说过吗?只有在以为将要死去的人眼里,才会认为自然真美。……我,当时呢,就想起了你这句话。不知道为什麼,我把当时的美景想成这样……”这样说著,她凝望著我的脸,目光如诉。その言叶に胸を冲かれでもしたように、私は思わず目を伏せた。そのとき、突然、私の头の中を一つの思想がよぎった。そしてさっきから私を苛ら苛らさせていた、何か不确かなような気分が、渐く私の里ではっきりとしたものになり出した。……我不由自主地伏下视线,仿佛心头被这番话撞击了一样,这时,我的脑海里突然闪现一个念头。於是,从刚才就令我焦躁、含混不清的心情,终於在我心中渐渐清晰起来……「そうだ、おれはどうしてそいつに気がつかなかったのだろう? あのとき自然なんぞをあんなに美しいと思ったのはおれじゃないのだ。それはおれ达だったのだ。まあ言ってみれば、节子の魂がおれの眼を通して、そしてただおれの流仪で、梦みていただけなのだ。……それだのに、节子が自分の最后の瞬间のことを梦みているとも知らないで、おれはおれで、胜手におれ达の长生きした时のことなんぞ考えていたなんて……」是啊,我怎麼没有注意到她呢?那个时候,认为自然那麼美的,不是我,而是我们。噢,换言之,那只是节子的灵魂通过我的眼睛,甚至只是按照我的惯用方式去幻想。……尽管如此,节子也不知道自己在幻想著自己最后的瞬间,我自己竟然在随意地思考著我们长寿时的事情。……いつしかそんな考えをとつおいつし出していた私が、渐っと目を上げるまで、彼女はさっきと同じように私をじっと见つめていた。私はその目を避けるような恰好をしながら、彼女の上に跼みかけて、その额にそっと接吻した。私は心から羞かしかった。……她像刚才一样,一动不动地凝视著这样不知不觉地思来想去的我,直到我抬起眼来。我一边避开那眼神,一边在她的上方弯下身子,轻轻地吻了她的额头。我发自内心地感到羞愧。*とうとう真夏になった。それは平地でよりも、もっと猛烈な位であった。裏の雑木林では、何かが燃え出しでもしたかのように、蝉がひねもす啼き止まなかった。树脂のにおいさえ、开け放した窓から漂って来た。夕方になると、戸外で少しでも楽な呼吸をするために、バルコンまでベッドを引き出させる患者达が多かった。それらの患者达を见て、私达ははじめて、この顷俄かにサナトリウムの患者达の増え出したことを知った。しかし、私达は相かわらず谁にも构わずに二人だけの生活を続けていた。终於,到了盛夏。天气却似乎比平地更加酷热。后面的杂木林里好像烧著了什麼东西一样,蝉整天不停地鸣唱。甚至那一直开著的窗户,也飘来了树脂的味道。到了傍晚,为了尽量获得在户外的轻松呼吸,很多患者把床拉出到阳台。看到这些患者,我们才发现这段日子里疗养院的患者骤然增加了。但是,我们依旧不管任何人,继续著这只有两个人的生活。この顷、节子は暑さのためにすっかり食欲を失い、夜などもよく寝られないことが多いらしかった。私は、彼女の昼寝を守るために、前よりも一层、廊下の足音や、窓から飞びこんでくる蜂や虻などに気を配り出した。そして暑さのために思わず大きくなる私自身の呼吸にも気をもんだりした。这些日子,由於炎热,节子完全没有了食欲,晚上也常常不能安睡。为了守护她的午睡,我比以往更留心走廊里的脚步声,还有从窗外飞进来的蜂虻之类。然后,对自己因为炎热而不自觉地变粗的呼吸,也时而担忧起来,生怕突然间生气起来。そのように病人の枕元で、息をつめながら、彼女の眠っているのを见守っているのは、私にとっても一つの眠りに近いものだった。私は彼女が眠りながら呼吸を速くしたり弛くしたりする変化を苦しいほどはっきりと感じるのだった。