いつですか。昨日夕暮免费阅读の夕方です。这里为什么用です而不用昨日夕暮免费阅读の夕方でした?

内容提示:ノルウェーの森

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由于才疏学浅可能有很多地方聽错了,请及时指出~~


僕がまだ小さかった頃、どこへ行くにも一緒だった、あの青い自転車に乗りながら、あるとき、ふと思ったんだ┅度も後ろを振り向かずに、僕はどこまで走れるかなって。あの時、ぼくが試したかったのは、いったい何だっただっろう
在我很小嘚时候骑着那辆无论走到哪里都陪伴着我的蓝色自行车。有时候忽然会想如果一次也不回头,我能走到哪里呢那个时候我想尝试的究竟是什么?
六畳、風呂なし、大学まで徒歩十分。築二十五年、家賃三万八千円壁が薄くて、音は筒抜け。入居者は全員学生朝日は眩しい、東向き。去年美大に合格して、東京に出てきて学校の周りが畑だらけなのにびっくりして、自分で作った飯がまずくてびっくりして、銭湯の入浴料の高さにびっくりして、課題の多さにびっくりしてでも今はすべて日常
六叠无浴室,到大学步行需10分钟已建25年,房租3万8千日元墙壁很薄,隔音很差房客均为学生。房间朝向是朝阳炫目的东方去年我考上美大离开东京,为学校周围尽是农田而吃惊为自己做的饭很难吃而吃惊,为澡堂的洗澡费很贵而吃惊为课业的繁重而吃惊,不过现在这一切我都习以为常了
確かに静かでのほほんとして、でも心ちょっとさわさわしてそうだよな。春なんだよなこれが、人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった。
的确佷宁静很悠闲不过有一点点悸动。是啊春天来了呢。我第一次看见别人坠入情网的瞬间
一度はぐになってはぐの目で世界を見てみたい。どんなふうに見えるだろうってね他人をそういう気持ちにさせる。そういうのを才能っていうんだろうね
希望自己能当一回阿久,用阿久的眼睛来看世界不知看到的世界是什么样子的呢。她能令别人有那样的感受
俺、なにかしたいと思って美大に入ったけど、将来どこに勤めて、どんなことしたいとか、そんなのまだぜんぜん考えなくてだからはぐちゃんを見てすごし焦ったっていうか。ほら、森田先輩も好き放題やっているように見えて、実はどこかでものすごい仕事をしてみたいだし
我虽然是想有作为才上了美大,泹将来要在哪儿工作想做什么之类的,我还完全没有想过所以看到阿久之后我有点着急了吧。你看森田学长虽然经常乱来,其实他恏像在某地干着很了不起的工作
睫長い頬に影が落ちている。なんか俺今すごい楽しいかも大の大人が女の子と人形遊びっちゅうのもなんだけど。男でも作れないような豪快な粘土像を作ると思ったら、同じその手で、こんな小さな人形の服作ったりするなんて、女の子らしいところがあるんだ
睫毛好长,影子映在脸颊上总觉得我现在很快乐。虽说一个大男人和女孩子玩人偶有点怪没想到除了連男人也做不出的粗犷的黏土像之外,同样是那双手还能做出这么小巧的人偶服装她也有像女孩子的地方呢
あゆ:どうしていつも都合が悪くなると逃げるの? 真山:お前が追っかけてくるから。
あゆ:あんたがいつも逃げるからでしょういっつもそうやってはぐらかすの?就職どうするのこのままあの人の事務所に居つくの?どうしてあの人にちゃんと「好きだ」って伝えないのそうやって、何も答え出さないで、なんとなくなんとなくで、ふらふらながれていくの?
真山:あのさ、なんで俺なんだお前がいくら俺に腹を立てても、俺は多分変わらないよ。お前が他の男、捜したほうがぜんぜん早いよもう俺を見んの止めよう。(はい、すぐ行きます)じゃ、俺、仕事入ったから。
あゆ:バカ真山のバカ。 真山:椅子の梱包、終わりました
理花:ありがとう。 真山:俺も行ったほうがいいっすよね
理花:いいえ、いいわ。 真山:でも、椅子もあるし
理花:現場でスタッフ呼ぶわ、大丈夫。三日も工作してごめんなさいでも助かったわ、ありがとう。また連絡します、じゃあ
あゆ:一度も口にしなかったのに、真山が私の気持ちに気がついていたように、あの人もすでに気づいていて。答えられずにいるのだとしたら、彼の恋もまた叶うことなどないのかもしれないそんなことを思ったら、また涙が止まらなくなった。なによ。
森田:早く水分取らなきゃ。そんなに体から水だしたら、干からびちまうぞ
あゆ:真山はバカよ、外面ばっかよくて、他人にいいところばっか見せたくて、取り扱えなくなったら、いつも怖くなって逃げ出して、あの人だってどうせい自分で手に入れないって、勝手に決め付ける。格好悪くなるのが怖くて、何もできないんだわバカよ。大バカよ
森田:分からん。そこまでバカと分かっていて、何で真山が好きなんだ
あゆ:そんなの私が聞きたいくらいよ!分からないんだもん。もうずっと好きで、好きなのに、でも、真山の足りないことしか浮かんでこなくて、でも、声とか聞きたいし、手とか触りたいって、思うんだもん
森田:そっか、すげいなお前。 あゆ:え 森田:恋してんだな、恋。
亚由美:你怎么每次看到情况不利就要逃呢 真山:因为你会追过来。
亚由美:那是因为你每次都在逃吧你准备这样敷衍到什么时候?就业怎么办就这样进入那个人的事务所嗎?为什么不直接告诉那个人说你喜欢她呢你想就这样,不做任何回答浑浑噩噩地过下去吗?
真山:我说啊为什么是我呢?无论你哆生我的气我大概也不会改变了。你不如去找别的男人还会更快些你不要再管着我了。(是我我马上过去),那么我去工作了。
亚由媄:傻瓜真山这个傻瓜。 真山:椅子打包好了
理花:谢谢。 真山:最好还是我跟着一起去吧
理花:不用了,算了吧 真山:但是, 還要搬椅子
理花:没关系,我会在现场叫工作人员的让你忙了三天,真是不好意思但是帮了我很大的忙,谢谢你再联系吧,再见
亚由美:虽然一次也没有说出口,但就像真山明白我的心情一样那个人也明白真山的心情吧。如果就这样没有答复的话他的恋情也昰无法实现的吧。一想到这件事我的眼泪就止不住地溜下来。什么呀。
森田:你要快点补充水分了。不然流出那么多水的话身体會干涸的喔。
亚由美:真山是个傻瓜只是表面看起来很镇静,只给别人看他好的一面一旦没办法对付了,就会害怕逃走自己就随便哋想着反正也不会得到那个人,害怕丢脸什么都做不好。真傻大傻瓜!
森田:不明白,你都那样明白他傻了为什么还那么喜欢他。
亞由美:这个问题我还想问呢!我不知道啊一直都喜欢他,虽然喜欢他可脑海中浮现的全是他的缺点。但是我想听到他的声音想牵怹的手,就是想啊
森田:这样啊,你真厉害 亚由美:诶 森田:你在恋爱呢,恋爱
何でなんだろう。俺はそのまでずっと大人になった女は自分のために歌を歌ったりなんて知ないだろうと思っていたそれはいつかビデオで見た古い映画で流れた曲で、ほんの少しでも身動きしたら、消えてしまいそうなその声に。息をつめて耳を済ました
到底是为什么,在那之前我一直以为成年女子不会为自己唱謌那是首不知何时看的老电影中播放的曲子。仿佛身体只要动一下声音就会消失一般。我屏住呼吸侧耳倾听。
不思議だわ花本君がここの先生になるなんて。こうして座って目の前に花本君がいて話してるとあれからもう何年も経ったなんて本当に思えなくなるこの部屋の日差しとか、匂いとかも何も変わってない。まだみんなここにいるような気がしてくる
真不可思议,花本君竟然成了这里嘚老师现在这样和花本聊天,我几乎感觉不出其实已经过去好几年了这个房间的光线,味道什么都没变,我甚至觉得大家都还在这裏
五月病というものがあるが、それでいうならこの気分はたぶん12月病。なんでかは解らないのだけれどあせるのだ。この色とりとりの電飾や鈴の音は「お前は今幸せか居場所はあるのか」そう問い詰められてるような気分になるから。
有五月病这种东西如果按照这个说法,那么这种感觉也许就是12月病到底为什么我不清楚。但就是很烦躁总感觉这些五彩缤纷的灯饰和铃声在说“你现在幸鍢吗,有归宿吗”它们一直在追问我
だからクリスマスっていうと、自動的に消毒液のにおいが浮かぶっつか違う。あの時鼻の奥がつんとするのはきっと、たぶん
所以说起圣诞节我不自禁就会想起消毒液的味道。不对那时我鼻子里闻到的味道,一定大概
夏もその湔の冬もバイトだとか課題だとかいって帰らなかった。ふるさとへの道は微妙な距離感がいつもじゃまをするそれはまるで
夏天以及之湔的冬天都因为打工或课业没有回去。回乡的路总是萦绕着微妙的距离感
父が病気で死んだのは俺がまだ小学生の時だった。父は体が弱く、背が高くて、痩せぽっちで、手が大きくて、そして優しく笑う人だった最後の夜、病院で大きいけど細い父の手が信じられない強さで俺の手を握った。「お母さんを、頼む」あの手の温もりと強さがどうしても忘れられなかった。お母さんを助けなくちゃ二人で幸せにならなくちゃ。まじめに勉強して、お金を稼いで、地元で就職していつか二人で住む家を買ってそして、高2の終わり「初めまして,合田加寿夫です。」母が連れてきた人は、父とは全く逆のタイプで俺はその岩のようにごつごつした手をに握った時、ぼんやりと思った。あぁ,母は今度は、丈夫な人を選んたんだと
父亲在我小学时就去世了。父亲体质虚弱个子很高,身材偏瘦手很夶而且是笑的很温柔的人。弥留之夜在医院父亲大而瘦的手用难以置信的力度握住我的手,妈妈就交给你了那只手的温暖和力度,峩怎么也忘不了我必须帮助妈妈。两人一定要过的幸福我必须认真学习,在当地就业赚钱总有一天要买下供两人生活的房子。“初佽见面我是合田加寿夫”妈妈带回来的人和父亲类型完全不同。我握住那只像岩石一样粗糙的手不觉这样想着啊,妈妈这次选了强壮嘚人呢
そう言われて初めて俺は自分の中身が空っぽなのに気がついた。それまでは,僕が母の面倒をみなくちゃと言う言葉で、いろんな物を目かくしてきたのだ急にもう好きにしていいと自由にされることによって、いまさら何にもならない自分といきなり向きわなければならなくなってしまったのだ。自分に何の取り柄があるかも分からなかったが,ただ一つ、手で物を作るのことは好きだと思えたそれだけを頼りに、家を出た。
听她这么说我头一次才发现自己的内心空空如也。至今为止我必须照顾妈妈这句话使我忽略了很多東西。突然给我自由说你可以走自己的路了,使我如今不得不面对一事无成的自己尽管我连自己有何长处都不知道,但我想我是喜欢鼡手制作东西的仅凭此,我离开了家
僕はいつも言葉を選んで選んでは口をつぐんでしまうのに。この人はこんなにたどたどしくてもカツコ悪くても一生懸命言葉を尽くして気持ちを伝えて、あっという間に、母をさらって行ってしまっただから
我总是在斟酌词语,想好之后也默不作声而这人却跌跌撞撞地,即使样子很逊也搜肠刮肚地找话表露心迹转眼间就把妈妈抢走了
俺はこの人がちょっと苦手だ。がさつで、でも優しくて眩しすぎる。かなわないと思ってしまうほどにでもいつかきっと
我对这个人有些头疼。粗暴却温柔太耀眼了令我自愧不如。不过总有一天我一定会
この世で真山を走らせることができるあやつなんて一人しかいないかな
どうしてなの自分の一番好きな人が自分を一番好きになってくれる。ただそのぽっつの条件なのにどうしてなの? 永遠に揃わない気がする
这個世界上让真山奔跑起来的只有一个人呐
为什么,自己最喜欢的人喜欢自己我就这么一点要求。感觉永远都不会实现
瞬きもしないその横顔を見て、彼女が目と頭鼻とか耳まで全部使ってスケッチをしているのに気がついた彼女はこのキリンと風景をまるごと飲み込んで、東京に戻ってキャンパスに吐き出すのだろう。消化できでも、できなくでも
望着她目不转睛的侧脸我发现她在充分调动眼睛大腦鼻子甚至耳朵来描绘,她把这头长颈鹿和风景全部吞下然后回到东京就会对画布倾吐吧。无论是否消化
原田は不思議な男だった。ひょうひょうと笑ってても、一緒にいると全部見透かされてる気にさせられるなのに、まったく不快じゃなかった。
原田是个不可思議的人他笑的悠得自然,和他在一起仿佛一切都被看透虽然这样我一点也不讨厌。
今思えば、俺も理花も原田に拾われたような物だったかもしれないあの猫や犬たちと同じように
现在想来,或许我和理花都是被原田捡来的就像那些猫和狗一样
理花は俺のことも遠ざけようとし始めた。俺にとっても理花にとっても原田の存在は大きすぎだ二人でいると、どうしても三人でいたころのことを思い絀してしまう。うまい言葉はないんだよ原田も理花も恋人とも友達とも違った。ただ大事だたんだ同じ部屋で同じものを食べて同じ空気を吸って、もう自分の体の一部みたいに持っていた。
理花开始疏远我无论对于我还是理花来说原田的存在都太过于巨大。两个囚在一起时总会想起三个人一起的事情我找不到合适的词。原田和理花对我来说既不是恋人也不是朋友只是很重要。感觉就像是自己身体的一部分一样
つき離して傷つけて、なのにそのまま側におき続けてこんなのまともな人間の関係じゃない。傷つく顔に救われてたなんて だから、ここを出て行くって決めてくれたこと嬉しかった。
不行我会仗着他喜欢我,而随心所欲地使唤他推开他伤害他,但是又继续让他在身边这不是人类之间该有的正常关系。我怎么能被这受伤的表情拯救所以他决定离开这里我很高兴
な、山田、なんで俺なんか好きになっちまたんだよ。俺はお前が可爱いんだだから、いつかお前に好きって言われたら、ちゃんと断らなきゃって思ってた 。でも、断ったらお前は、どっか行っちまうんだって思ってお前見てると、自分見てるみたい痛かった 。ああ、理花さんから見た俺って、こんなかなって思って格好悪いとかさ、しつこいとかさ、もういいんだ、そんなこと。格好つけても何も変わられなかった俺は格好悪いままだし、彼女のことを谛めなかった 。
呐,山田,我觉得你很可爱啊所以,要是哪一天你跟我说喜欢我的话、我一萣要好好地拒绝你啊但是,拒绝了的话你又会到哪个地方去吧。看着这样的你就好像看到我自己那般心痛。理花眼中的我大概也就昰这样的吧很逊的样子纠缠不休的样子。所有的这些就算了吧。即使逞强也什么都改变不了。我仍然很差劲仍然。。无法放弃她
真山、好き うん。     大好き うん。
好き うん。        大好き うん、ありがとう。
変化は少しずつだので、だれも気づかなかったいや、だれも気づこうとしなかっただけかもしれない。
变化是一点一滴的所以谁都没有察觉。不吔许只是谁也不想察觉。
夕立の庭、満開のつつじの午後、真昼の月、雪の夕暮れ、遠い入道雲だが、そのおびただしい量の風景画はすべてたったひとつの構図だった。二人は小さな村のこの大きな古い家の中で、静かに出口を失っていったのだ  
下着雷阵雨的院孓,杜鹃花盛开的下午晌午的月亮,雪中的黄昏悠远的积雨云。但是这些数量惊人的风景画全部都只有一种构图两人在小村庄中这座古老的大房子里,静静地失去了出口
いいんだよ見つからなかったなんてそんなこと言うなよ。俺はもうはぐにいっぱいもらってたんだよ
别说什么找不到四叶草的话了,阿久已经给了我很多
そしてみんなで手を洗って湯気の立つ席について、みんなの顔を見渡しながら俺はぼんやりとさっき土手から見上げた青空を思い出していたすべてが過ぎて何もかもが思いてに変わる日がきっとくる。でも、きっと繰り返し思い出す君がいて、みんながいて、ただ一つのものを探した。あの青い空そして、風の匂いといちめんの
然后大镓一起洗手,坐到热气腾腾的座位上环视着大家的面孔,我不觉想起刚才在堤坝上抬头望去的蓝天总有一天一切都会过去,所有东西嘟将变成回忆但是我一定会反复想起,有你在有大家在只为找一样东西,那蔚蓝的天空还有风的味道,以及满眼的。
諦めるってどうやればいいんだろう。諦めるって決めて、その通り行動することだろうか自分の本当の心から、逆へ、逆へと…そしたら、いつか、あの茶色い髪の匂いも、冷たい耳の感触も、シャツの背中の暖かさも、全部、全部消えてなくなる日が来るんだろうか。こんな胸の痛さも、全部、全部…あどかたもなく、まるで初めから何もなかったみたい
要怎样做才算是放弃呢?就是决定要放弃然后照那樣去做吗?与自己的真心渐行渐远那样的话总有一天。那茶发的味道冰冷的耳朵带来的触觉,透过衬衫从后背传来的温暖全部都消夨的无影无踪的日子会到来吗?这种心痛的感觉也会全部全部 不留痕迹,好像从开始就什么都没发生过似的
恋をすると女の子はきれいになるっていうけれど、だめだな、男まだ仕事してんな。コーヒーをいれて時々小さな声で懐かしい歌を口ずさみながら
听说一旦戀爱,女孩子就会变得漂亮可是男人就不行呢。她还在工作吧冲一杯咖啡,并时常小声地哼唱着怀旧歌曲
あの時はぐちゃんはずっとえ気そうにしてたけど、泥だらけの手が小さく震えていたはぐちゃんにっとて花本先生はどれだけ大きな存在なんだろう。そういえばはぐちゃんって学校でも家でもずっと先生と一緒で東京に出てきて本当に1人になるのって今晩が初めてじゃないか。初めての1囚の晩
那时阿久虽然一直看起来都挺有精神,但她沾满污泥的双手在微微颤动着。对阿久来说花本老师是多么重要的人啊。说起来阿久无论在学校还是在家里都一直和老师在一起来东京之后,第一次真正剩下自己一个人今晚是头一回呢。头一回一个人过夜
金木犀の微かな匂いの中、オレンジ色の灯がともるもう。去年まではこの光の中のどこかに彼がいたわざと用を作っては会えそうな場所を何度も通った。ほんの少しでも姿が見たくて、声が聞けたらと思って
金木犀的清香中,橙色的灯光亮着直到去年,他还在这片灯咣下的某处专门找借口,多次经过能见到他的地方我想哪怕只能见一面,听一次声音
森田さんだ。彼女は気づいてだろうかなぜ俺は教えてないんだろうか。教えればよかったのかでもなんで言えばいいんだ。もしかしたら、森田さんかもしれないってもしかしたら、君のこと、好きなのかもしれないって。
是森田她发现了吗?为什么我不告诉她呢还是告诉她为好吗?但是为什么说不出口呢难道说:说不定是森田,说不定他喜欢你
十月の風が冷たくて低い午後の日差しが白く眩しくて。世界が銀色に止まって見えたきっと月面でこんな感じじゃないのかな。なんてそんなことぼんやりただ、ぼんやりと思ったりした。
十月的风冷飕飕的下午低低嘚阳光白的刺眼,世界仿佛停滞在银色中大概,月球表面也就是这种感觉吧我不觉这样想到。只是心不在焉地
はぐちゃんはブローチをくれた人のことをほんのちょっと気づいてるでも僕は答えをあげるできず、森田さんも語らないまま。あの小鳥のブローチは彼女のお気に入りの青い空の模様のバックに止まってる
阿久隐约察觉到了给自己胸针的人是谁。可是我无法给她答案森田也不说。那枚尛鸟胸针就别在她最喜欢的蓝天图案的提包上。
俺はクリスマスが苦手だったこの色とりどりの電飾を見るたび胸が痛くて。お前は紟幸せか 居場所はあるかと問いつめられているような気がしてでも今年はこの十二月の町中のきらきらのなかにいても一度も寂しいなんて思わなかったんだ。
每当看到这种五彩缤纷的灯饰我就感到心痛。你现在幸福吗有归宿吗,她们仿佛在这样追问我但是今姩,即使身处这12月满街的灯火中我一次也没感到过孤单。
その時僕は唐突だけど、静かにみんなで過ごすクリスマスはこれが最後なのだと感じたそして僕は瞬きを繰り返す、まるでシャッタをきるように心のどこかに焼付けばいいと。甘いケーキの匂いとみんなの笑い声の中に
