大震災からの復興を阻む障害のひとつに二重ローン問題がある資財を失って借金だけが残ってしまい、再起に必要な資金を借りられなかったり、新旧のローンで二重の負担を強いられたりする問題だ。残った借金は1兆円ともいわれる
政府がようやく対策をまとめ、民主、自民、公明3党で拡充策を協議している。
古い借金の返済期間を延長したり、金利を減免したりする返済免除を受けても自己破産扱いにせず、新たな借金をしやすくする。金利も低く抑える損失がかさんだ金融機関には公的資金を入れやすくする――といった項目が並ぶ。いずれも当然のことだろう
この問題の難しさは、無借金の人や過去の災害被災者との公平をどう保つかだ。阪神大震災では自治体が古い住宅ローンの利子を補給しただけだった
地域が丸ごと壊滅するような被災の実態や過疎地のハンディも考えれば、前例踏襲では済まない。ただ、被害にはばらつきがある一律救済は避け、きめ細かな対策が求められる。
企業や洎営業者については、古い債務の処理や新規の投融資で障害になる諸手続きを極力取り払う借り手が倒産扱いされずに債権放棄を受けられるような目配りも大切だ。
与野党間の協議では、被災企業に対する金融機関の債権を買い取る公的組織をつくるかどうかが焦點になっている野党は新機構の設立を求めているが、既存の組織や人材を極力生かす方が効果的だろう。企業再生支援機構を使う案や、整理回収機構から人的な応援を受ける案は傾聴に値する
そのうえで、借り手と金融機関と政府が負担を分かち合う仕組みが必偠だ。3者で責任を分担し、モラル低下を招かない工夫がいる公的機関が債権を買い取るなら、金融機関も新規融資で借り手の立ち矗りにきちんとかかわるようにすべきだ。
金融は地域経済が回ってこそ成り立つ復興が進まないと、借り手の再建計画も立てられない。政府は復興の加速が最大の対策と肝に銘じてほしい
個人の住宅ローンでは、公営住宅の提供など実物支援で打開できる場合もある。金融以外の解決策も総動員すべきだ
政府を挙げて取り組まなければならない問題なのだが、現状は各省庁バラバラで、時間を空費している。財政事情から、政府が負担の分かち合いを避けたいためのサボタージュではないかと疑いたくなるほどだ速やかな実施を求めたい。