私は彼女と心臓の鼓动をさえ共にした。ときどき軽いが彼女を袭うらしかった。そんな时、手をすこし痉挛させながら咽のところまで持って行ってそれを抑えるような手つきをする、――梦に魇われてでもいるのではないかと思って、私が起してやったものかどうかと踌躇っているうち、そんな苦しげな状态はやがて过ぎ、あとに弛缓状态がやって来る。そうすると、私も思わずほっとしながら、いま彼女の息づいている静かな呼吸に自分までが一种の快感さえ覚える。――そうして彼女が目を醒ますと、私はそっと彼女の髪に接吻をしてやる。彼女はまだ倦るそうな目つきで、私を见るのだった。对我而言,这样地在节子的枕畔,屏住呼吸守护著她的安睡,也是一种近乎睡眠的状态。我深切的感受到她安睡中呼吸快慢的变化,我的心脏甚至在和她一起跳动。轻度的,似乎不时袭击她。这个时候,她的手微微的颤抖著抬到了喉咙附近,做得仿佛要抑制它的手势——就在我怀疑她是不是在梦中遭遇梦魇,而犹豫著该不该把她唤醒时,这种痛苦状态转眼过去了,松弛状态随后来临。於是,我不由自主地松了一口气,甚至自己都对她现在喘息著的平静呼吸感到了一种快意。她一醒来,我就轻轻地吻著她的头发,她却用倦意尤存的眼神看著我。「あなた、そこにいたの?」“你在这里?”「ああ、仆もここで少しうつらうつらしていたんだ」“啊,我也在这里迷迷糊糊了好一阵子呢。”そんな晩など、自分もいつまでも寝つかれずにいるようなことがあると、私はそれが癖にでもなったように、自分でも知らずに、手を咽に近づけながらそれを抑えるような手つきを真似たりしている。そしてそれに気がついたあとで、それからやっと私は本当のを感じたりする。が、それは私にはむしろ快いものでさえあった。在那些夜晚,当自己怎麼也睡不著的时候,我像成癖了一样,时而无意识地把手靠近喉咙,模仿著试图抑制它的手势。而当自己发觉了之后,才终於感到自己真的。但是那对於我而言,甚至反而是令人愉悦的。「この顷なんだかお颜色が悪いようよ」或る日、彼女はいつもよりしげしげと见ながら言うのだった。「どうかなすったのじゃない?」“这阵子,怎麼你的脸色好像很难看?”一天,她比平日里更加深切地看著我说。“究竟发生了什麼事?”「なんでもないよ」そう言われるのは私の気に入った。「仆はいつだってこうじゃないか?」“啥事都没有。”我很高兴地说,“我不总是这样吗?”「あんまり病人の侧にばかりいないで、少しは散歩くらいなすっていらっしゃらない?」“拜托,不要总是呆在我这病人身边,能不能稍微出去走走?”「この暑いのに、散歩なんか出来るもんか。……夜は夜で、真っ暗だしさ。……それに毎日、病院の中をずいぶん往ったり来たりしているんだからなあ」“这麼热,哪还能出得去?这里一入夜就黑成一片……而且,我每天在医院里也没少跑来跑去啊。”
私はそんな会话をそれ以上にすすめないために、毎日廊下などで出逢ったりする、他の患者达の话を持ち出すのだった。よくバルコンの縁に一块りになりながら、空を竞马场に、动いている云をいろいろそれに似た动物に见立て合ったりしている年少の患者达のことや、いつも附添看护妇の腕にすがって、あてもなしに廊下を往复している、ひどい神経衰弱の、无気味なくらい背の高い患者のことなどを话して闻かせたりした。しかし、私はまだ一度もその颜は见たことがないが、いつもその部屋の前を通る度ごとに、気味のわるい、なんだかぞっとするような咳を耳にする例の第十七号室の患者のことだけは、つとめて避けるようにしていた。恐らくそれがこのサナトリウム中で、一番重症の患者なのだろうと思いながら。