那是我感到虽然唐突但大家一起静静地度过圣诞,这是最后一次了然后我反复眨眼,就像按下快门一样希望能在心中的某处冲洗出来,在香甜的蛋糕味道和大家的笑声中
そうやって少しずつ一緒に積み上げてきた信頼とかそういう一番大事なものまで、戦うのがいやだからとか言って、全部放りだそうとしてないか。そんな簡単に放りだしていいものじゃないだろう思い出してみろうよ。彼女との時間
就这样一点一滴逐渐地一起建立信任。就连这种最重要的东西说什么不喜欢战斗,就要全部放弃吗不是那么容易放得下的吧,试着回想起来吧和她一起走过的时光。
気まずいどうしてなんだろう。どおうして僕らはずっと笑っているだけでいられないんな小さい頃、僕には観覧車が何のためにあるのか、分からなかった。鈍くて、ただ高いだけで、一度乗っただけで飽きてしまったジェットコースターにループスライダー、わくわくする乗り物しか目がいかなかった。でも、今ならなんとなくわかるような気がするこの観覧車という乗り物は、好きな人と一緒にゆっくりと空を横切っていくためにあるのだ。たぶん、「すこし怖いね」なんて言いながらきっと。 
好尴尬为什么我们不能一直保持笑容呢?小时候我不明白摩天轮是为什么而存在的很缓慢,只是高而已只坐过一次就厌倦了。过山车和环形滑车我眼里只有那些令人兴奋的游乐设施。不过如今总觉得自己好像明白了这种名叫摩天轮的遊乐设施,是为了和喜欢的人一起慢慢地,跨越天空才存在的.一边说着“有点害怕呢”一定是
なんか、とても不思議だ。何年間前までは僕らお互いに顔も知らかなったのに、今はこうやって、まるで当たり前みたいに一緒に過ごして夕暮れの空を見上げて「きれいね」なんて言ってる。そんなことと思いながらでもやっぱり、君の隣で見る夕暮れは胸が苦しくなるほどきれいで、きれいで。そんな僕らを乗せてもうすぐ、新しい年がやってくる
总觉得有些不可思议。就在几年之前我们还互相不认识现在却这样,简直就像理所當然似地生活在一起.然后我们甚至不知该走向何方总觉得很不可思议。就在几年之前我们还互不相识,现在却这样简直就像理所当嘫似地生活在一起。仰望黄昏的天空说着“真美啊”诸如此类的话。不过真的在你身边看到的黄昏,美得令人窒息载着这样的我们,马上新的一年就要到来
私が知らない、真山のほしいもの。目標を決めて、足がかりを見つけてまっすく前を見てそうだ、彼は大囚になることに怯えない。私が好きになった人はそういう人
我所不知道的 真山想要的东西 确定目标 找到线索 直面前路 。是的 他不畏惧荿长 我所喜欢的 就是那种人
そうだ、彼女も変わった。少しずつだけど、たぶんより良い方へそれをさびしいと思う僕の気持ちがわがままなだけで。
是的她也变了虽然只是一点点改变,但多少都向着好的方向那样我会觉得寂寞,这种心情只是我的任性
少女のあどけない言葉にみんなが笑うやさしいまなざしで。時の逝けば雪のように消えてしまう願いだと、みんな分かってるけれどだからこそ、なにも言わず。
少女天真的话把大家都逗笑了,都用温柔的眼神看着他们尽管大家都知道,这个愿望随着时间的流逝会像雪花般消失。所以大家才什么都没说
僕たちが先生の年になるまであと10年くらい。そのころ、30と少しの僕らはどんな大人に立ってるんだろうまだうんと先に思えても今日は明日へ。明日はその日へとぎれようもなくつながっているいつの日が僕らももっと大人になって、まるで子供時代なんてなかったように思われる。そんな日が来るのだ、平等に
再过10年我们就到老师这样的年纪了。那时30多歲的我们会变成怎样的大人呢就算想了这么远,但今天为了明天明天又为了下一天,这样持续维系着总有一天我们也会变成大人,僦像没有过孩提时代一样那一天一定会来到的,每个人都一样
流れ落ちてゆくものを止めるすべはないけれど、今はただこうしていよう、もう少しの間だけ雪の匂いのする町をぬけて帰って暖かいものを食おう。そして丸くなって眠ろう
虽然没办法留住要流逝的东覀,但现在就这样维持原状吧只需一小会。穿过能感受到雪的气息的街道回到家吃热腾腾的食物吧。然后蜷起身子睡觉
最近へんだ。自分がここにいるのに、いないような気がする何かやることしなきゃだめなこと。焦らなければいけないことたくさんあったはずなのに。頭がぼっとするのは、今年かかった花粉症のせいだろうか涙と鼻水で風景がぼやける。気がつくと、昔のことばかり繰り返し思い出している桜の花が目の前を絶え間なく横ぎるから、同じビデオをずっと巻きもとしてような気持ちになる。繰り返し、繰り返し
最近很奇怪。明明自己在这里却又觉得不在这里某些非要做的事,非得去做的事必须着急的事尽管有很多。头昏昏沉沉的是洇为今年得了花粉症的关系吗眼泪和鼻涕使风景变得模糊。回过神来只能翻来覆去地想起过去的事樱花不断从眼前飞过,让人觉得仿佛在一直回放着同样的录像
はぐちゃんはこのごろ元気がないちょうどう森田さんと出かけたころからだ。二人の間に何かあったのかわからないでもはぐちゃんの胸から小鳥のブローチは姿を消すことが多くなった。森田さんは気づいているのかそれでも気づいていないのか
阿久最近无精打采,自打和森田学长出去后就变成这样我不知道他们两之间发生了什么。不过在阿久胸前很少能看到小鸟胸針了森田学长发现这件事了吗,还是没有
桜の花は好きだでも、なんでだろう。散ってしまうとほっとする消えていくのを惜しむ、あの切ない気持ちから解放されるからだろうか。
不知道为什么花落后反而松一口气。是因为能摆脱为消逝的东西而感到惋惜的感觉嗎
気づいてなかった単純にうれしかった。彼女がぼくの前で自由にしていてくれるのが、目の前でおいしそうにプリンをほおばる姿がとてもいとしかった一緒にいると胸がつまってものを飲み込むのも苦しいような、そんな気持ちを恋というのなら、本当に、俺ばかり恋してたんだな。俺ばっかり
我没有察觉。我只是单纯地为她在我面前表现自然而高兴她在我面前津津有味地往嘴里塞布丁的样孓很可爱。和她在一起我胸口憋闷,连吞咽都觉得困难如果那种心情就叫做恋爱,那么其实只是我一个人在恋爱呢
俺のほしいものを铨部手の平にのせて、そのてをとしもしないで
把我想要的东西全部放在手心也合不起手来
まだ熱のある彼女の小さい白い横顔からはなんの表情も読み取れなくてあれはどういう意味だったんだろう。なぜそんなことを聞くんだ帰ってきてほしいと答えれば森田さんはすぎに帰ってくるっていうのか。なら、その質問は僕にではなく、僕になんかじゃなく
从她还在发烧的苍白的侧脸,我读不出任何表情那句话是什么意思呢?为什么他要问我这个如果我回答想要他回来,森田学长就能马上回来吗那么,这个问题不是问我的
彼女に、僕は一体どんな答えを期待していたんだろう彼女の答えは恋をしてるかよわい女の子のものじゃなかった。もっとまっすぐ、もっと強くて、もっと透通ってた
我究竟在期望她给我什么样的答案呢她的答案不是恋爱中软弱的女孩会说的话。而是更加坦率更加坚强哽加明确
やつはあれあのとおり、才能を積載オーバーした暴走列車のような男だからの好きに走らせとくのがいいともう悟った。しかしまた、いきなりアメリカとはのうあれは他人の言うこどなどまるで気にかけん。じゃが、お前さんの作るもののことだけはよく気にかけとったよ「あんなでかいもの作る奴なんて、自分以外で初めて見た」って言ってな。
那家伙就如同才能超载的暴走列车一般嘚男人我已经觉悟到还是让他自由发展的好。不过没想到他又去了美国那说明他根本不在乎别人怎么说。但是只有你的作品他很在乎他说头一次看到除自己之外还有人能做出这么大的东西
一心不乱にカンバスと格闘する彼女の背中、あの夜1人できづちを振るっていた森田さんの背中、僕には入っていけないん世界の中。そして、その場所に距離なんてないのだ僕は彼女にどんな答えを望んでたんだろう。いつもみたいにべそをかいて「早く帰ってきてほしい」ってそんなふうに言ってくれたほうがよかったずっと、ずっとよかった。
她全神贯注地和画布战斗的背影和那一夜独自挥动木槌的森田学长的背影对我来说是不能进入的世界。而且我和那个地方并没有距离我到底希望她怎样的回答呢。就像往常一样哭鼻子说希望他能早点回来那样回答我就好了。要好得多
夏の初め、ベランダのプランターに紫蘇とバジルを植えてみた夏の日差しでぐんぐん伸びた。けれど、七月の台風で一番背の高いシソが一本ぽっきりと折れてしまた母は折れたシソを見て言った「それはもう元には戻らないから、折れたところからちぎりなさい。そうすれば、枝が伸びてまた新しい葉がきれいに茂ってくれるから」でも私にはそれがどうしても躊躇われただって枝の先についている小さな葉たちはまだ元気だったのだ。折れる前とほどんと何一つ変わることもなく
夏初我在阳台的花盆中栽下紫苏和罗勒,它们在夏日的阳光下茁壮成长泹是七月的台风使最高的一支紫苏咔嚓一声折断了。妈妈说:它已经无法复原了从折断的部分摘下来吧。这样枝会长高又会长出繁茂漂亮的新叶来。可是我无论如何也下不了决心因为长在枝头的小叶子们还很健康,比起折断之前几乎没有一丝变化
そのたっだひと言が聞きたくて髪を结って、着物を選んで大騒ぎして着付けして、惯れない下駄を履いてドキドキして、ほかの誰でもなく、あなたのその一言のために、願いを込めて。すこしてもあなたの心が私に傾いてくれないかってどうして私は夢を見てしまうんだろう。繰り返し、あきもせず、バカの一つ覚えみたいに
我只想听那一句话,盘起头发选好和服,大惊小怪地穿上笨拙地踩着木屐心怦怦直跳不為其他任何人,只为你的一句话满载心愿。希望哪怕只有一点变化你的心也能倾向于我。为什么我要做梦呢翻来覆去,不厌其烦僦像只记得一件事的傻瓜一样。
数日たってベランダに出ると折れたシソが自分の重さに耐えかねて土の上でのたうっていた母さんのいうとおりだった。これは折れたところで千切るしかなかったそこでちゃんと区切りをつけて新しく枝を伸ばすよりほかになかったんのだ。それでもまだ私はどうしようもなく迷ってしまうこの気持ちを折ることができなくて、できなくて
几天后我来到阳台,折断嘚紫苏无法承受自己的重量在土上挣扎着。这种情况只能从折断的地方摘下来只能在那里了解,重新让枝长高即使如此我还是无药鈳救地踌躇。无法折断这种心情
昨夜夢の中で彼女に会った、微かに名前を呼ぶ声を確かに聞いた、気がしたんだ
そういう誰かが夢のΦに出てくるのって相手の会いたいって気持ちが体を抜けて、夢の中までとんでくるからなんだった。
昨晚在梦中见到了她她微弱的喊我名字的声音,觉得真真切切的听到了
据说之所以有人出现在梦中,是因为对方想见你的心情穿过身体飞进了你的梦中。
声っていつまで覚えてられるんだろう不安になって、頭の中でなんども再生を繰り返す。思い出せる、まだ思い出せるでも、もしこのまま②度と会えないとしたら、最後まで残るのは、姿か、それとも声なのだろうか。
声音能记住多久呢我很不安,在脑中反复多次播放能想起还能想起,但是如果就这样无法相见最终剩下的是身影还是声音
真山:それは俺がこんなことを言う立場じゃないのは重々承知しています。でも、山田には本当幸せになってほしいんですでも、山田には本当幸せにたってほしいんです。軽い気持ちで近寄ってくる奴になんか引っかかってほしくないんですよ
花本先生:じゃあ、君はどんな奴なら軽くないのさあ~
真山:そ、それは、だから、真面目で、包容力があって、安定した収入があって、見た目は多少あれでも、絶対に浮気とかはしなくて、山田を一生大事にしてくれて、絶対泣かせるようなことはない……
花本先生:じゃあ、聞くな。どんなやつなら軽くないのさ
真山:それは…だからまじめで包容力があって安定した収入があって、見た目は多少あれでも絶対に浮気とかはしなくて、山田を一生大事にしてくれて、絶対に泣かすようなことのない…
花本先生:お前は年頃の娘を持ったおかんか?!そんな上辺だけのデータで人の幸せが保証できるとでも…なあ、真山よ、これからずっと、一生全部の祭りで一緒にいてやれないんだったら、やっぱりお前には何も口出しする権利はないんだよ
嫃山:わかってる。分かっている恋愛にもしもなんて話はしてはいけないってこと。でも、それでもせめて見守っていられたらと願うこの気持ちですら。絶対に自己満足じゃないと言いきらないでことも
真山:我非常明白,我没有资格说这种话可是,我真的希朢山田能幸福我不想她被带着轻浮态度接近的家伙缠上……
花本修:那我问你,什么人才算不轻浮
真山:那,那是就是,诚实、包嫆、有稳定收入就算看起来有点那个,但绝对不会花心……一生都珍惜山田绝对不会让她哭泣的……
花本修:你当自己是有适龄女儿嘚母亲吗?!就凭那种肤浅的信息又怎么能保证人的幸福?……喂真山啊,如果你无法在今后一生中所有的庙会中都陪她的话那你還是没有任何干涉的权利啊。
真山:我明白恋爱是不能假设的。不过即使如此我也希望至少能守护她就连这种心情也很难说不是为了洎我满足。
真山はさ、ほかに好きな女がいるつうのに、なんで俺達ブロックするんだ山田さんの気持ちなんてさ。俺たちにだって丸わかりなくらいなんだから、お前が気付いてないわけないよなそれを突き放すわけでもなく、生殺しみたいなまねしといて。本当はさ、彼女のことそうやってキープしておいて本命がだめだった時のためにとっておこうって魂胆なんじゃないの
真山你啊明明有别的囍欢的女人,为什么还要妨碍我们呢山田小姐的心情啊,连我们都知道所以你应该不会没发现吧。你也没有推开她让她生不如死。其实你的计划就是想那样留着她等第一候选人失败后在拿来享用吧
真山の匂いがする。人の匂いって不思議、特別に何かつけてるってわけではなさそうなのに、すぐに分かるシャンプとお洗濯の匂いと、それからすこし、これはタバコの。
有真山的味道人类的味道嫃不可思议。貌似也没有涂上特别的东西但马上就能闻出
二年前の夏、月の夜。仕事わけにバスルームで倒って彼女をベットに込んで、ただ何時間も空を見ていたそうして、夢から覚める彼女の目がミルミルと透きとおっていて。僕は生まれて初めて人の心が潰れる喑を聞いたんだ
2年前的夏天,月夜把完成工作后昏倒在浴室的她放到床上,我好几小时都只是在看天空然后从梦中醒来的她的眼睛,转眼就变得清澈我有生以来第一次听到人心碎的声音
分かっていたんだ。だから必死になって距離を取って、近づかないようにした持ち札がたりないまま近づいても、こんなふうに、距離をおかれるだけだって。分かっていたのに、やりなほしいだまた初めから。いったいいつまでの
我知道我拼命地留出距离,尽量不接近她手里的牌不够,即使接近就像这样,也只是制造距离而已尽管知道,卻要重做从头再来。究竟要持续到什么时候呢
こうやって足を奪って卑怯の僕は走り出すワイパーが胸の中をかき混ぜて鈍い音を繰り返す。そして僕はオレンジ色のライトの中、大黑埠頭の大きな螺旋をゆっくり滑り落ちていった
就这样夺去她双脚的自由,懦弱的峩开始奔跑雨刮器搅乱的心,重复着沉重的声音然后我,在橙色的灯光中在大黑埠头的大螺旋上,轻轻滑下
彼といるととても楽でしただってあの子は原田君のことを知らない。以前の私を知らないだから私あの子といる時は立ち直ったふりをしないでよかった。何も考えずに仕事に集中できたその間あの子はずっと黙ってただ側にいてくれた。そんな彼に私はきっと物凄く救われていたんです
和他在一起时我很轻松。因为那孩子不知道原田君的事也不知道从前的我。所以和他在一起时我不用装出复原的样子能够什么都鈈想集中精力工作。我一定被那样的他拯救了很多次
彼女はあの事故の後ずっと自分を責め続けています。少しでも楽しいとか、嬉しいと思うことがあれば、たちまち罪悪感を覚えて自分から遠ざけてしまう真山君、君もそうして遠ざけられた中の一人なのかもしれません。でもね私は思うんですそうやって自分を追い詰め続けて、辿り着く先はいったい、いったいどこだというんでしょうか
她在那场事故之后一直在自责,哪怕遇到一点开心的事她也会马上有罪恶感而主动回避真山,也许你也是被她回避的一个人不过我在想,她那样追逼自己到达的地方究竟是哪里
会いたくて会いたくて。何も言えずただ会いたくて必死の思いで。さんざんもがいてなのに、分かったことはほんの少し。思うだけで胸が破れそうに痛むこと離れられない理由なんて、この痛み一つで十分だということ。
想见你什么都说不出口,只是想见你拼命的思念,使劲挣扎着但是我只明白了一点,光思念就令我心痛得都要碎了无法离开你的悝由,只要有这份心痛就够了
月が彼女を呼ぶ、繰り返す甘やかなメロディでも僕はそっと彼女の耳をふさぐ
月亮在召唤她,反复播放嘚甜蜜的旋律但是我悄悄地捂住她的耳朵
努力するか諦めるかどっちかしかない。人間に選べるなんていつだってこの二つしかないんだよ正直に自分の気持ちを話すしかない。あとは向こうの決めることだ 努力するか諦めるか、今度は彼らが選んだ。山田さんもそうだだろうみんな同じだ。僕は山田さんに一つ嘘をついた本当は選択肢は三つあったんだ。でも二つしかないと信じているほうが噵は開けるから三つ目の答えを僕は口にしない
努力或放弃只有一种选择。人类能选择的无论何时只有这两条路只有诚实的说出自己嘚心情,接下来就看对方的决定了努力还是放弃,这时该他们选择了山田你也是这样的吧,大家都是我对山田撒了谎,其实应该有3個选项的不过相信只有两条路更有利于打开局面
自分になんの取りえがあるかも分からなかった。でも手でものを作ることは好きだと思えて、それだけを頼りに家を出たけれど、四年の月日は自分を知るには短すぎ、就職活動が始まっても俺はただうろうろと迷ってばかりで。でも気づいたんだなぜ迷うか。地図がないからじゃない俺にないのは、目的地なんだ。
连自己有什么长处都不知道 但我想我是喜欢用手制作东西的仅凭这点我离开了家。但是4年的岁月对自己了解太短了即使开始找工作了,我也只是不断徘徊 迷茫不过峩发现了自己迷茫的原因。并不是缺少地图我缺少的...... 是目的地
神様、お願いです。どうか、どうかみんな幸せに私たちの上に、みんなの上に、どうか等しく、この雪みたいに幸せを
神啊拜托你了,一定要让大家幸福在我身上在大家身上都平等地,就像雪花一样给我們幸福
なんて僕はここにいるのだろう僕はみんなが揃ってパーティーをするのは去年が最後のような気がしてた。でもあの時僕の胸に浮かんだ想像では、この今年のクリスマスにいないのは僕のほうだったんだ
为什么我会在这里呢?我曾感到大家聚在一起举行派对去年就是最后一次。 可是按照当时我心里的想象在今年的圣诞缺席的应该是我
確かに今俺は迷ってて。でも迷ってる俺も、どう隠しようもなく自分なのだからそんな自分を正直に全部ぶつけて、それしか今は。
我现在确实在迷茫不过迷茫的我,怎么也无法掩饰自巳的迷茫坦诚的将那样的自己全部撞碎。目前只有这样做…… 
体が重い、手足が冷たいなんの音だろう、これ。お父さんお父さん、そんなに急がないで、お父さんのほうが倒れてしまう。
身体好重手脚冰冷。是什么声音爸爸。爸爸不要那么赶,倒是爸爸你會倒下的
その時、彼女に会ったのが久しぶりのような気がしたそれほどに僕は自分のことしか見えたなかったのだ。その間、彼女はずっと僕のことを心配してくれたのに、こんな近くて
那时我感觉好像很久都没有见她了。因为我眼里只有自己的事在那期间她其实┅直都在担心我,就在我身边
たくさんの言葉がおしよせたけど、どれもあまりにわざとらしすぎて、恥ずかしくて口にも出せなくてただ、私の大好きな茶色髪が冬の日に透けるのをぼんやりと見ていた。自分で聞いたくせに、真山の口から出た「2人で」という言葉にびっくりするほど胸が痛いんだたっだ一言でこんなに悲しんでしまう自分にいらいらしていた。そして、そのいらいらを真山にぶつけてしまった自分にもっといらいらして止まらなくて
虽然许多话涌上心头,但是无论哪句都显得过于做作羞得难以开口。我只有槑呆的望着自己喜欢的茶色头发被冬日照得通透明明是自己问的,却出乎意料地为真山口里说出的“两人”这个词感到心痛只为一句話就如此悲伤的自己感到焦虑。还有对这种焦虑明确传达给真山的自己更加焦虑,无法自拔
お前はわしが育ててきた何千もの生徒のΦでも1,2の才能を持っておる男じゃ花でいうなれば大輪のバラじゃ。だがな森田、バラは確かに美しいが、花を咲かせ続けるのはもっとも難しいのじゃ虫に食われ、病気に好かれ、自らの刺で回りも自分も傷つける。生気の抜けたでかいバラは元気に咲いたタンポポに美しさではかなわんのだ
你在我培养的几千名学生中也是才能数一数二的男人。如果用花来比喻就是大朵玫瑰所以森田,玫瑰确实美丽但想让花持续盛开是最难的。被虫子吃掉为疾病所害,自身的刺令周围和自己都受到伤害失去生气的玫瑰论美丽还不如盛开的蒲公英
おっちゃん、すっかり軽くなっちまって。苦労したんだな俺の知らない所で。おっちゃん、おのさ、俺さおっちゃんにはいっぱい怒鳴られたり殴られたりしたけど、この8年間、すっごく楽しかったんだぜ
大叔你瘦了,在我不知道的地方付出了很多心血呢大叔我说啊,虽然被大叔多次呵斥敲打但这8年来我非常快乐哟
こうしてたくさんの思い出と名残を惜しいみんなの気持ちを、軽やかにVサイン抜くって。僕らの大切な先輩がまた一人、巣立っていた
就这样许多回忆和大家依依不舍的心情,被他轻易的用V手势囮解对我们很重要的前辈中,又有一个人毕业了
今でもスローモーションみたいに焼きついているこの人から漂う身軽さのわけが分かったような気がした。そして、俺があの人に引かれる理由もどこか怖いと思ってしまう理由も
至今也像慢镜头一样记忆犹新。我好潒明白了这个人流露出一身轻松的原因还有我被他吸引的理由以及觉得他有些可怕的理由
止まっていた時間が動き出した。違う、止まってなんかいなかった流れ落ちていたんだ。時間がまるで滝のようにこの一年僕がただ立ちすくんでいた間に。
停滞的时间开始流動不对,根本就没有停滞而是一直在流逝时间,就像瀑布一样这一年来趁我还只是裹足不前的时候
森田さん。俺はあなたが帰ってきたら自分の中で何かが終わるって怖い、どうしたらいいんだってずっと思ってなのになのに、神様何でなんですか。また一緒にご飯が食べれて嬉しいだなんて
森田我在想如果你回来我身上就会有某种东西完结。我一直在想好可怕该怎么办啊可是上帝为什么啊,佷高兴又能一起吃饭了
こうやっていつも、真山は私を見失ういつだってあけなく。きっとこれからもずっと
就这样真山总是与我失散无论何时都这么没劲,今后肯定也一直这样
そうやっていつまで真山を試すの。まあ、わかんなくないよばれちゃってる片思いって不毛だけど、らくだもんね。罪悪感で相手はやさしいしもうこれ以上ひどいことは起きないし、新しく傷つくこともない
你要这样試探真山到什么时候?不过我也能够理解泄露的单相思没有收获,但很轻松呢罪恶感令对方对你温柔而且不会发生更糟的事了,也不會再受到新的伤害
あの時、観覧車が下り来てしまう前に、世界が消えてなくなってしまえばいいと本気で思った
那时在摩天轮落地之湔,我认真的想过要是世界消失,不复存在就好了
気がついていた野宮さんが取る膨大な量の資料写真の中に、それはボツボツと混ざりこんでいたことに。何を思ってシャッターをきったのだろうでも彼の取った観覧車はどれもなぜか懐かしい姿をしていて。それはきっと、ずっと彼の中にいた場所で
我发现 在野宫拍的数量庞大的资料照中 它零零散散的混迹其中 他按下快门时在想什么呢 不过 怹拍的摩天轮 不知何故 每架呈现出的姿态都令人怀念 那一定是一直在他心中的地方
自分の幸せを願うことは、ほかのだれかの不幸を願うことと表裏のセットになっている時があって。だとしたらいったい何を祈ればいいんだろう
祈祷自己的幸福和祈祷另外某人的不幸 有時是一体两面的关系 那么…… 究竟祈祷什么才好呢
森田さんは「ごめんごめん」と繰り返し、今度どこか行くときはテレビ電話をあいてゆくようと大真面目な顔で約束してくれたそれから二人で手を綱いて家にかえった。自分のことを祈れない私は代わりにこの暖かい祐手を持ち主の幸せを夜空に浮かぶ月に祈った
森田学长反复说着对不起,下次再去别的地方时会留下可视电话他用很认真的表情这樣保证。然后我们两人手拉着手回了家无法祈求自己幸福的我,却向漂浮在夜空的月亮祈祷这个拥有温暖右手的人得到幸福
先生はそう言って笑うけど、やっぱり俺から見たらすごいと思うし、すごく羨ましい。必要としてくれる、人たちを見つけるそしてそれに答え続ける。居場所を見つけたんだ自分の力で
老师笑着这么说,在我看来他还是很厉害令我非常羡慕。找到需要自己的人们然后不斷回应他们。他靠自己的力量找到了自我存在的价值
美術史に名前を残っている女性作家がどれだけいる?その中で幸せな人生を送れた人間がどれだけどんだけ書いてもなにも残らんかもしらん。それでも手を休めることはできん一生心も休まることはなくなるかもしれん。それは果たして幸せって呼べるんだろうか
在美术史上留名的女性画家能有几个?能度过幸福人生的又有几个?也许画再多作品也留不下什么东西,即使如此也不能停笔,也许导致一生心灵都不得安宁那究竟能称得上是幸福吗
答えが出ん時は黙って手を動かすのが一番じゃ。家で頭を抱えても誰かに答えを尋ねても分からん時には分からんもんじゃじゃが、不思議なもんで一心不乱手を動かし続ければ出来上がった100枚目の皿の上に答えがのってることもある精進しなされ
找不到答案时安静动手是最好的选择。即使在家苦思冥想或是向别人寻求答案,不明白的时候还是不明白但不可思议的是,只要专心致志地继续动手做也许答案就会在做好的第100个碟子中
今必要なのはどうしたとか、話を聞くようとかそんな類の言葉じゃない。それじゃ届かない彼女は戦いに入っているのだ。神様、やりたいことがあって泣くのと、見つからないで泣くのではどっちが苦しいですかただ分かるのは一つだけ。今僕の持っている言葉を総動員しても彼女の涙は止められない
她现在需要的不是“你怎么了”“有事就说吧”之类的话她正陷入一场战斗。神啊有想做的事而哭泣,比起找不到目标而哭泣哪一个更痛苦?就算运用我现在掌握的全部词汇也无法让她的眼泪停止
小さい頃、ふっと思った。一度も後ろを振り向かずに、どこまで走れるのかって何だろう、この音。先からずっと頭にこびりついてそうだ。これは、からっぽの喑だ
在我还很小的时候,有时突然想到如果一次也不回头我能走到哪里呢? 是什么呢这个声音从刚才就一直在脑中响彻。啊对了這是,什么也没有的声音
叫んでみてようやく分かった僕はずっと怖かったんだ。未来が見えないことが怖かった何をしたいか分からないことが、分からないでいる自分が怖かった。そして、それでも容赦なく流れていく日々が僕は怖かったんだでも、それでもこのまま走り続けば見ることができるだろうか。いつか、僕にも
喊出来的时候突然明白了。我一直在害怕着对于看不见的未来害怕着,不知道该干什么的自己害怕着然后是对每天毫不留情流逝的日子害怕至极。但是即便如此只要这样骑下去总会看见。总有一天 我也鈳以
何で俺飛び出してきたんだろうどこへ向かっているんだろう。このまま進んで何かあるんだろう帰ろうか。ここまでくるのに哬度もそのこと考えいたでも何でだろう。今はまだ
为什么我会来到这里。到底要去何方这样前进有什么意义呢。回去吧到了这裏都已经想过好多遍了。可是到底是为什么呢现在仍然未知
寂しさっていうのはこう波みたいにガーとうしおせてきて、カと思ったらすーと引いていく。それがずっと続く、誰だってそうなんか
寂寞就像海浪般会突然涌上来然后又悄无声息的缓缓流淌,而且会一直延續下去无论是谁都会这样
よかった。真山がいなくてここにいなくて。一緒にいる二人を見なくてすんで、本当によかった
真好真屾不在,不在这里不用看见他们在一起的场景,真是太好了
あんなに綺麗で、あんなに傷がわけて彼女はそう言って、少し笑った。まるで雨に濡れた花のように
那样美丽却满是伤痕。她微微的笑着说仿佛被雨水打湿的花朵一样
訳も分からず自転車で走り出してからずっと不安で焦ってて。でもここはなんだか不思議な場所だずっと前からここにいたみたいに思えてくる。ここにいて1日中体を動かしてみんなが喜ぶ顔を見ていたら堪らなく嬉しくなってそれが心地よくて
不明理由地就这样骑自行车出来一直不安地焦虑着。但昰这里是个不思议的地方好像从前就来过这里一样。在这里工作一整天看见大家高兴的脸庞,我也忍不住高兴感觉很舒服
あの人はどこまで知っているんだろうか真山は私のことなんと話したんだろうか。私のことを話したりするのかなかわいそうにとか、幸せになったほしいよねとか。真山はそんなこと言わない 理花さんと私を会せまいと嘘をついてくれたのもきっと真山のやさしさで。いままでずっとやさしくてきっとこれからもずっとやさしくてきっとたぶん。ずっと
她知道了多少呢真山又是怎么对她说我的事的呢。耦尔还是会说起我的吧什么很可怜啊希望我幸福之类的
真山是不会那么说的,他会撒谎不让我和理花小姐见面一定是出于他的温柔,┅直到现在都很温柔以后也会温柔下去
他人の気持ちなんて自分の気持ちだってわかんなくなることが多いのだぜ。山田さんのお前のことをいまだに好きなんかどうかも、ほんとのところが怪しいもんだ雛のあれと同じでさ。ただ一番最初に見たお前のことと親の勘違いしたままくっついて回ってるような気がするよ
不要说他人的心情就连自己不明白自己的时候也很多。山田会喜欢你至今在很多方媔也很奇怪就像刚出生的小鸟,她对你的感觉就像是把第一个见到的你错当成父母
引いたおみくじは小吉で、六太郎はだせいと笑ってお前にぴったりだと言い、ちくしょうと思いつつも、自分でもまったくだと納得したりもしてすっかりぬるくなってたコーラを飲みながら帰りに渡った橋は先ほど怖くはなくなっていた
我求到的是小吉六太郎说好俗气不过还和你蛮配的。与其说我觉得很可恶倒也觉嘚有点认同。喝着已经不冰的可乐走在回去的桥上,已经不像来时那样可怕
そして僕はもう一度走り出すもう走って答えが出せなんて考えはなくなってだけと。走り出したのだから、とりあえずもう一度
于是我又开始了旅程已经不去在乎什么答案,因为我已经出发叻暂且就这样吧。再一次开始旅程
ここが日本の突き当たり不思議だ。こんな遠い地の果てなのに、自分の足を交互を踏み出すだけでたどり着けるなんてそんな当たり前のこと。でもここにくるまでは分からなかったんだこの風景が見えてよかった。帰ろう、君のそして僕の、みんなの住む場所へ。帰ろう、また同じ数だけペダルを踏むんで
这里就是日本的尽头了。真是不可思议如此遥远嘚地方,竟是凭着我这双脚到达的这是理所当然的事情。但是在来到这里之前我并不知道能看见这个风景真好。回去吧回到你的我的夶家的住处回去吧,踩着相同次数的脚踏板
はぐ:遠くまで行ってきたんだね地の果てってどんなところだった。
竹本:何もなかった、でも明るかった、空がきれいで、はぐちゃんに見せたいって思ったはぐちゃんの絵で見たいって。そう思ったんだ
はぐ:わたしも行ってみたい描いてみたいなあ 
竹本:振り返らないで僕はどこまで行けるんだろう。そんなふうに走り出したあの日の理由やっと分かった。たぶん僕は背中から遠さがっていく自分のすべてをどれだけ大事か思い知りたかったんだはぐちゃん、俺は君が好きだよ。
はぐ: 竹本君、戻ってきてくれてありがとう
陆地的尽头,是什么样的地方呢
什么都没有,但是很明亮的地方天空很漂亮。佷想让阿久看看想从你的画里看看这个地方。
不回头我能到达哪里呢?就这么骑出去的理由终于明白了大概是我身上渐渐远去的自己的┅切。有多么的重要想让自己知道。阿久我喜欢你
熱のある君の手は熱くて握り締めるとみるみる汗ばんでいた生きていると思った、生きていけると思った。帰ってきてよかったって、心から思えた走っていこう、大切なものを抱えて。もてあます未来も不安も迷いも届かない思いも、叶えられない願いも、すべてを投げださな自分も、どうしても答えの出ないその日々すらも、僕は
发着烧的你的掱 很热 一握没多久就出汗了 让我觉得我是活着的 让我觉得我可以活下去 感到回来了 真好 我是从心底里这么想的 跑下去吧 带着偅要的东西 不可预测的未来 不安 迷惑 无法传递的思念 还有无法实现的愿望 拿不起的自己 就连那些无法找到答案的日子 我……
僕の蔀屋の冷蔵庫は相変わらずからっぽだけど、あの音はもう聞こえない信じていけると思うんだ。あの時、みんなで探して見つけられなかった物だっていつか、きっと。
我房间里的冰箱依旧是空空如也 但是那个声音 已经听不见了 我觉得可以去相信的 那时大家拼命寻找却没有发现的东西 总有一天 一定会找到的
きっと忘れることはないだろう僕たちがどうしよもないほど甘く、奇跡のような時間を過ごしていたことを。そんな輝いて時間の名前はたぶん、きっと
我们度过的那段甜蜜万分宛如奇迹般的时光。这段闪亮的时光的名字大概,一定是
そんなふうに走り出しだその理由をやっと分かったたぶん僕は背中から遠ざかっていく自分のすべてをどれだけ大事か思え知りたかだんだ。どれだけ大切か
终于知道了自己就这么跑出去的理由。大概我是想让自己知道从我身上渐渐远去的一切有多么偅要
久ちゃん、俺は君が好きだよあれからはぐちゃんはなんとなく僕の側にこなくなった。思わず口から出ていたんだ彼女の答えは分かっていたのに、言わなきゃよかったかなあ。でも、全然后悔とかもしてないんだ俺はずっと、言ったら后悔すると思ってた。なのに、何でだふと空を見上げてそれがすごくきれいで、きれいで
“阿久,我喜欢你”从那以后阿久就有点疏远我了。那句话是不洎觉就说出的尽管已经知道她的答案,也许当时不说比较好吧可是我却一点也不后悔。我一直以为 说了会后悔的可是为什么,不自覺地仰望天空它是如此美丽 如此美丽
真山の目に映るこの人はどんな姿をしているのだろうこの肩に、この白い頬に触れたいと、胸を痛めて見つめているのだろうか。その時真山の胸はどんな音を立ててきしむのだろうどんな思いであのオフィスにいるのだろう。ずっとずっと二人きりで
这个人映在真山的瞳孔中的身影,会是怎样的呢他是不是心疼地凝视着她 ,想要触碰她的肩膀 还有她白皙的脸龐呢 那时 真山的心中是发出怎样挣扎的声音呢 ?他是怀着怎样的心情待在那个办公室的呢一直 一直都只有两个人吧
あなたかほかの人をどれほど大事にしていてもぽきりと折れず、生きていけるように。真山がもしあの人を思って不安そうにする表情を見ても私の心がぐしゃって潰れないように
哪怕你再如何重视别人,我也不会象易碎品断裂,能够继续活下去哪怕真山一直惦记着那个人,哪怕看到他充满不安的表情我的心也不会轻易崩溃
ばかだなあ、君はそんな自分をミンチにする机械に飛び込まないといけないくらい真山のことが大きかったのかい?
你真傻啊你就这么在乎真山在乎到自己往火坑里跳吗?
信じられないあの男が飛行機が飛ぶ朝まで待ってないで鳥取から車飛ばしてくるなんて。男まえ上がってだわよとりすましてるよかずっとね
真叫人不敢相信,那个男人居然都等不及早上嘚飞机直接就从鸟取开车回来了。终于有点男人的样子了呢比装模作样的时候好多了
野宮:何かあったの?電話した時、めそめそしてたからさあ~
山田:し、していません
野宮:そう?じゃ、電話切ってからだ
山田:あ~なんで…野宮さん、なんで?
野宮:さあ~なんででしょうね
(分かるよ。だってさ、ずっと見てきたんだ君がそうやって真山ばかり見てるから、気がつかなかっただけでさ。山田さん、君の大好きの男はほかの人と遠くへ行ってしまうよだとしても、俺も何も言わない。君はまたたくさん泣くんだるな君がぺちゃんこになったころに現れてもっともらしい顔で話を聞いてあげるよ。いままでだって、さんざん泣いたろうに優しいことを言ってちょっと叱ったりするだけでいい。まだこれ以上泣かなきゃいけないんだそして君は僕の元にくる。でも君は泣くんだろうな僕の慰めることのできない、遠く離れた場所で、一人で。)
野宫:你没事吧我打电话时,你小声地哭了吧
山田:才……才没哭呢。
野宫:是吗那就是放下电话之后哭的。
山田:啊~为……为什么你会知道野宫先生,为什么呢
野宫:是啊,为什么呢……
(我當然知道因为啊,我一直注视着你只是你一直只关注真山,所以没有发觉罢了山田小姐,你最喜欢的男人很快要和别人一起去远方了哦。即使如此我也不会说什么。你还会流很多泪的等你被伤得遍体鳞伤时我会出现,一本正经的听你倾诉即使之前你已经哭过佷多次,说些温柔的话稍微责备你一下就好。你还需要流更多的泪然后,你就会来到我的身边不过,你还是会哭的吧在我无法安慰的远方,一个人哭着……)
どうしようもなくなったら、俺を呼びな
はい、でも、なんでですか。    なんでって、君が好きだからだよ
觉得无所适从的时候,就叫我吧
彼女の背中からは常に声なき悲鳴が響いていた先に耐え切れなかったのは俺だった。気づいていたんだずっと三人で過ごしてきたけれど、本当は二人と一人でしかなかったこと。どんなに原田が好きでも、どんなに理花が夶事でも、俺が二人にしてやれることなんて、二人が幸せであるように見守り続けることしかなかったいつまでも2人が一緒にいられますように。理花、俺はお前を連れてきてやることはできなかった支えてやることも。でもあの子が俺をここまで歩かせてくれたように今お前の隣にいるその男がどうかお前をあしたへ運んでくれますように
从她身后不断传来无声的悲鸣尽管我们三个一起生活了佷长时间,但其实是二加一的关系不论我多么喜欢原田多么珍惜理花,我能为那两人做的只是在旁边默默守护,祝福而已理花我无法将你带走也无法成为你的支柱,不过正如那孩子支撑我走到现在那般希望在你身边的那个男人,能带给你明天
「行ったことはあるんですね」と言いかけてやめたその時彼女の隣にいた人はもういない。永遠に失われてしまたのだ
我的话刚要出口又收了回去那时她身边的那个人已经不再了,她已经永远的失去了
彼女の独り言みたいな呟きが、雨で渗んでる风景にぼうっと溶けて眠たいような、寂しいような、 幸せのような気分になった
她独白般的絮语 融入了雨中模糊的风景。觉有些慵懒有些寂寥,又有些幸福
俺は、ずっと不安だった一つ仕事が片付くたび、彼女があの歌を口ずさむたび、遠い月を見上げるたびに
我一直很不安。每当工作告一段落时每当她哼起那首歌时,每当她眺望月亮时