……为了不让这样的交谈再进行下去,我常常会提起每天在走廊等处遇到的其他患者的事情:我和少年患者们,总是在阳台边上聚成一堆,把天空比作赛马场、把流云比作各种各样形态相像的动物;我总是扶著随同护士的手臂漫无目的地走来走去;我遇到过一个有著严重、个子高的令人生畏的患者……这些事情,我都说给她听。但是,只有那个我一次也没有见过、每次从那房间前面经过时都会从心里感到不舒服、听到毛骨悚然的咳声的17号病房患者的事情,我都极力地避开了。我想大概那就是这个疗养院中最严重的患者吧…… 八月も渐く末近くなったのに、まだずっと寝苦しいような晩が続いていた。そんな或る晩、私达がなかなか寝つかれずにいると、(もうとっくに就眠时间の九时は过ぎていた。……)ずっと向うの下の病栋が何んとなく騒々しくなり出した。それにときどき廊下を小走りにして行くような足音や、抑えつけたような看护妇の小さな叫びや、器具の锐くぶつかる音がまじった。私はしばらく不安そうに耳を倾けていた。それがやっと镇まったかと思うと、それとそっくりな沈黙のざわめきが、殆ど同时に、あっちの病栋にもこっちの病栋にも起り出した、そしてしまいには私达のすぐ下の方からも闻えて来た。终於到了八月末,但晚上还是一直难以安睡。一个这样的夜晚,我们怎麼也睡不著(已经早就过了就寝时间的九点钟……)。远处对面下边的病房不知道为什麼突然骚动起来。而且,混杂著不时小跑通过走廊的脚步声、护士压低了的喊叫声、器具碰撞的尖锐响声。我不安地倾听了许久。刚以为那骚动终於沉寂下来,却在各个住院楼里几乎同时传来了几句相似的、沉默中的嘈杂声,而后最终在我们的最下面也传来了嘈杂声。私は、今、サナトリウムの中を岚のように暴れ廻っているものの何んであるかぐらいは知っていた。私はその间に何度も耳をそば立てては、さっきからあかりは消してあるものの、まだ同じように寝つかれずにいるらしい隣室の病人の様子を窥った。病人は寝返りさえ打たずに、じっとしているらしかった。私も息苦しいほどじっとしながら、そんな岚がひとりでに衰えて来るのを待ち続けていた。我知道现在疗养院里暴风雨般的到处肆虐的东西大体上是怎麼回事了。在这期间,我不止一次地竖起耳朵,窥探著刚才就关了灯但似乎同样不能入睡的隔壁节子的动静。节子好像连一个翻身都没有,老老实实地呆著,我也近乎窒息地静静呆著,继续等待那风暴自己平息下来。真夜中になってからやっとそれが衰え出すように见えたので、私は思わずほっとしながら少し微睡みかけたが、突然、隣室で病人がそれまで无理に抑えつけていたような神経的な咳を二つ三つ强くしたので、ふいと目を覚ました。そのまますぐその咳は止まったようだったが、私はどうも気になってならなかったので、そっと隣室にはいって行った。真っ暗な中に、病人は一人で怯えてでもいたように、大きく目を见ひらきながら、私の方を见ていた。私は何も言わずに、その侧に近づいた。到了半夜,那风暴似乎终於平息下来。我不由自主地松了一口气。刚刚打了一个盹儿,却突然由於隔壁节子一直努力压抑著几声强烈的神经性咳嗽而醒来。那咳嗽声似乎马上就停下来了。但我却无论如何也放心不下,就悄悄地走进隔壁。漆黑之中,节子独自恐惧地睁大著眼睛,看著我。我什麼也没说,走近她身旁。「まだ大丈夫よ」彼女はつとめて微笑をしながら、私に闻えるか闻えない位の低声で言った。私は黙ったまま、ベッドの縁に腰をかけた。“没关系的。}

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