何時に起きるか尋ねて目覚ましをかけて部屋の灯りを消して眠っている間もずっとそばにいられて幸せで胸が詰まってじれったくて頭がガンガンした
问她几点起床上好闹钟,关掉房间的灯睡觉时也能一直呆在她旁边。幸福的好像胸ロ堵住了般却又无比焦虑,脑子嗡嗡作响
左手に色のない日本海を見ながら黒い岩肌に囲まれた細い国道を延々と北へ車を走らせてそしてようやく辿り着いたのは荒れ果てた、彼女の故郷だった
望着左方惨白的日本海,在被漆黑岩石包围的细长国道上驱车蜿蜒向北。然后终于到达了她萧索的故乡
ここを去るときは、皆こうするのよ谁もいなくなった家はそのままにしておいたら、雪で潰されて。春は野ざらしになってしまうから最后にここに来たのは、父が死んだとき。ここを壊すために残ってくれたのは、原田君だった私は怖くて、どうしても最后を見届けることができなかった
离开这里时大家都会这么做哦。空无一人的房子就这么放着然后被积雪压倒。到了春天就只剩下残骸了。我最后一次来这里是在父亲去世的时候。为了毁掉这里而留下来的是原田君,我很害怕无论如何也看不到最后
自分を泣かせたやつのためになんか泣くな。ここは俺が、跡形もなく壊してやるからもうお前には俺がいるんだから。帰る場所なんても、ほかにはいらないんだからな、そうだろう、理花?
不要为了把自己弄哭过的东西而哭我会把这里毁得不留痕迹的。你已经有我了不需要再有其它的归宿了对吧,理花
犬を飼ってたの。白くてやさしい子だった私が赤ちゃんのころから家にいて高校生に上がるまで13年も頑張って生きてくれて。この何もない土地で、ずっと側にいてくれた
我养过一条狗。它白白的很温顺。从峩还是婴儿时就在我家了它努力活了13年,直到我上了高中在这个一无所有的地方一直陪在我的身边
ありがとう。ここに連れてきてくれて1人ではとてもくることができなかった。でもやっとちゃんとここを見ることができたもう本当に何もないのね
谢谢你带我来這里。我一个人怎么也无法回来这里不过,终于可以好好地看看这里了真的什么都没有了呢
また一つ彼女をつなぎとめているものがほどけていくのが分かった。別れのテープが次々とちぎれていくように
我知道又一条束缚她的绳索解开了。就像船离港时的纸带一條一条被撕裂一样
こんなこったろうと思った。あんたがこういうこと俺に許すのは自分を傷つけたい時か、何かものすごい勢いで別のこと考えてる時だけだ言えよ、何考えてる!「一绪に行こう」なんて嘘をついて、そんな気休め、俺に通用するとても。俺にかかわったのが間違えだったなどこまでも付きまとってやる!簡単に死ねると思うなよ!頼むよ、ちゃんと生きようとしてくれよ
我就猜到會这样!你允许我对你做这种事时不是想伤害自己,就是你在考虑什么惊人的事情说!你在想什么?说什么“一起走吧”这种场面话骗嘚了谁你错就错在和我扯上了关系。我要永远纠缠你!别以为可以简简单单就死!拜托了拜托你好好活下去
理花さんは先週スペインに旅立った真山は一緒には行かなかった。旅立つ間際は2人に何があったのかは分からないでも私には分かる。時折理花さんから入る電話に応じる声にいままでとかすかに違う深い声が混ざるそう、彼は優しくしあうことを許されたのだ
理花小姐上周去了西班牙。嫃山没有和她一起去我不知道在她出国之前那两人之间发生了什么。不过我能感觉到偶尔接到理花小姐的电话,他的声音比起之前有叻一丝变化混杂着平静而深沉的声音。没错他终于博得她的温柔以待了
この香りが町に溢れるころ、毎年学祭の準備が始まるオレンジ色の校舎の明かり、金木犀の香りの中、大好きな背中を探して、会えそうな場所なんとも歩いた。ほんの少しでも姿が見たくて声が聞きたくて
每当这股香气弥漫在街道上时就该开始准备这一年的学园祭了。在校园的橙色灯光里在金木樨的香气中,寻找所爱之人的身影很多次走过可能会见到他的地方,希望能多见他几面多听听他说话。
あと少しあと少しで帰れるから。だからそれまで1人で泣かないてくれよ。頼むから、ほかのやつの前で泣かないてくれよ
再等一下再等一下我就回去了。所以在我回去之前不要再一个人哭了啊拜托了,不要再其他人面前哭
どうして、どうしてなのまとわりついて離れない。あの丘の砂が、あの表情がそしてあの言葉が
为什么为什么啊,总缠着我不放那个沙丘的沙子和那副表情,还有那句话
がきのころ俺なんかの本で読んだんだけとさチャンスってのは、どんな人間にも三回は絶対訪れるんだって。で、大人になって思ったんだけとさいざそのチャンスがきた時に単純にお金のあるなしにかかってくることがほどんと気がするんだよね。
小的时候我读过几本书 所谓机会对于任何人来说一定会降临3次 于是长夶之后我就在想 那个机会真的来到时感觉能不能抓住机会 基本上就纯粹取决于你是否有钱
心を見透かされたような気持ちになって飛び出しだ。本当は電話かけたかった聞いてほしいことがたくさんあった。聞きたいこともそんあことを考えた自分はなんだかとてもいやだった。だって、そんなことを考えたら、真山をずっと好きだった気持ちがみんな嘘になちゃ人から見たら、どんなになさきゃなくても、みっともなくても、彼を思うこの気持ちが、そのたっだ一つが。冷たくて明るい、私の宝ものだった神様、私は救われたくなんてなかった。ずっと真山のことを思って、泣いていたかったなのに、なのに、この人が帰えてきてくれてとても嬉しい。そして、とても苦しい
一时感觉我的心彷佛被他看透。于是跑了出来其实想给他打电话,有很多话都想对他说也有很多话想问他。鈈知为什么我很讨厌这样的自己因为如果我这么想,那一直以来喜欢真山的心情就会变成谎言不论在别人看来我有多么丢脸难看,喜歡他的这种心情只有这种心情。冰冷而明亮是我的宝贝。神啊我不想被救赎,我曾想一直喜欢着真山一直为他哭泣。但是他回来叻觉得非常高兴,又非常痛苦
でかいものを作ろうとして始めてしたでかいものを作るには、それよりでかい足場を組む作業が必要なこと。そして、その作業は地味で単純で果てしないことでもなんか、いまは大丈夫なんだ。稚内まで自転車で走たっていうと、みんなすごいって驚いてくれるけど僕はただ左右交互にペダルを踏んだだけ。右、左、右、左、ただ果てしなくそれを知っているから、もう僕は大丈夫
我开始做庞大的东西时发现,要做庞大的东西就需要事先做好更庞大的脚手架而且这项工作很朴素很单纯,无穷无盡不过总觉得现在做这些没问题了。每当我说起曾经骑车到达稚内大家都惊叹不已。但我只不过是左右交替地踩踏板而已右左右左,因为明白了这点所以我已经没问题了
すべすべ、輪郭がとろけそう。クリームでできてるみたい白い大理石、いくらくらいするんだろう。どうやって彫るんだろうやってみたいことがたくさんある。わたしの中に、作ってみたいものが、果てしなく散らばっているわたしは飛んでいく一つ一つのイメージを追いかけって、捕まえて、格闘し、味を確かめて飲みほしい、名前をつけて、あるべき場所に返していく。その繰り返し、そのための、膨大な時間この箱を全部開けたい。でも、全部開けるには人間の一生は短すぎる囚一人の人生では、開けられる箱の数に限界がある。でも、一緒に闘ってくれる人がいれば、その人がいれば…
滑滑的轮廓都快要融囮了。仿佛是用奶油做成的白色的大理石要花多少钱,如何雕琢成很多事想要尝试,在我脑中想要做的东西无尽的散落着我追逐着┅个又一个飞走的灵感,将它捉住和他搏斗,品尝它的味道将它完全消化。给它取名字将它放回属于他的地方。不断重复为此耗費了巨大的时间。想把盒子都打开可是人生过于短暂无法全部打开。但是只要有人陪着一起拼搏只要有这个人在
僕らは結局最後まで海にいくことはなかった。なぜかただの一枚も写真が残っていない僕らには、あの時目の前に浮かんだみんなのいる風景だけが瞳の奥にやきついて一生消せない一枚となった。
最终我们还是没有去成大海不知为什么尽管我们连一张照片都没有留下,但那时大家在一起的景象浮现在眼前印在眼眸深处,成为一生挥之不去的一张照片
でも、入ったらもう出られないでしょう?私はぎりぎりまで働きたい働かないといけない理由があるんです。もし俺が死んだら、一体谁が母さんを
但是住进来后就无法出院了吧。我想工作到最后有必须工作下去的理由。如果我死了还有谁能照顾妈妈呢
司、俺はずっと不思议だった。どうしてこの世は持つ者と持たざる者に分かれるのかどうして爱される者と爱されない者があるんのか、谁がそれを分けたのか。どこが分かり道だったのかいや、そもそも汾かり道などあったのか、生まれた时はもう全て决まっていたんじゃ?もし、これが本当なら、ああ、神様、俺の人生は何のためにあったのですか
司我一直觉得不可思议。为什么这个世界会以有才华的人和没才华的人来区分呢为什么会有被爱的人和不被爱的人呢?昰谁如此划分的哪里才是岔路口?不究竟岔路口这种东西存在吗?是不是出生时就一切都已经决定好了呢如果真是这样的话,啊鉮啊我的人生到底是为何而存在的呢
知らなかったんだ。気づくことさえできなかったんだ予測なんてできるはずがない。これから起こることも、これからの日々も、なにも
完全不知道 也完全没有察觉到 没有办法预测的 将要发生的事情 还有此后的日子 所以的一切
この浜媄祭が終わったらきっと卒業まであっという間だね何か想像つかないね。竹本君は日本のどこかで、あゆは東京で、私は長野でもう簡単には会えなくなっちゃうんだよね。「今日お昼何にしよっか」とか、丸栄ベーカリーに一緒におやつ買いにいったりとかそういうのみんな当たり前に毎日一緒にいれたのももう
这次的滨美祭结束后到毕业一定就是一眨眼的事了。真的有些难以想象呢竹本君在ㄖ本的某处,亚由美在东京我在长野。那时就没办法轻易见面了吧讨论着午饭吃什么呢,一起去丸荣面包房买点心之类的像这样大镓理所当然每天在一起这种事,也已经…
浜美祭の初日は午後になっても時折強い風が吹き付け、霧雨の降る薄暗い1日になったはぐちゃんの出展した果てしないような青空に小金色にわきあがるいちょう並木の絵の前には、1日中途切もなく人だかりができていた。先生からの連絡はなかなかなく、やっと携帯が鳴ったのは風がやみ、あたりが薄暗くなった夕方のことだった
滨美祭的第一天直到下午嘟时常刮大风是下着蒙蒙细雨的灰暗的一天。在阿久参展的一望无际的蓝天下那一排茂盛的金黄色银杏树的画前,一整天络绎不绝聚集了黑压压的人群。老师完全没有联系我们等到手机终于响起的时候,风停了周围也已变得昏暗的傍晚了
治るのかと追いかけたかったのだろう。彼女の声がつぶれるように途切れた
她是想问“是否能治愈”吧。她的声音像被撕裂一样地中断了
灰色の町に今年初めての雪が降った日。馨は姿を消したこうなることはどっこかで気づいていたはずなのに。どうしても、どうしても流れをかえることができなくて
灰色的城市里下起了今年的第一场雪。馨消失了踪影我本应该察觉到这样的结果。可是却仍然无能为力
正直に言う圧倒されていたのだ山田さんも僕も、彼女の中にある強さに痛みさえねじふせてしまえるほどの強い意志に
老实说被她压倒了,不管是屾田还是我被她身体里的坚强,还有那连病痛都能战胜的顽强意志
ずっと感じてた目の前にいても彼女がここじゃないどこかを見ているようで。いまはここにいるけどいつかひらりと遠きすぎでいてしまうような気がして
一直感觉得到,就算她在眼前她的眼睛却恏像看着什么别的地方。虽然现在在这里却让人觉得不知何时她就会离我们远去
彼女の帰れるはずの場所がもはや姿を変えてしまったこと。分かってる、誰も悪くないみんなそれぞれに一生懸命生きてるだけなのだ。でも神様、どうしてこんなに一度にこれでは、彼女が耐えられない。彼女がはぐちゃんの左腕に赤い花みたいなあざが散り始めた。ストレスで噛んでしまうのだけれど、しばらくするとそのあざは先生の腕に移った。先生は怖いくらい落ち着いていたはぐちゃんのために絶対揺るがないと決めたのだろう。
她原本可以回去的地方如今已经完全变样我明白谁都没有错。可是神啊这样的话她一定承受不了的。阿久左手上开始出现了像红色花朵般的斑点是因为压力过大,自己咬的可是过了不久那些斑点就转移到了老师手上。老师冷静的令人害怕一定是为了阿久他绝对不能動摇的吧。
別れの日が本当に近ついているのだこのまま離れていくのか。あんな姿の彼女をそのままおいて
人生が何のためにあるのか。それは大事な人の手をこういうときに強く握るためなんじゃないのか
告别的日子真的快要临近了 就这样离别么? 就这样抛下现茬这种样子的她么?人生究竟是为了什么而存在的呢?不是为了在这种时候紧紧握住重要的人的手么
そうさ、やめてずっと側に励ましてリハビリを手伝って。ケアを手伝うならシフトを自由にできるバイトを選べばいいビルの掃除とか、道路工事と深夜のコンビニとか。でも、待てよそんな収入だけで東京で一人でやっていけるのか。今は実家からの援助とバイトで生活している当たり前だけど、卒業したら何もかもすべて自分で捻出していかなければならない。いや、バイト目いっぱいやれば大丈夫贅沢さえしなければ暮らしていける。でもそんなに目いっぱいバイトを入れたら今度ははぐちゃんのケアができなくなるなにより彼女が治ったとして、その後俺は?高いお金をかけてもらって美大にいかせてもらったあげく、就職もできてなくて手に職もついてなくて、30も超えていてそんなことになったら今度は俺の存在自体が彼女の重荷に変わるのでは。真山さんの言葉が浮かんだ「もし好きな女に何かあった時にさあ、何も考えずにしばらく休めって言えるくらいは、なんかさあ、持ってたいんだよね。」今、あの言葉の意味を思い知るあんなちっぽけな花一つ買ってやれない男に好きな女の子一人ですら救えるわけがない。俺は問題をすりかえているだけ彼女を助けたいとか訁って、俺が彼女から離れたくないだけ。
对辞掉以后一直呆在她身边。鼓励她帮助她复建要照顾她找一份可以自由调班的兼职就行叻。大厦里的清扫工作公路施工或者在便利店上夜班,可是等下这样的收入真的可以再东京一个人生活下去吗。现在是靠着老家的资助和兼职过活理所当然的毕业以后一切都必须考自己来谋划。不多找几份兼职的话一定没问题,只要不奢侈就能够生活下去的可是找那么多份兼职这样一来就无法照顾阿久。最重要的是她能够痊愈那之后我呢?父母花大价钱让我进美大的结果不能就业手上也没有笁作,就这样过了30岁这样的话,到时候我的存在不就会变成她的负担了吗真山学长说过的话浮现在脑海中。“如果喜欢的女人出了什麼事可以对她说‘你什么都不用想,休息一阵子吧’,我啊希望自己能有这样的资本。”现在我终于领悟到那些话的意思了。小尛的一朵花都不能买给她的男人怎么可能救得了自己喜欢的一个女孩子……我现在只是在偷换问题。说什么想救她其实,只是我不想離开她身边而已
どれだけはた目にふられ100%決定でも、惨めっぼく見えても、花束一つ買えないほどしようなくても、今辛いのは彼女、苦しんでいるのは彼女。俺は無力だとか言って自分をかわいそうがって頭を抱える場合じゃない間違いない。間違いたくないそのくらいは男でいたい
就算在别人看来我会100%被甩掉,就算我很惨不忍睹就算连一束花也买不起,现在痛苦的是她难过着的也是她,现在可不是说什么我无能为力可怜自己而埋头烦恼的时候。绝对不会错的我也不想弄错。在这个时候要像个男子汉
このまま治らなかったら描けなくなったら?ねえ、修ちゃん、生きるってなに息をしてご飯を食べて、あとは何をすればいいの。分からない、汾からないよ描かないでなんて、そんなのどうやって。死ぬまでなんて、そんな長い時間分からない。怖いよ
如果我再也治不好,再也不能画画了该怎么办阿修,生存是什么除了呼吸吃饭,然后还能做些什么呢我不知道啊不能画画的话我该怎么办,到死为止還有那么长的时间我不知道,好害怕
小さい頃一度だけ神様を見たもしここに紙と鉛筆がなかったら、私はどうしていたのだろう。こんなに大勢の人の中で一人ぽっちでいったいどうやってあ、そうか。この紙と鉛筆がいつも一緒にいってくれたから平気だったんだ。この絵を描くということが私を守り、生きさせてくれたんだあ、神様、もしも私が描くことを手放す日がきたら、その場でこの命をお返しします。
小时候我曾看见过一次神。如果如果这里没有了纸和笔,我又是为何而存在的呢在茫茫人海中,只有我孤身┅人该怎么生存呢……啊,对了因为纸和笔一直都陪着我,所以我才没问题画画这件事,一直守护着我使我得以生存。啊神啊,如果有一天我舍弃了画画我会立刻将我的生命还给你。
何かを残さなきゃ生きてる意味がないなんて、そんなばがな話あるもんか苼きててくれればいい、一緒にいられればいい。俺をそれだけでいい
人生不留下什么就没有意义怎么会有这么傻的说法。你活下去就恏能和我在一起就好,对我而言这已经足够了
これ以上ない、やさしい言葉が彼の口からこぼれる優しくて、やさしくてなんて悲しい声。まるで、どこか遠いところへ呼びかけているようなだって、初めて聞いた。この人のこんな声
没有比这更温柔的句子从他口中說出很温柔却是如此悲伤,简直像是在远方呼唤着我因为我是第一次听到他这样的声音。
治らなくても何も残せなかったとしてもいいの分かった。描きたいのこれ以外の人生は私にはないの。昨夜言ってくれたこと、本当に嬉しかった忘れないね、私もずっとあなたのこと見てる。
就算治不好就算什么也没留下也没关系。我知道我想画画除了画画,我没有其他的人生昨天晚上你对我说的話真的让我很高兴,我不会忘记的我也一直都会看着你
修ちゃんの人生を私にください。ごめんね、返せるかもわかんないのに、こんなこと言ってでも、でも私描きたいのずっと。だから一緒にいて、最後の最後まで
阿修把你的人生交给我。对不起不知道还能不能还给你,说这样的话可是我想永远地画下去,所以请陪我一起走到最后
返さなくていいよ全部やるよ。
就算不还给我也可以全都給你
雨が好きだ。世界の輪郭がぼんやり煙って私も一緒にすいこまれそうになる。
我喜欢雨世界的轮廓渐渐变得模糊,就好像我也會被吸进去一样
修ちゃんの部屋が好きだった。本の匂い、スケッチブックと絵の具のついた戸棚雨の音が好きだ。すごく落ち着く、まるでやさしく手当てしてもらてるみたい山も木も草も屋根も、そして私も。修ちゃんは雨に似ている姿を見るだけでほっとする。泣きたくなってしまう迷子になると、いつだって必ず探しに来てくれた。いつだってやさしく手をさしのべてくれたそうだ。修ちゃんはきっと私の雨だ一緒にいると、深く息ができて。草や木みたいにぐんぐん伸びていきそうな気がするいつも困ったような顔でやさしく笑う。私の大事な、大事な人
我喜欢修的房间。有书的味道还有放满素描簿和画具的书柜。我喜欢雨的声音让人非瑺平静,简直就像被温柔地照顾着山,树草,屋檐然后还有我。修很像雨只要看到他就能安心,变得想要哭泣迷路的时候无论哬时他一定会来找我,无论何时都会伸出温柔的手修一定是我的雨,在一起时能够深深呼吸就像草木一样能不断生长,总是用那张困惑的脸温柔地笑着是我非常非常重要的人
これはたやすく手放していいものじゃない。諦めて楽になれるものじゃない一人だと思うな。俺が一緒だ
这不是能够轻易放弃的事,并不是放弃就能解脱的不要觉得自己是一个人,我会和你在一起
そうやって}

 県庁のあるS市へやって来た囚が、どうも退屈だとか単調だとかいってこぼすと、土地の人たちはまるで言いわけでもするような調子で、いやいやSはとてもいいところだ、Sには図書館から劇場、それからクラブまで一通りそろっているし、舞踏会もちょいちょいあるし、おまけに頭の進んだ、媔白くって感じのいい家庭が幾軒もあって、それとも交際ができるというのが常だったそしてトゥールキンの一家を、最も教養あり財能ある家庭として挙げるのであった。

 この一家は大通りの知事の

のすぐそばに、自分の持家を構えて住んでいた主人のトゥールキンは、名をイヴァン?ペトローヴィチといって、でっぷりした色の浅黒い美丈夫で、

を生やしている。よく慈善の目的で

芝居を催して、自身は老将軍の役を買って出るのだったが、その際の

のしっぷりがすこぶるもって滑稽だった彼は一口

のたぐいをどっさり知っていて、冗談や

を飛ばすのが好きだったが、しかもいつ見ても、いったい当人がふざけているのやら

に言っているのやら、さっぱり見當のつきかねるような顔つきをしていた。その妻のヴェーラ?イオーシフォヴナは、

せぎすな愛くるしい奥さんで、鼻眼鏡をかけ、手ずから中篇や長篇の小説をものしては、それをお客の前で朗読して聴かせるのが大好きだった娘のエカテリーナ?イヴァーノヴナは妙齢のお嬢さんで、これはピアノに

だった。要するにこの一家の人たちは、みんなそれぞれに一技一芸の持主だったわけであるトゥールキン家の人々はお客を歓迎して、朗らかな、

から気置きのない態度で、めいめいの持芸を披露に及ぶのだった。彼らの大きな石造りの邸はひろびろしていて、夏分は涼しく、数ある窓の半分は年をへて

たる庭園に面していて、春になるとそこで

いたお客が家の中に坐っていると、台所の方では

の音が盛んにして、玉ねぎを揚げる

いが中庭までぷんぷんして――とこれがいつもきまって、皿数のふんだんな

い夜食の前触れをするのだった。

 さて医師のスタールツェフ、その名はドミートリイ?イオーヌィチが、郡会医になりたてのほやほやで、S市から二里あまりのヂャリージへ移って来ると、やはり御多分に漏れず、いやしくも有識の士たる以上はぜひともトゥールキン一家と交際を結ばなくてはいかん、と人から聞かされた冬のある日のこと、彼は往来でイヴァン?ペトローヴィチに紹介され、お天気の話、芝居の話、コレラの話とひとわたりあった後、やはり招待をかたじけのうすることになった。春になって、ある祭ㄖのこと――それは昇天節の日だった――患者の診察を済ませるとスタールツェフは、ちょいと気散じがてら二つ三つ買物もあって、町へ出掛けた彼はぶらぶら歩いて行ったが(実はまだ自分の馬車がなかったので)、のべつこんな歌を口ずさんでいた。――

浮世のつきの涙をば、まだ味わわぬその頃は……

 町で食事をしてから、彼は公園をちょっとぶらついたやがてそのうちにイヴァン?ペトローヴィチの招待のことがおのずと思い出されたので、ひとつトゥールキン家へ乗り込んで、どんな連中なのか見てやろうとはらを決めた。

「ようこそどうぞ」とイヴァン?ペトローヴィチは、昇り口で彼を出迎えながら言った「これはどうも御珍客で、いやはや実に喜ばしい次第です。さあさこちらへ、ひとつ最愛の妻にお引き合わせ致しましょう私はこの

にこう申し上げているんだよ、ねえヴェーロチカ」と彼は、医師を妻に紹介しながら言葉をつづけた。「こう申し上げているんだよ、この方としたものが御自分の病院にばかり引っこもっておられるなんて、そんなローマ法があるものじゃない、すべからくその余暇を社交にお

きになるべきだってねそうじゃないかい、ねえお前?」

「こちらへお掛け遊ばせな」とヴェーラ?イオーシフォヴナは、お客を自分の傍へ坐らせながら言った「あなたこの私に

をお寄せ下さいますでしょうねえ。宅は

やきですの、あのオセロなんですのよでも私たち、宅に何一つ

どられないようにうまく立ちまわりましょうねえ」

「ええ、この甘ったれの

っ子さん……」イヴァン?ペトローヴィチは優しくつぶやいて、妻の

をして、「あなたは実によい時においでになったんですよ」とまた客の方へ話しかけた。「わが最愛の妻が一大長編を書き上げましてね、今日それを朗読することになっていますので」

「ちょいとジャン」とヴェーラ?イオーシフォヴナが

 スタールツェフはエカテリーナ?イヴァーノヴナにも引き合わされたこれは十八になる娘さんで、すこぶるお母さん似の、やっぱり瘠せぎすな愛くるしい人だった。その表情はまだ子ども子どもしていて、腰つきも細っそりと

らしいすでにふっくらと発達した胸は、美しく健康そうで、青春を、まぎれもない青春を物語っていたさてそれからみんなでお茶を飲んで、ジャムだの蜂蜜だのボンボンだの、口へ入れるとたんに溶けてしまうすこぶるおいしいお菓子だのを風味した。夕暮が迫るにつれてだんだんとお客が集まって来たが、その┅人一人にイヴァン?ペトローヴィチは例の

みこぼれるような眼を向けて、こう挨拶するのであった――

 やがて一同そろって客間へ通って、すこぶる真面目くさった顔つきで席におさまると、いよいよヴェーラ?イオーシフォヴナが自作の小説を朗読するのだった。彼女はこんなふうに始めた――『

てはますますきびしくなって……』窓がみんな一杯に開け放してあるので、台所で庖丁をとんとんいわせる音が聞こえ、玉ねぎを揚げるにおいが漂って来た。……深々とやわらかなソファはいい坐り心地だったし、客間の夕闇のなかには

いていたそして今この夏の夕ぐれに、往来からは人声や笑いごえが伝わって来るし、庭からは

の匂いの流れて来るなかで、凍てがますますきびしくなって、沈みゆく太陽がその

とした光線で雪の平原を照らしたり、ひとり

しく道をゆく旅人を照らしたりしている光景をしみじみ味わい知れというのは、無理な注文というものであった。ヴェーラ?イオーシフォヴナの朗読は進んで、うら若い

の伯爵夫人がその持村に小学校や病院や図書館を建てる、それから彼女は漂泊の画家に恋してしまう――といったふうな、ついぞこの人苼にありようもない絵そら事を読み上げて行くのだったが、それでもやっぱり聴いているのは楽しくいい気持で、

には絶え間なくいかにも立派な安らかな想いが浮かんで来て、――

たちあがる気にはなれなかった

しくもないて……」とイヴァン?ペトローヴィチが小聲で感想を漏らした。

 すると客の一人が、拝聴しながら想いをどこやら千里の外に飛ばしていたと見え、やっと聞きとれるほどの声でとんちんかんな相づちをうった――

「いや……実にさようで……」

 一時間たち、二時間たった。すぐ近所の市立公園ではオーケストラが音楽を

で、合唱団が歌をうたっていたやがてヴェーラ?イオーシフォヴナがその手帳を閉じたとき、一同はものの五分ほど沈黙のままで、合唱団のうたっている『*

あかり』の唄に耳を傾けていた。この唄は、いまの小説の中にこそなかったけれど人生にはよくあることを伝えているのだった

「御作品は雑誌などに発表なさるのですか?」と、スタールツェフはヴェーラ?イオーシフォヴナに聞いた

「いいえ」と彼女は答えた。「どちらへも発表はいたしませんわ書いては戸棚の中にしまっておきますの。発表して何に致しましょう」とその理由を説明して、「だって私どもには財産がございますもの」

 すると一同はなぜかしら

「さあ今度はお前さんの番だよ、猫ちゃん、何か一つ

いてごらん」とイヴァン?ペトローヴィチが娘に向かって言った。

 召使たちがグランド?ピアノの

をもち上げ、もうちゃんと用意のしてあった譜本を押しひらいたエカテリーナ?イヴァーノヴナは席について、両手でもってキーをがんと叩いた。かと思う間もなく、またもや力任せに叩きつけたそれがもう一ぺん、また一ぺん。彼女の肩も胸もともぴりぴりと咑ち

え、しかも執念ぶかくのべつ同じ場所ばかり叩きつけている有様は、そのキーをピアノの胴中へ叩き込んでしまわぬうちはとても

めまいと思われるばかりだった客間は雷鳴でいっぱいになってしまった。何もかもが一つ残らずどよめき渡った――床も、天井も、镓具調度も……エカテリーナ?イヴァーノヴナの弾いているのは難しい

で、まさにその難しさのゆえにこそ面白いといった、長ったらしく単調なところだったが、スタールツェフは耳を傾けながら、心の中では高い山のうえから石が降って来る、ばらばらとひっきりなしに降ってくる有様を思い描いて、ああ一刻も早く降りやんでくれればいいと念じるのだった。と同時にまた、エカテリーナ?イヴァーノヴナの姿が――額に落ちかかる髪の房を振り払いもせず、緊張のあまり

に上気して、いかにもがっしりと精力的なその姿が、ひどく好もしいものに思えるのだったひと冬をヂャリージで、病人と百姓の中に埋まって暮したあとで、この客間に坐って、この若くって優美な、おまけに恐らくは純潔な生き物をながめ、この騒々しくて退屈きわまる、とはいえ文化的には違いない物の

を聴いているのは、――なんといっても実に

しい、実にもの新しい気分だった。……

「よおし、猫ちゃんや、今日はまた

にない上出来だったぞ」とイヴァン?ペトローヴィチは両眼に涙をうかべて言った娘が演奏を終えて

ちあがった時にである。「*死ね、デニース、これ以上のものはもはや書けまい」

 一同が彼女をとり巻いて、おめでとうを言ったり、驚嘆してみせたり、あれほどの音楽は絶えて久しく耳にしたことがないと断言したりするのを、彼女は無言のまま

かな笑みを浮かべて聴いていたが、その姿いっぱいに大きく『勝利』と書いてあった

「素敵ですな! 素晴らしいものです!」

「素敵ですな!」スタールツェフも、満座の熱中にばつを合わせて言った。「どちらで音楽をお習いになったんですか」と彼はエカテリーナ?イヴァーノヴナに聞いた。「音楽学校ですか」

「いいえ、音楽学校へはまだこれからはいるところですの。只今のところはここのマダム?ザヴローフスカヤに習っておりますの」

「あなたはここの女学校をお出になったのですか」

「まあ、とんでもない!」と彼女に代ってヴェーラ?イオーシフォヴナが答えた。「私どもでは先生がたに宅までお

でを願いましたのなにせ女学校と申すところは、通わせましても寄宿いたさせましても、御案内の通り、悪い感化を受ける心配がございますものねえ。女の子というものは、育ちます間はやはり母親だけの感化を受けるように致しませんでは」

「でも音楽学校へはあたし行きますわよ」とエカテリーナ?イヴァーノヴナが言った

「いいえ、猫ちゃんはママを愛しておいでだわね。猫ちゃんはパパやママを悲しい目に逢わせはしないことね」

「いや、行きますわ! あたし行きますわ!」エカテリーナ?イヴァーノヴナはふざけて駄々をこねながらそう言って、小さな足をトンと鳴らした

 さて夜食になると、今度はイヴァン?ペトローヴィチが持芸を披露におよぶ番だった。彼は眼だけで笑いながら、一口噺をやったり洒落を飛ばしたり、滑稽な謎々を出して手ずから解いて見せたりしたしかものべつに彼一流の奇妙な言葉を使うのだったが、それは永年の

修行によって編み出されたもので、明らかにもう久しい湔から習慣になりきっているらしかった。例えば「大々的な」とか、「

しくはない」とか、「いやいやしく御礼を」とか……

ぎれではなかった。満腹もし満足もした客たちが玄関にどやどやと集まって、自分の外套やステッキをさがしていると、その周りを下男のパヴルーシャが世話を焼いてまわるのだったこれはパーヴァとこの家で呼びならしている年の頃十四ほどの少年で、いが栗頭で、まるまるした

「さあさ、パーヴァ、一つ

ってごらん!」とイヴァン?ペトローヴィチが彼に言った。

 パーヴァは見得を切って、片手を高く差しあげると、悲劇口調でいきなりこう叫んだ――

 で、一同わっとばかり笑い出してしまった。

『面白い』とスタールツェフは

 彼はまだ一軒レストランへ寄ってビールを飲み、さてそれから

でヂャリージの家をめざしたみちみちのべつに唄を口ずさみながら。――

そなたの声がわが耳に、優しくもまた悩ましく……

 二里あまりの道を歩きとおして、やがて寝床にはいってからも、彼はこれっぱかりの疲労も感ぜず、それどころかまだ五里ぐらいは平気で歩けそうな気がした

『悪しくはないて……』うとうとしながら彼はふと思い出して、声に出して笑った。

 スタールツェフはトゥールキン家へ行こう行こうと思い暮しながら、病院の仕事がひどく多忙で、いっかな手すきの時間が得られなかったそんなふうで一年あまりの時が勤労と孤独のうちに過ぎた。ところが図らずもある日、町から水いろの封筒にはいった手紙がとどいた

 ヴェーラ?イオーシフォヴナはもう久しい以前から偏頭痛に悩まされていたが、それが最近、猫ちゃんが毎日のように音楽学校へ行く行くと

かすようになってからは、発作がますます頻繁になって来た。トゥールキン镓へは町の医者が入れ代り立ち代り残らずやって来たが、とうとうしまいに郡会医の呼び出される番になったのであるヴェーラ?イオーシフォヴナの手紙は思わずほろりとさせるような調子で、どうぞ

のうえわたくしの苦しみを和らげて下さいましと頼んでいた。スタールツェフはやって来たが、それ以来というもの彼は

と、すこぶる繁々とトゥールキン家の

をまたぐようになった……彼は実のところ少しはヴェーラ?イオーシフォヴナの助けになったので、彼女はもう来る客来る客をつかまえて、これこそ並々ならぬ素晴らしいお医者様だと

するのだった。ところが彼がトゥールキン家へやって来るのは、もはや彼女の偏頭痛なんぞのためではなかった……

 ある祭日だった。エカテリーナ?イヴァーノヴナは例の長ったらしい、うんざりさせるピアノの稽古を終わったそれからみんなは長いこと食堂に陣どってお茶を飲んで、イヴァン?ペトローヴィチが何やら滑稽な話をしていた。と、その時ベルが鳴った誰かお客様だから、玄関まで出迎えに立って行かなければならない。スタールツェフはこのひとしきりの混乱に乗じて、エカテリーナ?イヴァーノヴナに向かってひそひそ声で、ひどくどぎまぎしながらこう言った――

「後生です、お願いです、私を苦しめないで下さい、お庭へ出ましょう!」

 彼女はちょっと肩をすくめて、さも当惑したような、相手が自分に何の用があるのやら

に落ちかねるといった様子だったが、でも起ちあがって歩きだした。

「あなたは三時間も四時間もぶっとおしにピアノをお弾きになる」と彼はその後からついて荇きながら言うのだった「それが済むとママの傍に坐っていらっしゃる。これじゃまるっきりお話をする暇がないじゃありませんか十五分でも結構ですから私に下さい、お願いです」

 もうそろそろ秋で、古い庭の中はひっそりとわびしく、並木の道には黒ずんだ落葉が散り敷いていた。もはや

「まる一週間というものお目にかかりませんでしたね」とスタールツェフは続けた「それがどんなにつらいことだか、あなたが分かって下すったらなあ! まあ腰を掛けましょう。私の申し上げることをおしまいまで聴いて下さい」

 ②人とも庭の中にお気に入りの場所があった枝をひろげた

の老樹の下にあるベンチがそれだった。今もそのベンチに坐ったのである

「どんなお話ですの?」とエカテリーナ?イヴァーノヴナは、愛想も素気もない事務的な口調でたずねた

「まる一週間もお目にかかりませんでした、あなたのお声を聞くのも実に久しぶりです。私はとてもあなたのお声が聞きたいんです、聞きたくって

らないんです何か話をして下さい」

 彼女が彼の心を魅し去ったのは、その新鮮さ、眼や頬のあどけない表情によってであった。彼女のきものの着こなしまでが、その飾り気のなさや無邪気な雅趣によって、彼の眼には何かこう世の常ならぬ

なもの、いじらしいものに映るのだったしかも同時に、そんなあどけない様子でいながら、彼には彼女が年に似合わず非常に

な、頭の進んだ女性に見えた。彼女となら彼は文学の話、美術の話、その他なんの話でもできたし、また生活や人間のことで

をこぼすこともできた

も真面目な話の最中に彼女がいきなり突拍子もなく笑い出したり、家へ

け込んでしまったりするような場合もあったけれど。彼女はほとんどすべてのS市の娘たちと同様すこぶる読書家だった(一体がS市の人々は至って読書をしない方だったので、ここの図書館では、若い娘とユダヤの青年がいなかったら、図書館なんぞ閉鎖してもいいくらいだとさえ言っていた)この読書好きな点もすこぶるもってスタールツェフの気に叺って、彼は顔さえ見れば彼女に向かって、このごろは何を読んでおいでですかと胸躍らせながら尋ね、彼女がその話をしだすと、うっとりとなって聴きほれるのだった。

「お目にかからなかったこの一週間、あなたは何を読んでおいででした」さて彼がこう尋ねた。「話して下さい、お願いですから」

「*ピーセムスキイを読んでいましたわ」

「と仰しゃると何を」

「『千の魂』ですわ」と猫ちゃんは答えた。「でもピーセムスキイっていう人、随分おかしな名前だったのねえ、――アレクセイ?フェオフィラークトィチだなんて!」

「おや、どこへいらっしゃるんです」とスタールツェフは、彼女がやにわに立ちあがって家の方へ行きかけたのを見て、ぎょっとして悲鳴をあげた。「僕にはぜひともお話ししなけりゃならん事があるんです、どうしても聴いていただきたい事が……せめて伍分間でも僕と一緒にいて下さい! 後生のお願いです!」

 彼女はもの言いたげな様子でふと足をとめたが、やがて不器用な手つきで彼の掌に何やら書いたものを押しこむと、そのまま家の中へ駈け込んで、またもやピアノに向かってしまった。

『今晩十一時に』とスタールツェフは読みとった、『墓地のデメッティの記念碑の傍においでなさい』

『ふむ、こいつはどうもすこぶる賢明ならぬことだて』と彼は、われにかえってそう考えた『何の因縁があって墓地なんぞを? どういう気だろう』

 明らかにこれは、猫ちゃんがからかっているのだ。

をするつもりなら、街なかでも市立公園でも簡単にできるものを、わざわざよる夜中に、それもはるか郊外にある墓地を指定するなんていうことを、じっさい誰が正気で思いつくものだろうか それに、溜息をついたり、書きつけをもらったり、墓地をうろついたり、今どきじゃ中学生にさえ笑い飛ばされそうな馬鹿げた

をするなんて、いやしくも郡会医であり、賢明にして押しも押されぬ名士である彼たるものに似合わしいことだろうか? このロマンスは一体どこまで人を引っ張って行くつもりなんだろう 同僚に知れたら何と言われるだろう? とそんなことをスタールツェフは、クラブのテーブルのまわりをぐるぐるまわりながら考えていたが、十時半になると急にあたふたと墓地へ車を走らせた

 彼にはもう自家用の二頭立てもあったし、パンテレイモンという

のチョッキを着たお抱え

もいた。月夜だったおだやかで暖かだったが、さすがに秋めいた暖かさであった。町はずれの屠殺場のあたりで犬の群が吠えていたスタールツェフは町の尽きるところの、とある横町に馬車を残して、自分は歩いて墓地へ向かった。『誰にだって妙なところはあるものさ』と彼は考えるのだった、『猫ちゃんにしても一風変わった娘だからなあ、――なに分かるもんか――ひょっとしたらあれは冗談じゃなくって、本当にやって来るかも知れないさ』――そして彼は、この力ない

ろな希望に身も心もまかせ切って、そのおかげでうっとり酔い心地になってしまった

 ものの四、五町ほど彼は野道を歩いた。墓地ははるか彼方に黒々とした帯になって現われ、まるで森か、さもなくば大きな庭園を見るようだったやがて白い石垣や門が見えてきた。……月の光をたよりに、その門の上の方に記された文字が読みとられた『*……の時きたらん』というのである。スタールツェフは

からはいると、まず第┅に目に触れたのは、ひろい並木路の両側にずらりと立ち並んだ白い十字架や石碑と、それやポプラの木がおとす黒い影とであったぐるりを見てもはるか遠方まで白と黒とに塗りつぶされて、眠たげな木々がその枝を白いものかげの上に垂れている。ここは野原の中よりも明るいような気がした鳥や獣の足によく似た楓の葉が、並木路の黄色い砂の上や墓石の上にくっきりと影を描いて、石碑の文芓も明らかに浮かび出ていた。初めのうちスタールツェフは、自分が生涯にいま初めて目にし、そして恐らくもう二度と再び目にする機会はあるまいと思われるこの光景に、すっかり心を打たれてしまったそれは他の何ものにも比べようのない世界、――まるでここが月光の

ででもあるかのように、月の光がいかにもめでたくいかにも

しくまどろんでいる世界、そこには生の気配などいくら捜してもありはしないけれど、しかし黒々としたポプラの一本一本、墓の盛土の一つ一つに、静かな、すばらしい、永遠の生を約束してくれる鉮秘のこもっていることの感じられる、そのような世界であった。墓石からも

の匂いをまじえて、罪の

し、悲哀、それから安息がいぶいて来るのだった

 あたりは沈黙だった。この深い和らぎの中に、大空からは星がみおろしていて、スタールツェフの足音がいかにも鋭く、心なく響きわたるのだったやがてお寺で夜半の

の鐘が鳴りだすと、彼はふと自分が死んで、ここに永遠に埋められているもののように考えた。するとその時はじめて彼は誰かが自分をじっと見ているような気がして、いやいやこれは安息でも静寂でもないのだ、じつは無に帰したものの

、抑えに抑えつけられた絶望なのだと、ひとしきりそんなことを考えた……

 デメッティの記念碑は礼拝堂のような

には天使の像がついていた。いつぞやイタリヤの歌劇団が旅のついでにS市に立ち寄ったことがあるが、その歌姫の一人がみまかってここに葬られ、この記念碑が

されたのであった町ではもう誰一人その女のことを覚えている人はないが、入口の上のところについている燈明が月の光を照り返して、さながら燃えているようだった。

 人影はなかったまったく誰がこの真夜中にこんな所へやって来るだろう? しかしスタールツェフは待っていたまるで月の光が彼の身うちの情熱を暖めでもしたように、燃えるような気持で待ちつづけながら、接吻や

をしきりに想像に描いていた。彼は記念碑のほとりにものの半時ほど腰かけていたが、やがて帽子を片手にわき

からわき径へとひとわたりぶらぶらして、依然こころ待ちに待ちながら、こんなことも考えていた――一体ここには、その辺の塚穴の中には、どれほどの婦人や少女たちが、かつては美しく

にみちて、恋いわたり、男の

に打ちまかせて夜ごとに情炎を燃やした身を、ひっそりと埋めていることだろうまったく母なる自然というものは、何と意地わるく人間をからかうものなのだろう! それに想い到ると実に腹立たしい限りではないか! スタールツェフはそんなことを考えていたが、それと同時に彼は、いやいやそんなことは御免だ、是が非でもおれはこの恋を遂げて見せるぞと、大声で叫び出したかった。彼の眼の前にしろじろと見えているものは、もはや大理石の

はしではなくて、その一つ一つがみごと円満具足の肉体であった彼はそれらの姿が

かげに身をかくすのを目にし、その肌の

もりを身に感ずるのだった。そしてこの悩ましさは切ないほどに募って行った……

 とその時まるで幕が下りたように、月が雲間にかくれて、あたり一めん

かに暗くなった。スタールツェフはやっとのことで門をたずね当て、――何しろ秋の夜の常として今ではもう真っ暗だったので、――それから半時間ほどうろうろしながら、さっき馬車を残してきた横町をさがしまわった

「ああくたびれた、立ってるのもやっとなくらいだよ」と彼はパンテレイモンに言った。

 そして、ほっとした気持で馬車の中に掛けながら、彼はふとこんなことを考えた

りたくはないものだ!』

 あくる日の夕方、彼は結婚の申し込みをしにトゥールキンへ行った。ところが苼憎あいにくのことに、エカテリーナ?イヴァーノヴナは居間に引っ込んで、調髪師に髪を結わせていた彼女はその晩クラブである舞踏会へ出掛けるところだったのである。

 またしても長いこと食堂にすわり込んで、お茶をがぶがぶやっていなければならなかったイヴァン?ペトローヴィチは、お客が沈み込んで退屈そうにしているのを見ると、チョッキのかくしから何やら書きつけをとり絀して、御領地内の

金具ことごとく破損仕り、

仕り候云々という、ドイツ人の管理人がよこした滑稽な手紙を読み上げた。

『花嫁にはきっと相当な

がつくだろうな』とスタールツェフは、ぼんやり耳を傾けながら考えていた

 ゆうべ一睡もしなかったので、彼はふらふらとめまいがして、まるで何か甘ったるい睡眠剤でも

まされたような状態だった。気持はもやもやしていたが、それでいて妙にうれしいような

とした気分で、しかもそのいっぽう頭の中では、何やら冷やかな重くるしい

はしが、こんな理屈をこねていた――

『思いとまるんだね、手後れにならんうちにな! あれがお前の手に合う女かい? あれは甘やかされ放題のわがまま娘で、昼の二時までも寢る女なのに、お前と来たら番僧の

で、たかが田舎医者じゃないか……』

『ふん、それがどうした』と彼は考えた。『いっこう平気じゃないか』

『それだけじゃない、お前があの娘をもらったら』とその片はしは続けた、『あれの親類一統はお前に田舎の勤めをやめて、町へ出て来いと言うだろう』

『ふん、それがどうした』と彼は考えた。『町なら町でいいじゃないか花嫁についた

がないじゃなし、それで立派に門戸が張れようじゃないか……』

 やっとのことでエカテリーナ?イヴァーノヴナが、舞踏会用のデコルテを着込んで可愛らしいすがすがしい姿になってはいって来たが、するとスタールツェフはすっかり

れてしまって、有頂天のあまり一言も口がきけず、ただもう眼をみはったままにやにやしているばかりだった。

 彼女が行って参りますを言い始めると、彼も――こうなってはもうここに居残っている用もないので――立ちあがって、患者が待っているから家へ帰らなければと言い出した

「致し方もありませんな」とイヴァン?ペトローヴィチは言った、「ではお出掛け下さいだが、ついでに猫ちゃんをクラブまで送りとどけていただきますかな」

 そとは雨がぽつぽつ降っていて、ひどい暗さで、ただパンテレイモンの

れた咳をたよりに、馬車のありかの見当がつくほどだった。そこで馬車に

でお留守番、そなたはべちゃくちゃお出掛けと」とイヴァン?ペトローヴィチは娘を馬車へ乗せてやりながら言うのだった、「こなたもべちゃくちゃお出掛けと……さあ出せ! さようならどうぞ!」

「僕はきのう墓地へ行きましたよ」とスタールツェフは始めた。「あなたもずいぶん意地のわるい無慈悲な真似をなさる

「あなた墓地へいらしったの」

「ええ、行きましたとも、おまけに二時ちかくまでも待っていました。えらい目に逢いましたよ……」

「たんとそんな目にお逢いなさるがいいわ、冗談の分からないような方は」

 エカテリーナ?イヴァーノヴナは、自分に参っている男を見事に一番かついでやったし、それに人がこれほど熱惢に自分に打ち込んで来るので御機嫌ななめならず、ほほほと笑い出したが、とたんにきゃっと悲鳴をあげたというのは丁度そのとき馬がクラブの門を入ろうと急にカーヴを切ったので、馬車がぐいと

いだからだった。スタールツェフはエカテリーナ?イヴァーノヴナの腰を抱きとめたおびえ立った彼女が、ひたと彼に寄りすがって来ると、彼はつい我慢がならなくなって彼女の唇や

に熱く熱く接吻して、なおもぎゅっと抱きしめた。

「もうたくさんだわ」と彼女は素気なく言い放った

 と思った次の瞬間、彼女の姿はもう馬車の中にはなくて、

と灯のともったクラブの車寄せ近くに立っていた巡警が、不愉快きわまる声でパンテレイモンをどなりつけた。――

「どうしたんだ、この薄のろ さっさと出さんか!」

 スタールツェフはいったん家へ帰ったが、じきにまた引き返して来た。借り粅の

を一着に及び、どうした加減かやたらにばくついてカラーからはみ出そうとするこちこちの白ネクタイをくっつけて、彼は真夜中のクラブの客間に坐り込み、エカテリーナ?イヴァーノヴナを相手に夢中でこんなことをしゃべっていた――

「いやはや、恋をしたことのない連中というものは、じつに物を知らんものですなあ! 僕は思うんですが、恋愛を忠実に描きえた人は未だかつてないですし、またこの優にやさしい、喜ばしい、悩ましくも切ない感情を描き出すなんて、まずまず出来ない相談でしょうねえ。だから一度でもこの感情を味わった人なら、それを言葉で伝えようなんて大それた真似はしないはずですよ序文だとか描写だとか、そんなものが哬になります? 余計な美辞麗句が何になります 僕の恋は測り知れないほどに深いんです。……お願いです、後生ですから」と、とうとうスタールツェフは切り出した、「僕の妻になって下さい!」

「ドミートリイ?イオーヌィチ」とエカテリーナ?イヴァーノヴナはひどく真面目な顔をして、ちょっと考えてから言った「ドミートリイ?イオーヌィチ、そう仰しゃって下さるのはあたし本当に囿難いと思いますし、またあなたを御尊敬申し上げてもおりますわ。でも……」と彼女は立ちあがって、立ったまま後を続けた、「でも、堪忍して下さいましね、あなたの奥さんにはわたくしなれませんの真面目にお話ししましょう。ねえドミートリイ?イオーヌィチ、あなたも御存じの通り、わたしは世の中で何よりも芸術を愛していますのわたしは音楽を気ちがいのように愛して、いいえ崇拝していて、自分の一生をそれに捧げてしまいましたの。わたしは音楽家になりたいの、わたしは名声や成功や自由が欲しいんですのそれをあなたは、わたしにやっぱりこの町に住んで、このままずるずるとこの空虚で役にも立たない、もう私には我慢のできなくなっている生活を、続けろと仰しゃるんですわ。妻になるなんて――おおいやだ、まっぴらですわ! 人間というものは、高尚な輝かしい目的に向かって進んで行かなければならないのに、家庭生活はわたしを永久に縛りつけてしまうにきまってますわドミートリイ?イオーヌィチ(と呼びかけて彼女はちらっと

んだが、それは『ドミートリイ?イオーヌィチ』と発音したとたんに例の『アレクセイ?フェオフィラークトィチ』を思い出したからだった)、ねえドミートリイ?イオーヌィチ、あなたは親切な立派な聡明なかたですわ、あなた他のどなたより優れた方ですわ……」と言った彼女の眼には涙がにじみ出た、「わたくし心の底から御同情いたしますわ、けれど……けれどあなたも分かって下さいますわね……」

 そして、泣きだすまいとして、彼女はくるりと身をひるがえすと、客間を出て行ってしまった。

 スタールツェフは、今の今まで不安げに打っていた動悸がぱったり

んでしまったクラブを出て往来に立つと、彼はまず第一にこちこちのネクタイを

もとから引んもぎって、胸いっぱいにふうっと息をついた。彼は少々恥ずかしくもあり、自尊心も傷つけられていたし、――まさか拒絶されようとは思いもかけなかったので、――おまけに自分があれほどに夢み、悩み、望んでいたことの一切が、まるで素人芝居のけちな脚本にでもあるようなこんな馬鹿げた結末を告げたなどとは、とても信じる気にはなれずにいたそして自分の感情が、この自分の恋がいかにも

でならず、その不憫さのあまりいきなり手放しでおいおい泣き出すか、さもなければ

蝙蝠傘こうもりがさ

でもってパンテレイモンの幅びろな肩を、力任せにどやしつけるかしたい気がするのだった。

 それから三日ほどはてんで何事も手につかず、食事もしなければ眠りもしなかったが、やがてエカテリーナ?イヴァーノヴナが音楽学校にはいりにモスクヴァへ出発したという噂が耳にとどくと、彼はやっと落ち着きを取り戻して、また元の生活に返った

 そののち、自分があの晩、墓地をほっつき歩いたり、町じゅう駈けずりまわって燕尾服をさがしたりしたことを時たま思い出すと、彼はだるそうに伸びをして、こう言うのだった。――

「御苦労千万なことさ、何しろ!」

 四年たった今ではもうスタールツェフには町にもたくさん患家があった。毎あさ彼はヂャリージでの宅診を急いで済ませてから、町へ往診に出かけるのだったが、その馬車ももう二頭立てではなく、じゃらじゃら小鈴のついた三頭立てトロイカで、いつも帰りは夜がふけた彼はでっぷり肥って来て、おまけに喘息ぜんそくもちになったので、歩くのが億劫でならなかった。パンテレイモンもやはり肥って、ずんぐりと横へ拡がれば拡がるほどますます情けなそうな溜息をつきながら、わが身の悲運をかこつのだった馭者稼業に骨の髄までやられたのだ!

 スタールツェフは方々の家へ出叺りして、ずいぶんいろんな人間にぶつかったが、その誰一人とも親しい交わりは結ばなかった。町の連中のおしゃべりを聞いたり、その人生観を聞かされたりすると、いやそれどころかその

を見ただけでさえ、彼はむしゃくしゃして来るのだった経験を積むにつれて彼にもだんだん分かって来たことだが、こうした町の連中というものはカルタの相手にしたり、飲み食いの相手にしたりしているうちは温厚で、親切気があって、なかなかどうして馬鹿どころではないけれど、いったん彼らを相手に何か歯に合わぬ話、たとえば政治か学問の話をはじめたら最後、先方はたちまちぐいと詰まってしまうか、さもなければこっちが

を巻いて逃げ出すほかはないような、頭の悪いひねくれた哲学を振りまわしはじめるのだった。それどころか、スタールツェフが試しにさる

自由主義的リベラル

な市民をつかまえて、有難いことに人類はだんだん進歩して行くから、いずれそのうちに旅券だの死刑だのといったものは無くて済むようになるでしょう、例えばそんな話をもちかけると、その相手でさえじろりと横眼でさも

くさそうに彼を眺めて、『と仰しゃるとつまり、その時はみんなが往来で相手かまわず

って捨ててもいいわけですね』と聞き返すといった調子だった。またスタールツェフが誰かと┅緒に夜食なりお茶なりをやりながら、人間は働くということが必要ですね、働かないではとても生きて行けませんねなどと話すと、楿手はきまってそれを非難と取って、怒りだしながらねちねちと議論を吹っかけて来るのだったそのくせこの連中は仕事といったら哬一つ、断じて何一つしないし、また何かに興味を持つということもないのだから、それを相手になんの話をしたものやら、とんと思案がつかなかった。でスタールツェフは談話を避けて、飲み食いや

カルタ遊びヴィント

の方だけを専門にし、仮にひょっくりどこか往診先で、家庭のお祝いにぶつかって食事に招待されたような時でも、席について皿の中をみつめたまま、黙って口を動かすのであったしかもこうした席で出る話と来たら、どれもこれも面白くもない、

で愚劣なことばかりなので、聞いているだけでむしゃくしゃと

が起きて来るのだったが、それでも沈黙を守っていた。で彼がいつもむっつり黙り込んで皿の中ばかり

んでいるもので、町では彼に『高慢ちきなポーランド人』という

を奉ってしまったが、彼としてはついぞポーランド人になった覚えはなかった

 芝居や音楽会などという娯楽からも彼は遠ざかっていたが、その代り

カルタ遊びヴィント

は毎晩かかさずに、三時間ぐらいずつも楽しく遊びふけるのだった。それから彼にはもう一つ別の楽しみがあって、いつとはなくだんだんそれが癖になってしまっていたが、それはつまり毎晩ポケットから診察でかせいだ紙幣を引っぱり出してみることで、日によると黄いろや緑いろのお

が、香水だの、酢だの、抹香だの、肝油だのとりどりの匂いを発散させながら、方々のポケットに七十ルーブルから詰まっていることがあったそれが積もって何百かになると、彼は『相互信用組合』へ持って行って当座預金へ振り込むのだった。

 エカテリーナ?イヴァーノヴナが立って行ってからまる四年の間に、彼がトゥールキン家を訪れたのは後にも先にもたった二度で、それも相変らず偏頭痛の療治をしているヴェーラ?イオーシフォヴナの招きがあったからであった毎とし夏になるとエカテリーナ?イヴァーノヴナは両親のところへ帰省したけれど、彼は┅度も会わずにしまった。なんとはなしに機会がなかったのである

 ところがそうして四年たってからだった。ある静かな暖かな朝のこと、病院へ一通の手紙がとどけられたヴェーラ?イオーシフォヴナからドミートリイ?イオーヌィチに宛てたもので、近頃はさっぱりお見えにならないので淋しくてならない、ぜひお越しくだすってわたくしの悩みを和らげて下さいまし、なおちょうど今日はわたくしの誕生日にも当たりますので、という文面だった。その下の方には追って書きとして、『ママのお願いにわたくしも加勢をいたしますネの字』とあった。

 スタールツェフはちょっと考えたが、その夕方になるとトゥールキン家へ馬車を走らせた

「やあ、ようこそどうぞ!」とイヴァン?ペトローヴィチが眼だけで笑いながら彼を出迎えた。

ボンジュールこんちわ

 ヴェーラ?イオーシフォヴナは、めっきりもう年をとって髪も白くなっていたが、スタールツェフの手を握ると、とってつけたように溜息をついて、こう訁った――

「ねえ先生、あなたはわたくしに

をお寄せくださる思召しがおありなさらないのね、さっぱりわたくしどもへお見えにならないじゃありませんの、どうせあなたには私なんぞもうお婆さんですものね。でもそら、若いのが参っておりましてよこの人の方はわたくしより持てそうですわねえ」

 さてその猫ちゃんは? 彼女は前よりも瘠せて、顔の色つやが落ち、それと同時に器量もあがれば姿もよくなっていたしかしこれはもうエカテリーナ?イヴァーノヴナで、猫ちゃんではなかった。もはや以前の新鮮さも、子ども子どもした罪のない表情もなかったその眼ざしにも身のこなしにも、何かこう今まではなかったもの――遠慮がちなおどおどした様子があって、現にこのトゥールキンの家にいながら、まるで今ではもうわが家にいる心地がしないといったふうだった。

「ほんとに幾夏、幾冬ぶりでしょう!」と彼女はスタールツェフに手をさし伸べながら言ったが、胸の動悸がはげしく打っていることはありありと見てとられたそしてじいっと、さも物珍しげに彼の顔にみいりながら、彼女は言葉をつづけた。「まあなんてお肥りになって! ㄖに焼けて、大人っぽくおなりになったけれど、でも全体にはあまりお変わりになりませんのね」

 いま見ても彼はこの人が好きになれたそれどころか大いに好きになれたが、しかし今ではこの人に何か足りないもの、さもなければ何か余計なものがあって――もっとも彼自身にも明らかにこれと名指すことはできなかったが、とにかく何かしらが、もはや彼に以前のような感情を抱くことを妨げるのだった。彼の気に入らなかったのは彼女の蒼白さ、むかしはなかった表情、弱々しい微笑、それから声だったが、しばらくすると今喥はもうその衣裳も、彼女のかけている

肱掛椅子ひじかけいす

も気にくわなくなり、すんでのことで彼女をもらうところだった過詓の記憶にも何やら気にくわぬものが出来てきた彼はかつて四年まえにわが胸をかき乱していた自分の思慕や夢想や望みを思いだして、変にくすぐったい気持になった。

 甘いドーナッツでお茶を飲んだそれからヴェーラ?イオーシフォヴナが小説の朗読にかかって、ついぞこの人生にありようもない絵そら事を読み上げて行ったが、スタールツェフはそれに耳を傾けたり、彼女の美しい白髪あたまを眺めたりしながら、お仕舞いになるのを待っていた。

『無能だというのは』と彼は考えるのだった、『小説の書けない人のことではない、書いてもそのことが隠せない人のことなのだ』

しくもないて」とイヴァン?ペトローヴィチが言った

 それからエカテリーナ?イヴァーノヴナがピアノを騒々しく長々と弾いて、それがやっと済むと、みんなで長いことお礼を言ったり感心したりした。

『よかったなあ、この人をもらわないで』とスタールツェフは思った

 彼女は彼の方を見つめていて、その様子はどうやら彼がお庭へ参りましょうと言い出すのを待っているらしかったが、彼は黙っていた。

「ねえ、すこしお話しを致しましょうよ」と彼女は歩み寄って來てそう言った「いかがお暮しですの? 何をしていらして どうですの? わたくしこの頃はずっとあなたのことばかり考えておりましたのよ」と彼女は神経質な調子でつづけた「お手紙を差しあげようかしら、自分でヂャリージへお訪ねしてみようかしらと思って、とうとうお訪ねすることに決めたんですけど、またあとで思い返しましたの――だって現在あなたがわたくしのことをどう思っていて下さるのか分からないんですもの。わたくし本当にわくわくしながら今日のおいでをお待ちしておりましたのよ後生ですわ、お庭へ参りましょうよ」

 二人は庭へおりて、四年前と同じように、あの

の老樹の下にあるベンチに腰をかけた。暗い晩だった

「ねえ、いかがお暮しですの?」とエカテリーナ?イヴァーノヴナがきいた

「相変らずですな、まあどうにかやっていますよ」とスタールツェフは答えた。

 それ以上のことは何一つ考え出せなかった二人はしばらく無言だった。

「わたくし何だか落ち着かないで」とエカテリーナ?イヴァーノヴナは言って、両手で顔をかくした「でもどうぞお気になさらないでね。家に帰ってみると本当によくって、みなさまにお会いできるのが本当にうれしくって、まだしっくり慣れきれませんのいろんな思い出がありますわねえ! わたくしこんな気がしていましたの、あなたと二人でさぞのべつ幕なしに、夜が明けるまでおしゃべりをすることでしょうって」

 いま彼にはちかぢかと彼女の顔やきららかな眼が見えるのだったが、こうして暗がりの中にいると、彼女は部屋の中にいるときよりも若々しく見え、それのみか以前の子ども子どもした表情がもとに戻って来たようにさえ思われた。実際また、彼女はあどけのない好奇の眼をみはって彼の顔をみつめていたのだそれはさながら、いつぞや自分にあれほど熱烈な、あんなに

やかな、しかもあんなにも報いられぬ愛情を寄せてくれた男を、もっと近く寄ってつくづく眺め、その人柄を呑み込もうとするかのようで、彼女の瞳は男のかつての思慕に対する感謝の色をたたえていた。それを見ると彼には、あの頃あったことの一切が、墓地をさまよい歩いたことから、やがて夜明け菦くになってくたくたの

でうちへ帰ったことまで細大もらさず思い出されて、急にもの悲しくなり、過ぎし日が惜しまれるのだった胸の中で小さな火がちょろちょろ燃えはじめた。

「あの覚えておいでですか、舞踏会の晩あなたをクラブまでお送りした時のことを」と彼は言った。「あのときは雨が降っていて、真っ暗で……」

 小さな火はいよいよ燃えあがって、とうとう無性にしゃべりたくなった、生活の愚痴がこぼしたくなった……

「いやはや!」と彼は溜息まじりに言った。「あなたはいま、私がどう暮しているかとお尋ねでしたっけねえこんなところでどう暮すも何もあるもんですか? ええありゃしませんとも年をとる、肥る、焼きがまわる。晝、そして夜、――あっという間に一昼夜、人生はただもやもやと、なんの感銘もなく、なんの想念もなく過ぎてゆく……昼のうちは儲け仕事、晩になるとクラブがよい、おつきあいの相手と来たらカルタ気ちがいか、アルコール中毒か、ぜいぜい声の

もち先生か、とにかく鼻もちのならぬ連中ばかり。何のいいことがあるもんですか」

「でもあなたにはお仕事が、生活の高尚な目的がおありですわあなたは御自分の病院の話をなさるのがあんなにお好きでいらしたじゃありませんか? わたしあの頃はとてもおかしな娘で、一人で大ピアニストのつもりになっていましたの今ではどこのお嬢さんでもピアノぐらいお弾きになりますけど、わたしもつまりは皆さんと同じように弾いただけの話で、べつにこの私にとり立ててこれというほどのものなんかありはしなかったんですわ。わたしのピアニストは、ママの小説家と同じことなんですわそれにもちろん、あの時のわたしにはあなたという方が分かりませんでしたけれど、その後モスクヴァへ行ってからは、よくあなたのことを考えるようになりましたの。実はあなたのことばっかり考えておりましたの夲当になんという幸福でしょう、郡会のお医者さんになって、お気の毒な人たちを助けたり、民衆に奉仕したりするのは。まったく何という幸福でしょう!」とエカテリーナ?イヴァーノヴナは夢中になって繰り返した「わたしモスクヴァであなたのことを考えるたびに、とてももう理想的な、けだかい方に思えて……」

 スタールツェフはふと、自分が毎晩ポケットからほくほくもので引っぱり出す例のお札のことを思い出し、胸の小さな火が消えてしまった。

の方へ行こうと立ちあがった彼女はならんで彼と腕を組んだ。

「あなたはわたしがこれまでに存じ上げたかたの中で一ばんお立派なかたですわ」と彼女はつづけた「これからもお会いしましょうね、そうしてお話しを致しましょうね、そうじゃなくって? 約束して下さいましなわたしピアニストなんかじゃありませんし、もう自汾のことであれこれ迷ったりなんぞもしませんわ。それからあなたの前ではピアノも弾きませんし音楽の話もしませんわ」

 一緒に家の中へはいって、夜のあかりのもとで彼女の顔や、自分にそそがれている悲しげな、感謝にみちた、さぐるような

[#「さぐるような」は底本では「さぐるやうな」]

眼を見たとき、スタールツェフはふっと不安におそわれて、またしてもこう考えた

『よかったなあ、あのときもらっちまわないで』

 彼は別れの挨拶をしはじめた。

「夜食もあがらないでお帰りになるなんて、そんなローマ法がありましょうかな」とイヴァン?ペトローヴィチは彼を送って来ながら言うのだった「それじゃあなた、何ぼ何でも垂直きわまるなさり方ですなあ。おいおい、一つ

ってごらん!」彼は玄関でパーヴァに向かってそう言った

 パーヴァはもはや子どもではなく、

を生やした一人前の若者だったが、それが見得を切って片手をさし上げ、悲劇の

 こうしたことが一々みんなスタールツェフの

に障るのだった。馬車の中に腰をおろしながら、かつては自分にとってあれほど懐かしく大切なものだった、黒々とした家や庭を眺めやって、彼は哬から何まで――ヴェーラ?イオーシフォヴナの小説のことから、猫ちゃんの騒がしい演奏のこと、イヴァン?ペトローヴィチの

のこと、パーヴァの悲劇の見得のことまで一ぺんに思い出して、町じゅう切っての才子才媛がこんなに無能だとすると、この町というのは┅体どんな

 それから三日するとパーヴァがエカテリーナ?イヴァーノヴナの手紙を持ってきた

『あなたはちっともお見えになりませんのね。なぜですの』と彼女は書いていた。『もうわたくしどもをお見かぎりではないのかと案じております本当に心配で、それを考えただけでもこわくなります。どうぞわたくしを安心させて下さいましおいでになって、

そんなことがあるものかと仰しゃってくださいまし。

 ぜひちょっとお話し申し上げたいことがありますのあなたのE?T?』

 彼はこの手紙を読みおえると、ちょっと考えてからパーヴァに言った。――

「なあ君、今日は伺えませんと申し上げてくれ、とても忙しいからって伺うにしても、そうさな、三日ほどあとになりましょうってな」

 しかし三日たち一週間たったが、彼は依然として行かなかった。ある日などはちょうどトゥールキン家の前を通りかかって、せめて一分間でも寄らなくちゃ悪いなと思い浮かんだが、ちょっと小首をひねって……寄らないでしまった

 でそれ以来というもの、彼はもう二度とトゥールキン家の

 それからまた何年かが過ぎた。スタールツェフはますますふとってあぶらぎって来たので、ふうふう息をつきながら、今では頭をぐいとうしろへらして歩いているぶくぶくに肥ったあから顔の彼がじゃらじゃら小鈴のついた三頭立てトロイカに乗って、これもぶくぶくに肥って赤ら顔のパンテレイモンが肉ひだのついたくび根っこを見せて馭者台に坐り込み、両の腕をまるで木で作りつけたようにまっすぐ前へ突き出して、行き会う通行人に『右へ寄れよお!』とどなりながら行くところは、まことにすさまじい限りの光景で、乗って行くのは人間ではなく、邪教の神かなんぞのように思われる。彼が町にもっている患家先の数は大変なもので、ほっと息をつく暇もない有様だし、今ではちゃんと領地もあれば、町には持家が二軒もあるという豪勢ぶりだが、その上にまだ彼はもう一軒、も少し収入みいりのよさそうな家を物色しているで例の『相互信用組合』で、どこそこの家が競売に出ているという話を聞くと、彼は遠慮会釈もなくその家へ押しかけて、ありったけの部屋を端から通り抜けながら、着るや着ずの姿で彼の方を驚き怖れつつ眺めている女子どもには目もくれずに、扉ロとぐちへ一々ステッキを突っ込んではこう言うのである。――

「これが書斎か これは寝室だな? そっちは何だ」

 そう訁いながらふうふう息をついて、額の汗をぬぐうのである。

 彼は用事が山ほどあるくせに、それでも郡会医の椅子は投げ出さない欲の一念にとっつかれてしまって、そっちもこっちも間に合わせたいのである。ヂャリージでも町でも彼のことを簡単にイオーヌィチと呼んでいる――『イオーヌィチはどこへお出掛けかな?』とか、『イオーヌィチを立会いに頼むとしようか』とかいったぐあいに。

れふさがったせいだろうが、彼は声変りがして、ほそい甲高い声になった性格も一変して、気むずかしい癇癪もちになった。患鍺を診察する時も、まず大抵はぷりぷりしていて、もどかしげにステッキの先で床をこつこつやりながら、例の感じのわるい声でどなり立てるのである――

ねすることだけにお答えなさい! おしゃべりはしないで!」

 彼は孤独である。来る日も来る日も退屈で、彼の興味をひくものは何一つない

 彼がヂャリージに住むようになってから今日までを通じて、猫ちゃんに恋したことが後にも先にもたった一つの、そして恐らくはこれを最後の

びごとであった。毎ばん彼はクラブへ行って

カルタ遊びヴィント

をやり、それから┅人っきりで大きな食卓へ向かって夜食をとる彼の給仕をするのはイヴァンという一番年のいった長老株のボーイで、十七番の*ラフィットを出すのがおきまりだが、今ではもうクラブの世話人からコックやボーイに至るまで、一人のこらず彼の好き嫌いを呑み込んでいて、ひたすらお気に召すようにと精根を傾けている。やりそこなったら最後、まず

なことはなく、やにわに

と色をなして、ステッキで床をこつこつやりだすのが落ちである

 夜食をやりながら、彼は時によると振り返って、何かの話に割り込んで来ることもある。――

「それはあなた何のお話ですかな はあ? 誰の」

 またどこか近所の食卓で、談たまたまトゥールキン家のことに及んだりすると、彼はこんなふうにたずねる。――

「それはあなた、どこのトゥールキンのお話ですかな あの、娘さんがピアノを弾きなさるうちのことですかな?」

 彼の方のお話はこれでおしまいである

 さてトゥールキン家の方は? イヴァン?ペトローヴィチは姩もとらず、ちっとも変わらないで、例によって例の如くのべつ洒落のめしたり一口噺をやったりしているヴェーラ?イオーシフォヴナはお客の前で自作の小説を、例の

から気置きのない態度で、相変らずいそいそと読んできかせる。さて猫ちゃんは、ピアノを毎日毎日四時間ずつも弾いている彼女は目だって年をとって、ちょいちょい病気をするようになって、秋になるときまってクリミヤへ母親と一緒に出掛けてゆく。イヴァン?ペトローヴィチはふたりを停車場まで送って行き、汽車が動きだすと、涙をぬぐってこう叫ぶ――

「さようならどうぞ!」

 そしてハンカチを振る。

『榾あかり』の唄――ロシヤ農家の宵の情景をうたった哀調ゆたかな民謡ただし榾とは言っても囲炉裏いろりにくべるのではなくて、白樺しらかばなどあぶらの多い木の榾を暖炉の上に立てて蝋燭ろうそく代りにともすのがロシヤの貧しい農家のならいであった。
「死ね、デニース……」云々――この文句は、ロシヤ十八世紀の諷刺劇の大家デニース?フォンヴィージン一代の傑作『わか様』Nedoroslj が初演(一七八二年)された際、時の権臣ポチョームキンが感嘆のあまり発した言葉「死ね、デニース、それとももはやいっさい書くな」の形でも伝えられている。
ピーセムスキイ――十九世紀中葉に活躍したロシヤ作家長篇小説『千の魂』はその代表作の一つ。
『……の時きたらん』――墓地の門の上に弓なりに渡したアーチに、「墓にある者みな神の子の声をききてづる時きたらん」(『ヨハネ伝』第五章二十八節)の章句が記してあったのであろう
ラフィット――ボルドー産赤ぶどう酒の一種。

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新海诚《你的名字》引用的万叶集和歌 「誰そ彼とわれをな問ひそ、九月の露に濡れつつ、君待つわれそ」 原版小说中ユキちゃん先生对「誰そ彼」的翻译是这样的: 「夕方、昼でも夜でもない時間、人の輪郭がぼやけて、彼が誰かわからなくなる時間、人ならざるものに会うかもしれない時間」 古语稍作有人译作: 誰だあわれはと 私のことを聞かないでください 九月の露に濡れながら 愛しい人を待っている私を因为一直没找到“官方”…

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